(c)2010, Pelemele Film, Cult Film, ARD, BR, ORF, Bioskop Film GmbH
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若い妻アルマの激しくも献身を貫いた大作曲家グスタフ・マーラーへの愛憎が、精神分析医ジークムント・フロイトとの治療対話をたどりながら物語を展開していく。交響曲のテーマと絵画的な映像美との融合している作品。妻アルマへの激情を押し隠しながら「自分のすべてだ」と愛し続けていくマーラーの作曲家としてのエスプリが、彼の最期を哀しく美しく輝やかせている。

ウィーン宮廷歌劇劇場の芸術監督を務めた指揮者で作曲家のマーラー(ヨハネス・ジルバーシュナイダー)が42歳の時、’ウィーンの女神(ミューズ)’と評された社交界の華アルマ・シントラー(バーバラ・ロマーナ)と結婚したのは、彼女が23歳の時。音楽的才能にも恵まれた19歳年下の妻。作曲への情熱を持っていた彼女との結婚に際し、「私の音楽をあなた自身の音楽と考えることはできませんか?」と口説き、妻として母として専念させてきたマーラー。その妻が、長女プッツィの病死を機にひどく落ち込み療養のためサナトリウムに入院。療養生活のときから5歳年下の建築家と不倫関係を持っていたことを知って苦悩するマーラーは、フロイト()の催眠療法を受けながら過去と現実の自分に向きあっていく。

ユダヤ教からカトリックに改宗したマーラーだが、本作ではその信仰的な変遷はほとんど描かれてはいない。だが、作品の冒頭に「起こったことは史実 どう起こったかは創作」のテロップが流れ、出来事を丹念に追うことで二人の芸術家らしい情熱の激しい葛藤と互いに捧げきっていく愛の厳しさを描いていく。

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マーラーが完成させた最後の楽曲、交響曲第10番第1楽章「アダージョ」を骨格に、マーラーとアルマの愛憎が激しくぶつかり合いながらも深く愛していく深みを音楽的解釈を織り込みながら描いていく。その他、交響曲第5番第4楽章の「アダージェット」や第4番第3楽章の「静けさに満ちて」など、壮大甘美なマーラーの楽曲だけでつづられる音楽が、この作品にこめられた二人の絆をしっかりと美しく印象的に奏でている。 【遠山清一】

監督:パーシー・アドロン、フェリックス・O・アドロン 2010年/ドイツ、オーストリア/時間:1時間42分/原題:MAHLER AUF DER COUCH 配給:セテラ・インターナショナル。4月30日(土)より東京:渋谷ユーロスペース、横浜:シネマ・ジャック&ベティ、福岡:シネ・リーブル博多駅ほか順次全国公開。*4月9日(土)群馬:高崎映画祭にて特別先行上映。グスタフ・マーラ生誕150年 没後100年記念映画。

[出演]ヨハネス・ジルバーシュナイダー(グスタフ・マーラー)、バーバラ・ロマーナー(妻アルマ)、カール・マルコヴィクス(ジークムント・フロイト)

公式サイト http://www.cetera.co.jp/mahler/