中国・四川省成都に実在する国営工場「420工場」。戦闘機など軍事関係の機密工場が解体されていく。50年代半ばに設立され、ベトナム戦争、中越戦争など軍需生産の中で繁栄し、文化大革命の嵐、冷戦終結後の構造変化のうねりの中で90年代の大量解雇、そして工場閉鎖と不動産会社による新興住宅地「二十四城」(この映画の原題)の跡地開発。工場労働者3万人、その家族を含め10万人という大都市規模の変革が進められている。

ジャ・ジャーク監督は、この繁栄と衰退の中を工場で働いてきた人たちの’語り’で激動の中国現代史と労働者と家族たちの喜怒哀楽を’心の旋律’として重層的に描き出していく。登場する8人のうち4人は俳優を起用した’セミドキュメンタリー’という手法を編み出し、母親の悲しい経験や次世代を担う声などを個人の’語り’としてフォローした。

語れない立場の人の声を生かす脚本と演出手法は評価できる。それによって、今の中国の姿をも浮かび上がらせ、そこに生きる人間の’心の旋律’を聞かせてくれる。

新たに都市開発されていく成都の町。発展していく未来に向かって、成功し両親に高級住宅マンションの部屋を買いたいとの意欲もって起業めざす若い女性。描かれてきた一大工場都市の栄枯衰退の’語り’は、希望を指し示しているようだが、一方で、満たされない心のシンフォニーのようにも聴こえる。 【遠山清一】

2009年4月18日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー。
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