2014年05月04日号 3面

韓国南西部の珍島付近で4月16日、大型旅客船セウォル号が沈没した事故で、客室を増設した改造や大幅な過積載が転覆につながった疑いが強まっている。そうした中で、運行会社である清海鎮海運が、韓国教界で異端とされているキリスト教福音浸礼会(救援派=クオンパ)の代表や信徒らによって運営されていることが注目されている。韓国キリスト教異端相談所協議会の陳用植会長が明らかにしたもので、韓国メディアはこの宗教団体の事業展開と事故原因の関連を取り上げている。
4月24日、東京・足立区の日本キリスト教異端相談所(張清益所長)でのセミナーのため来日した陳氏が、本紙のインタビューに答えた。
陳氏によると、清海鎮海運の実質オーナーであるユ・ビョンオン氏(73)は、クオンパ=キリスト教福音浸礼会の創設者である故クォン・シンチャン氏の娘婿で、現代表。同社の社員はほとんどがクオンパの信者だという。ユ氏の代になって船舶、海運、薬品、化粧品、健康食品など幅広く事業を展開するようになり、一族の資産は数千億ウォン(約数百億円)に上るともいわれる。中にはねずみ講のようなものもあるという。
中央日報は、巨額の富をユ氏が不動産や自分の趣味の写真につぎ込む一方、清海鎮海運の安全対策には経費をほとんど割いていなかったことを報じた。警察の捜査はこうした一族企業・団体の実態にも迫っている。
セウォル号事故では、イ・ジュンソク船長ら乗組員が乗客の避難誘導をせずに脱出し、300人を超す死者・行方不明を出した責任を問われて逮捕された。また、貨物の積載重量が2千700トンもオーバーしていたことや、乗員に避難訓練をしていなかったことも明らかになっている。
こうした倫理性の欠如した体質と、クオンパの教義に関連はあるのか。「私は関連が深いと思います」と陳氏は語る。陳氏によると、クオンパは律法廃棄論で放縦主義、罪を犯しても悔い改める必要はない、という教え。「道徳性を抹殺してしまうような教理なので、事業にも問題が起こる」と見る。
1987年8月には、クオンパの系列会社である五大洋が信者から資金をかき集めて倒産し、社屋内から32人の死体が発見される事件があった。集団自殺と報じられたが、いまだに自殺か他殺か分かっていない。クオンパの流れの別の団体では、どんな病気も癒されると称する薬を売り出す詐欺事件も起こしている。【根田祥一】