2017年06月11日号 01面

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 日本キリスト教協議会(NCC)教育部(石田学理事長)が設立110周年記念事業として取り組んできた「平和教育資料センター」が、日本キリスト教会館(東京・新宿区2ノ3ノ18)内に開設され、5月29日から一般公開が開始された。センターには、100年以上にわたる日本の教会教育に関する資料が展示されている。公開に先立ち27日には、開設記念礼拝・講演会が行われた。 【髙橋昌彦】

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20世紀の日曜学校の隆盛、戦争教育の資料ともに

 NCC教育部の歴史は、1907年に設立された「日本日曜学校協会」にさかのぼる。日曜学校間の交流と日曜学校運動の推進をはかるために設立された団体は、53年にNCCの一部となってからも、その独立した理事会を維持し、子どもの問題に大きな関心を寄せつつ、平和教育、人権教育に取り組んできた。今回開設されたセンターには、19世紀後半に始まり現在に至る日本の日曜学校の歴史を、当時のカードや教材教案誌などの資料や写真によってたどる展示が行われている。特に、20世紀初頭の日曜学校の隆盛を伝える資料、写真から伝わってくる高揚感とともに、次第に戦時体制に組み込まれていく日本のキリスト教会の姿は、印象深い。

 開設記念礼拝では、理事長の石田氏が「未来を望む人は過去に学ぶ」と題して、出エジプト記32章、Ⅰコリント10章から説教した。

 ──展示から見られる過去100年を越す日本の教会教育の歴史には、光と闇が入り混じっている。1910年の日曜学校生徒大会には1万5千人が、20年東京で行われた世界日曜学校大会には、生徒大会に2万人が参加した。一方、当時のキリスト教会は37年には日中戦争支持を表明、次第に戦争教育を進めていった。

 ここでは、いずれの歴史も展示し、振り返ることができる。なぜなら、歴史を信仰的な目で批判的に見ないことには、信仰的な未来を望むこともできないからだ。パウロは、偶像礼拝を行ったイスラエルの民に言及するが、それは彼らを非難するためではなく、その誤りを前例とし学ぼうとするから。誰もが等しく犯すかもしれない誤りであるが故に、私たちは過去の誤りから学ぶ。その教訓を、同様の誤りを犯す危機にある時、信仰的な道を踏み外すことがないための大切な導きの光とすべきである。

 どれほど過去に日本の教会が、人々の人権と尊厳を貶め、植民地支配と非人道的な国家支配に協力してきたか。そうした歴史を学ぶことを通して、人間の権利と尊厳がかけがえのないものであることを実感し、キリストの平和を作ることこそ、教会の、教会教育の、目標であることを確信することができるようになると信じる。

 もちろん、神が日本の教会教育を通して、どれほど素晴らしい働きをなしてくれたかをも見る時、神への感謝に導かれる。神がこれからの私たちの歩みも祝してくださることを確信することができるはずである。「未来を望む人は過去に学ぶ」。そのことを心に留めてこの場から新たな歩みを始めたい。──

 プログラムの最後には、NCC教育部総主事の比企敦子氏が挨拶。「展示に見られるようなかつてと同じことが、この国に起こりつつある。このセンターの開設は、どんなに小さくても始めなくてはという思いが強かった。多くの人が賛同し、献金も与えられたことを感謝している。今後キリスト教会の若いリーダーや学生が利用してくれるだけでなく、他宗教の方や教会外の方とも連携し合い、元に戻りそうな日本社会の中で、いろいろな形で用いられるセンターになっていけるように願っている」と、謝辞とともに抱負を述べた。

 センターの開館日は、月・水・金の12時半〜17時。常設展200円(中高生100円、小学生以下無料)。4か国語(日・英・ハングル・中)からなるパンフレットを有料で頒布している。TEL03・3203・0731。