2017年10月15日号 08面

海外派遣員としてメキシコへ
現地教会で洗礼を受ける

「世界の情勢をそれほど意識して行動したわけではないですが、いろんな出来事の関連の中で、神様のご計画を感じます」。インタビューの冒頭、斉藤さんはそう語ってくれた。
1988年、斉藤さんは大学卒業後、メキシコに海外派遣員として赴任。2年間、そこで働いた。「途上国が好きで、インド、エジプトを希望していたが、メキシコには行く人がいないということで行くことになった。全然、想定していなかったことでした」
仕事は日本大使館での観光案内や送迎など。その時、当時、空港で荷物検査の担当だった妻のマルタさんと出会い、デートに誘った。しかし、逆に彼女に連れていかれたのは教会だった。その後、意味がよく分からないまま教会に通い始め、マルタさんの家族、教会の友人と交流を深めた。斉藤さんは教会に通い、聖書に触れることを通して、「自分が罪人だということがよく分かった」と言う。「根底から変わらないといけない。洗礼を受けることが一つのきっかけになるかもしれない」と、日本に帰国する直前に洗礼を受けた。DSC_0002
帰国後、国際輸送の会社に就職。東京にある教会に通い始めた。92年にはマルタさんと結婚。在日中南米人(日系人、日本人の妻たち、クリスチャンたち)とも親交をもった。だが仕事では、リストラ、転職、失業を経験。ワーキングプア状態になったこともあった。見かねた周囲の人たちは、メキシコに行くことを勧め、01年、家族共々メキシコへ。メキシコシティーにある日系自動車部品メーカーに就職した。しかし、その日系自動車部品メーカーは10年、リーマンショックの余波で閉鎖。その後、メキシコ日本商工会議所に勤務し、いろいろな企業の世話や政府間の調整などをし、最後には別の日系自動車部品メーカーに転職。その間、いろいろな教派の教会、メキシコシティー市内にある日本人キリスト教集会に出かけた。
世界的に貧富の格差拡大、イスラムテロ多発、異常気象の常態化が進む中、仕事、教会活動などメキシコでの生活に行き詰まりを感じてきた斉藤さんは、日系自動車部品メーカーを退職。17年に帰国し、家族で神奈川県相模原市に移り住んだ。そこで、自分のビジネスを始めようと考えたのが、「メキシコから日本への技能実習生の派遣計画」だった。「アメリカはメキシコからの移民を受け入れたくない。ならば日本に連れて来ることはできないか」

日本人が外国人と共存、サポート
するだけで世界を助けている

技能実習制度とは、出入国管理及び難民認定法に定める「技能実習」の在留資格により、日本に在留する外国人が報酬を伴う実習を行う制度。二十数年の実績があり、主にアジアの開発途上国の人材育成、日本の産業技術、知識の開発途上国への移転を促進してきた。斉藤 カラー写真
日本では少子高齢化が進み、建設、老人介護、製造業などの人手不足が問題になっている。一方、メキシコは、若年層の人口比が大きく、教育や技能における潜在力は低くない。「この制度を活用し良質な外国人材を受け入れられれば、日本は労働力不足を解消し、経済成長を続ける方向性が見えてくるかもしれない」と言う。
技能実習生の流れは以下の通り。①メキシコの採用・教育センター(送り出し機関)で実習生の募集、選定、技能実習生に日本語と日本の生活習慣を修得させる、②日本の商工会議所、共同組合等(管理団体)が日本で実習生に研修を行い、受け入れ会社に配置する、③受け入れ日本企業(実習実施機関)が実習計画に沿った実習の実施、業務の割り当てをする、④3年後にメキシコに帰国し、習得した技能を生かし就職や起業をする等。
年内には、人材募集・研修会社をメキシコ州に設立し、18年から実習生候補の募集・選定・研修・日本への派遣を開始する予定だ。それには、現地で日本語を教えられる日本語教師の確保、技能実習生を受け入れてくれる企業を探すなど、クリアしなければいない課題はたくさんある。
「健康・衛生、治安、経済、政治などが日本と比べると、ほぼすべてが悪いのが、途上国の多くの人の生活の現実。日本にも別の問題があるが、日本人が外国人と共存、サポートすることだけで、大いに世界を助けていることを知ってほしい。特に、クリスチャンの外国人は日本人や日本の教会にも祝福をシェアできるはず。文化・習慣の差を超えて、本質的な祝福を分かち合いたい」。問い合わせEメールsaitomex123@gmail.com(斉藤)