(c)2010「NECK」製作委員会
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恐怖体験が’人間の想像力’に強烈なエネルギーを与え、お化けのような妄想を現実化させる。そんな着想を実験で証明しようとする真山杉奈(相武紗季)が巻き起こす、エンターテイメントなホラー映画。奇想天外なストーリー展開に、さまざまなホラーのパロディを想起させられるシーンも盛り込まれていて楽しめる。

杉奈はよほど優秀な大学院生なのだろう。’首から上の恐怖の妄想が自作のネック・マシーンの中で実体化する’つまり、お化けが出てくることを証明する研究を大学に認めさせている。この’ネック理論’の原点は単純で分かりやすい。杉奈が子どもの頃、幼馴染みの古里崇史(平岡佑太)の家に泊まったとき、’ゴム手袋の男’作り話といたずらで崇史を思い切り怖がらせてしまう。

その時、崇史の父親が「怖いと思うから怖いもんが出るんや」とあきれながら言った言葉に、ずっと引っ掛かりを覚えてきた。後日、お化けを見に行こうと友達のゆかりを廃屋に連れ出し、ひょんなことから怖がるゆかりの手に怪我を負ってしまう。その夜、杉奈は自宅の風呂場の電気を消し、首まで湯舟に浸かりながら自分の手を出し入れしていると、その手に黒髪が巻きつき、やがて女の手が伸びてきて自分の首を締め付けてきた。杉奈自身の恐怖体験は、数年後も’ネック理論’の実験意欲を駆り立てていた。しかも、杉奈のいたずらがトラウマになった崇史は、毎日、恐怖の妄想から逃れられず「冥王星O」シリーズなどを生み出す人気ホラー作家・越前魔太郎になっていた。

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杉奈の’ネック理論’をより効果的な実験へと付き合わされるように、幼馴染みの崇史、大学生の首藤友和(溝端順平)、編集者の赤坂英子(栗山千明)らは、人形作家だった山本が自ら作った’緑目の人形’に取り付かれて亡くなり、彼の住んでいた館が今や使い古された人形たちの廃棄場所になっていることを知った。4人は新しい’ネック・マシーン’を持ってその館で恐怖体験の実験をしに向かう。そこで様々な怪奇現象が巻き起こっていく。

廃屋、人形、’冥王星O’が登場し、捨てられた人形たちの不思議な霊力を束ねている’緑目の人形’との魔界バトルなど、ホラー映画の要素満載。’緑目の人形’が妙にチャーミングさをもった不思議なキャラクターに仕上げられていて印象に残る。

青春映画にお定まりの恋話も絡めて、屈託なく楽しめる映画だが、人形たちと魔界のバトルに巻き込まれた杉奈らの心にこびりついていた怨念のような呪縛から解き放ったのは、呪文や儀式の謎解きではなく、気付かぬままに過ごしてきた負い目の謝罪と赦された和解が鍵だった。そこに、現代的な愛の強さがメッセージとして込められている。   【遠山清一】

監督:白川 士、原案:舞城王太郎。配給:アスミック・エース・エンタテイメント。8月21日(土)よりシネマサンシャイン池袋、新宿バルト9ほか全国ロードショー。

公式サイト:http://www.project-neck.com