(c)2008 Screen Australia, SBS, Melodrama Pictures Pty Limited, and Film Victoria
(c)2008 Screen Australia, SBS, Melodrama Pictures Pty Limited, and Film Victoria

FacebookやMixiなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が、ごく普通のコミュニケーションになっている現代。だが、かつては手書きの手紙で海外のペンパルと文通していた。そんな時代にほんとうにあったお話をモチーフに作られたクレイドール(粘土で作った人形)アニメーションの秀作。

オーストラリア・メルボルンに住むメアリー・ディンクルは、空想好きな8歳の女の子。ある日メアリーは、アメリカに住んでいる人と友達になろうと思い立ち、電話帳からマックス・ホロウィッツの名前を見つけた。おもしろい変わった名前に感じとったマックスへのはじめての手紙に、マックスから返事が来た。その手紙に、学校から帰ると秘密の部屋にいることが好きと、自分が一人ぽっちで額のアザのことでいじめられることなどを打ち明けていくメアリー。

マックスもメアリーから来る手紙に幸せを感じている。アスペルガー障害を持ち、自分の感情と顔の表情が一致しているかどうか自覚できないマックス。体重300ポンドの太った身体で、チョコレートとフィギア収集が大好き。年齢が離れたメアリーからの手紙に自分の心を開いく。

だが、そんな二人のしあわせな手紙のやり取りも、メアリーが成長し大学を卒業するころになると続かなくなる出来事が起こる。

心の障害を扱った重たいテーマ。実写版であったならその重たさは免れようもないが、クレイアニメーションのユニークなキャラクターとユーモラスな動きに助けられ、監督のメッセージを素直に聴き入ることが出来る。

img4d9972fcdd7d9
(C)2008 Screen Australia, SBS, Melodrama Pictures Pty Limited, and Film Victoria

アカデミー主演男優賞俳優のフィリップ・シーモア・ホフマン(マックス)やエミー賞主演女優賞を受けたトニ・コレット(メアリー)ら俳優たちのすばらしい声の演技に、引き込まれていく。成長するメアリーの人生を淡いセピアのトーンで、マックスの心の遍歴をモノトーンにシンボル的なところをパートカラーで描いていく映像が印象的。

ほんとうは、人の心も身体と同じように不揃いでどこかいびつな形をしているのかもしれない。年齢も人種も人生経験も違いすぎるようなメアリーとマックス。一度も会うことなく手紙の往復だけで、互いの心に響き合っていたものがあった。不器用でつらい現実だけのように見える人生のようだが、しっかりと’いのちの’つながりを感じさせてくれる’手紙’というものの存在。そのラストシーンに、素直に語り合える存在者に出会えた喜びが感じられ、優しい心持ちがわいてくる。 【遠山清一】

アダム・エリオット監督。2009年/オーストラリア/1時間34分/原題:MARY AND MAX。配給:エスパース・サロウ。4月23日(土)より新宿武蔵野館、シネ・リープル池袋ほか全国順次ロードショー。

公式サイト http://maryandmax-movie.com