どこからともなくくすぶる煙。そこは「スモーキーマウンテン」と呼ばれるフィリピンのゴミ捨て場だ。監督・四ノ宮浩氏はそこに生きる人々を取材し、映画「忘れられた子どもたち―スカベンジャー―」に収めた。それから20年。スモーキーマウンテンで暮らす人々は今、どうしているのか。

製作・配給 オフィスフォープロダクション、共同配給=浦安ドキュメンタリーオフィス、共同製作=映画5000人製作委員会(写真・浦安ドキュメンタリーオフィス) ※バスーラとはタガログ語で「ゴミ」の意味

この20年でスモーキーマウンテンは閉鎖し、アロマゴミ捨て場が新たに造られた。政府建設の集合住宅もある。幼い子が女性に、新婚だった16歳の少女は5人の母に。社会の変化があり、人生は移ろう。その一方で、ホームレス家族、シンナー中毒の子ども、ゴミ拾い生活の人々は減っていない。

貧困、失業、不衛生、病…。数え切れない問題が繰り返される。それでも実に多くの人が「家族のために」、ただそれを思って生きている。守るべき存在、つながっている存在を確かに握りしめて生きる人の目はまぶしい。「愛する者ために」。しかし、その思いの向こうで、あるいはその思いゆえに、時に社会が置き去りにしてきた問題に翻ほんろう弄され、絡め取られていく。

願いと現実。その落差に愕がくぜん然とするが、海の向こうの国の出来事ではない。同じ時代に、同じ空の下に生きる「私たち」のことでもあるのだ。足元のことに目を留め、それぞれの立脚点からできる何かがある。守りたい者があるのなら。

2009年6月27日(土)より東京都写真美術館ほか全国で順次公開。高校生以下無料。  【奥山】

公式サイト http://www.basura-movie.com