2017年07月09日号 1面

現代の治安維持法とも言われている「共謀罪」(テロ等準備罪)が6月15日に成立し、今の時代にも国家権力による日本のキリスト教会への介入の危機感が広がる中、「第26回ホーリネス弾圧記念聖会」(弾圧同志会委員会主催)が25日、東京・新宿区百人町の淀橋教会で開催された。中村敏氏(新潟聖書学院院長)が「弾圧は何だったのか─今日の私たちへの教訓と警告」と題して講演。夜の聖会では、父で定住福音師の黒木光雄が弾圧を経験した山崎栄子氏(ウェスレアン・浅草橋教会員、同教会前牧師黒木安信氏実姉)が立証し、祖父・瀬戸四郎が弾圧を経験した瀬戸偉作氏(兄弟団・尼崎教会牧師)がⅠペテロ4章12〜19節から「キリストの苦しみに与る聖徒」と題して説教した。【中田 朗】IMG_5322

同聖会は1942(昭和17)年6月26日早朝、教職者96人が逮捕されたことを皮切りに始まったホーリネス弾圧事件を覚え、弾圧を経験者の証言や、当時の歴史について日本キリスト教史の研究家が講演するなど、毎年この時期に行われている。
中村氏は、井戸垣彰著『日本の教会はどこへ』の一節「国家による悪は、常に合法性の装いをとる。現行憲法に従っているような装いをして、悪が行われる道はいくらでもある。(中略)だから『神の国』のためと同時に、『カイザルの国』のためにも、目を覚ましている者がどうしても必要なのである」を引用し、こう語った。「エゼキエルや他の預言者たちのように、私たちも、この時代にあって、日本や世界の平和のため見張り人として立てられている。残念ながら、戦前の日本のキリスト教会はその使命を果たせなかった。その過去の反省を生かしつつ、今私たちに託されている平和をつくり出す使命を一緒に担っていきたい」DSC_0021
その上で、なぜホーリネス系の教会が弾圧されたかを語った。「戦時体制の国家に重要なのは、国民を戦争遂行のため総動員し統制下に置くこと。それを有効に成し遂げるため、それに反すると思われる個人や団体を徹底的に弾圧、恫喝し、その悲惨な結末を示し、国家に協力させる。その標的とされたのがホーリネス系の教会だ。取り調べの刑事は、『いちばん熱心な教派を打ち叩き、他の生ぬるい教会を震え上がらせる。こうしてなお目をさまさないなら、次はいちばん大きな教団第一部(日本基督教会)をやることになっている』と語ったという。一罰百戒的なねらいが込められていた」
歴史に学ぶ治安立法(共謀罪も含む)としては、①内外の情勢や要請を理由として野党や国民の反対を押し切り立法化する、②いったん法制化したら、改正(改悪)して刑を引き上げ、厳罰主義をとることで威圧と予防を狙う、③法の適用をするため、捜査権限を拡大し、摘発該当者を探し、広げていく、を挙げた。
最後に宗教改革の精神に触れ、「聖書にしっかり立ち、同時に歴史に生きる者として、絶えず目をさましていたい。今日的状況においては、世の大勢に抗して進み、預言者的発言をし、行動すること。これこそがこの聖会の目指すものであり、ルターのプロテスタント信仰の原点ではないか」と結んだ。DSC_0052
山崎氏は、「ホーリネス教会から定住福音師の資格を与えられた父は、宮崎県の都農祈りの家の群れを守っていたが、昭和17年の一斉検挙以来、いやがらせが激しくなっていた。父の聖書は没収されたが、終戦後、熊本の古本屋で売られていることが分かった。父のもとに戻ってきた聖書は、弾圧を受けた聖書として九州諸教会全部を回り、私の弟の黒木安信牧師のところに戻ってきた」と父が経験した弾圧について証しした。
瀬戸氏は、祖父の弾圧経験についてこう語った。「父は兵庫県尼崎市にあるきよめ教会を牧会していたが、6月26日に検挙された。尼崎の留置所から神戸の拘置所に移され、計1年7か月ほど拘留された。手記には『こんなことをされる理由が分からない。不満がつのるばかりだった』と書いてある。でもある取り調べで、特高刑事の手元にある書類に、おなじきよめ教会の牧師の名前があるのを知り、『これは個人の問題ではなく、教会に関する取り調べなのだということがわかり、ある意味安心した』と記されていた」DSC_0060
「弾圧は単に個人的経験にとどまるものでなく、教会全体の問題だ。弾圧を受けた側だけでなく、回避した側の無自覚的な傷のほうが深かったのではないか。より深い傷を私たちも含め、すべての主の教会が受け止めていくことが求められている」と瀬戸氏。「弾圧を受けた人々はみな再臨信仰に生き、祈り求め、検挙された。取り調べを受けた時には、その信仰を表明した。その時から時代はさらに進んだが、世の人々は一刻一刻滅びに向かっている。私たちは時が良くても悪くても、御言葉を語り、再臨を伝え、この信仰を次の世代に継承していきたい」と結んだ。