インタビュー:小峯侑二さん(劇団まがりかど代表)――6月12日から「この席空いてますか? 地下鉄大江戸線物語」を公演

近くの公園に展示されているSLのC-11 368。6月12日からの公演は地下鉄が舞台だが展示されているで気軽にポーズ

昨年、創立30年を迎えた「劇団まがりかど」を主宰する小峯侑二さん。日常のごく平凡な出来事やトラブルから人の心の機微をヒューマンコメディタッチに描いている小劇団だ。昨年の記念公演の後に制作していた映画「風が運ぶもの―『家賃のいらない家』から―」もクランクアップし、30周年記念作品として5月7日に都内で上映会を開催した。6月中旬には、東京・新宿シアターブラッツで31年目のスタートに「この席空いてますか? 地下鉄大江戸線物語」を公演する。

この人から洗礼を受けたい
療養暮らしでのリバイバル

人との出会いによって、人生が変わることもある。
小峯さんにとっては、栃木県那須高原で教会形成とペンション伝道している近藤秀夫さん(同盟基督・那須高原教会牧師)もその一人。「ざっくばらんに話せて、なんかぼくと合うなぁ。」と引かれた。
母親の愛子さんはクリスチャンで、磐梯聖会などにもよく連れられて行った。だが、「ぼくは宣教師のわんぱく息子たち3人と遊ぶのが教会生活だったかな(笑)」。信仰的な面では悩んでいた。高校を終えて家出同然に東京に出てきてスカウトされ芸能界へ。「当時、長門勇さんが大人気で。私も大好きだったので弟子入りしたんですよ」。独り立ちでき、舞台やテレビドラマの仕事の機運も上昇したとき、肝臓を患い病に倒れた。銀座でクラブ、六本木のショウパブ、赤坂の小料理屋など3つのお店を持っていた無理がたたった。故郷の白河と那須高原の別荘で10年間も療養生活を送らざるを得なかった。
その療養生活の時期に出会ったのが、近藤牧師。幼少の時から親しんできた教会、そして祈る母の姿に見せられてきた信仰者の生き方。一方で、芸能界とショウパブなど水商売の世界で生きているものには、教会の空気感は堅苦しく窮屈でもあった。だが、日本で初めて禁酒禁煙ペンション’ハウス・オブ・レスト’で教会を始めた近藤牧師夫妻には、話しが通じる気安さがあった。この人だ、ぼくが探していた牧師は。この人から、洗礼を受けたい、受けなきゃいけないんじゃないかと思いました」
2000年の元日に洗礼を受けたが、その数日前には、ペンションの教会で自身初めてのクリスマス・チャペルコンサートを開かれた。
役者として独り立ちできた小峯さんだが、シャンソン・バラードを歌う歌手であり3つのお店のオーナーでもあった。母親の愛子さんは、侑二さんが出演したテレビドラマや舞台公演をいつも応援してくれた。「母は大概のことは『やってみなさい』と言ってくれて、やる前から止めるような人ではなかった。その愛子さんは、洗礼を受けた侑二さんのことを「放蕩息子みたい、と言ってましたねぇ(笑)」。

 笑顔生まれる時間と空間を
お客様たちとつくりたい

その母が、昨年の春に他界した。父親と長男は、母親の信仰に生きる姿を通して受洗に導かれた。小峯さんの妻も2人の息子たちも洗礼を受けている。そのような家族の歩みに、母・愛子さんの祈りと生き方が影響していると侑二さんは思わされている。母親が亡くなる2日前に、病室に泊まっていっしょにお祈りすることはできたが、「ぼくだけ、母の臨終には立ち会えませんでした」。
昨年の記念公演と並行して進めていた記念映画は、原発事故の放射能汚染を怖れて東京まで逃げてきた青年が福島に帰るお話しで、今年5月に完成した。「爆発するような大仕掛けな劇やドラマは好きではない。身近な出来事や人情話というか、昭和の大衆演劇のように劇場で経験された笑いと笑顔をそのまま持ってお家にお帰りいただけたらうれしいです」
それは、「人生はまっすぐな道だけではないですからね。何かにぶつかりいくつもの曲がり角がある」という自身の経験から’劇団まがりかど’とつけたことにも重なる。シャンソンのステージでのおしゃべりも、クリスチャンであることは隠さずにごく自然に話のネタにする。元気な時からのファンが今も応援してくれる。「上は80歳になられるかな。那須の別荘でのライブに赤坂から来てくださり、いっしょに笑って楽しんでくださる方もいる。ほんとうに感謝ですよね」。
牧師夫人の近藤葉子さんは、「お仕事柄、教会の礼拝にいつも行かれるわけではないと思います。それだけに、礼拝に出たいというお気持ちは生半可なものではないように感じさせられています。洗礼式の証しで『ぼくは、イエス様なしでは生きられない。祈らないでは進んで行けません』と言っておられた」。演劇に、歌に、ステージでのおしゃべりに込められている思いは、’イエス様はいつも傍にいてくださるよ’という小峯さんの祈りの表われなのかもしれない。
6月12日から15日まで、東京・新宿のシアターブラッツで劇団31年目最初の舞台公演が行われる。「この席空いていますか?」というシリーズ演目の新作で、地下鉄大江戸線がお話しの舞台。稽古も押し迫っている時期だが、31年目からの新たな思いは何かと聞くと、「劇団の若い子たちが、何とか形になるようにしたい。舞台も、映画もネットテレビもそう願って頑張りたい」。芸能界の浮き沈みの厳しさを知るだけに、’売れる’だけではない役者が育つよう応援したい。 【遠山清一】

【東京】演劇「この席空いてますか竏酎蜊]戸線物語竏秩v(劇団まがりかど主催)
東京・新宿シアターブラッツにて6月12日(木)―15日(日)。12日・13日は午後7時―の1日1回公演。14日・15日は午後2時―、午後6時―の1日2回公演。
料金は、前売り3,500円、当日4,000円。
公式サイト:http://ryugakutv.com/magarikado/