©Sigma Films Limited/Zentropa Entertainments5 ApS/Subotica Ltd/BBC 2010
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人類の終末をテーマにした映画には、核戦争勃発と死の灰による人類破滅の恐怖を描いたスタンリー・クレイマー監督の「渚にて」(1959年)などさまざまな作品が輩出している。「パーフェクト・センス」は、原因不明のまま人間の五感が一つずつ失われていく恐怖感を描いた斬新な作品。最初は自覚症状が見られなくとも確実に体内細胞、遺伝子が破壊されていく放射性ブシツの恐怖にも似て、ウィルスなのか科学物質によるのかも不明という設定は、何とも説得力を感じさせられる現代の終末ムービー。

研究施設に勤める感染症学者のスーザン(エヴァ・グリーン)は、所内に運ばれた中年男性患者を診せられた。前の晩に、妻と会話している途中で突然泣き崩れた。そして、その突然に悲しみの感情が収まると臭いを感じなくなっているという。年齢層や地域性などに何ら共通点はなく、まったく原因が分からない。だが、この24時間以内にイギリス国内だけでなくヨーロッパ諸国に同様の症例患者が属しているという報告されている。まもなく、爆発的な勢いでこの奇病は世界中に広まっていった。感情が激昂し、やがて嗅覚が失われる奇病は、重症嗅覚障害症候群の頭文字をとってS.O.Sと名付けられた。

そんな混乱状態の中で、スーザンはアパートの向かいのレストランでシェフをしているマイケル(ユアン・マクレガー)と出会った。幾度か言葉を交わし親しくなるうちに、互いの心の傷を打ち明け合い、愛情を交わすようになった二人。だが、朝になってスーザンは、自分の嗅覚が消えていることに気づく。S.O.Sに罹ったのだ。

©Sigma Films Limited/Zentropa Entertainments5 ApS/Subotica Ltd/BBC 2010
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マイケルは、嗅覚がなくともおいしく味わえるメニューをレストランの仲間たちと創作し、生きていることの楽しみと希望を分かち合おうと努力する。しかし、激しい怒りの感情が湧き起り、何でもむさぼるように食べてしまった後に味覚が失われる症状が蔓延し始めた。そして、聴覚、視覚と次々に感覚が消えていくS.O.Sの蔓延に、町中にパニックが起こる。自暴自棄になって略奪や絶望状態に陥る人たち。一方で、終末的状況の中でも意味を見出そうと、生きることに希望を失わない人たち。S.O.Sの猛威は、ついに視覚を失う症状にまで及んできた。迫りくる絶望的状況の中で、スーザンとマイケルは。。。

インデペンデント映画が出展されるサンダンス映画祭では、衝撃的なストーリーと迫りくる緊迫感あふれる映像に高い評価が集まった作品。ユアン・マクレガーとエヴァ・グリーンが演じる、すばらしい愛情物語というだけに終わらず、どのような終末的危機的状況に陥っても、人間は生きるための努力を見出そうとし生活を築こうとする。そういう人間存在への信頼感が、ストリー展開の底に流れていて心に届いてくる。   【遠山清一】

監督:デヴィッド・マッケンジー 2011年/イギリス/92分/ 配給:プレシディオ 2012年1月7日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

公式Webサイト:www.perfectsense.jp