19世紀のイギリスで路傍伝道から始まった救世軍ブラス・バンド。金管楽器の達者なクリスチャン一家が、救世軍創立者ウィリアム・ブースの伝道活動をその演奏で助けたことに端を発している。ブースはブラス・バンドが神を賛美する楽器としても、伝道活動でも効果的であるとして、救世軍に導入した。これが今や世界で6万人を超す楽隊員が奉仕する救世軍バンドに発展して、各地の救世軍小隊(教会)の礼拝や伝道で活躍している。日本最初のブラス・バンドも、明治時代に宣教のために来日した救世軍によって誕生した。ニューヨーク・スタッフ・バンド
ブラス・バンドで神を賛美する救世軍楽隊を、発祥当初人々は「歩く銀色のパイプ・オルガン」と呼んで耳を傾けたという。それほど金管のみで演奏されるその音色は柔らかく、ハーモニーは美しい。この伝統ある「ブリティッシュスタイル金管バンド」の演奏を堪能できるコンサート「ニューヨーク・スタッフ・バンド(NYSB)大阪公演」(救世軍本営主催)が、3月20日に大阪市北区のザ・シンフォニーホールで午後7時から開かれる。演奏予定曲目はグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラより“序曲”」、エリック・ボールの「強く雄々しき歌」他。S席4千円、A席3千円、B席2千円。
1887年創立のNYSBは、数々のマーチを作曲して名高いスーザが激賞したという、世界最高峰のバンドだ。NYSB招聘委員会の前田徳晴さんは「今回29年ぶりの来日公演となります。前回もクラシックの弦楽器の繊細な動きを、コルネットやユーフォニアムなどの金管楽器で、軽々と華麗に演奏しました。迫力ある音量と共に楽しいスイングやジャズ曲なども楽しめるハイテク集団です」と、絶賛する。 会場のザ・シンフォニーホールはカラヤンが「残響2秒、どこで聴いても最高の音が楽しめる」と太鼓判を押したホールだ。前田徳晴氏
大阪府茨木市の児童養護施設「救世軍希望館」の館長であり、救世軍天満小隊バンドの楽長も務める前田さんは、希望館の子どもたちで編成するブリティッシュスタイル金管バンド「救世軍希望館ブラスバンド」の指導もしている。小学6年生から高校3年生の40名が、館内イベントや地元の催しはもちろん、全国各地で演奏して喜ばれている。バンドの歴史は古く、1948年に中古の楽器を譲り受けて始まった。60年以上にわたる活動が認められて、府や市、各団体などから表彰されている。ちなみにスポーツも優秀で、希望館野球クラブは近畿大会などで優勝歴があり、注目株のマラソン選手も育っている。
希望館の子どもたちのほとんどが家庭の問題を抱えて来ている。「絶望で入ってくる子どもがここで希望に変わる」よう、彼らの持っている課題を修復していくために、ブラスバンドは大いに役立っている。
「誰かのために演奏することで、子どもたちは福祉によって支えられる存在から、福祉を直接支える存在となります。自分たちの演奏に拍手をいただくことが、子どもたちの自信を取り戻したり、高めていくきっかけとなっていることを感じています」
子どもたちが「ここにいて良かった」と、心から思い、安心して暮らせる居場所でありたいと、祈り願って事業は100年を越えた。ここでも、救世軍が掲げる「心は神に 手は人に」のモットーを実践するべく、キリストの愛を届ける音楽の業を磨き続けている。
▽NYSB大阪公演問い合わせ=救世軍西日本連隊チケット取扱いセンターTel072・623・3758(救世軍・前田、午前9時~午後9時)