2018年03月04日号 01面

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世界的な大衆伝道者で、日本でも1956年以来4度の大規模伝道大会を行った、ビリー・グラハム(William Franklin Graham)氏が、2月21日、米国ノースカロライナ州モントリートの自宅で亡くなった。99歳だった。ビリー・グラハム伝道協会(BGEA)が伝えた。その生涯を通じて、2億1千500万人の人々にイエス・キリストの福音を宣べ伝え、400を超える伝道大会、同時放送が、185以上の国と地域で行われた。テレビ、ビデオ、映画、ネット、34冊の著作を通しては、さらに数百万の人に届いている。(2面に関連記事)

 1918年11月7日に生まれ、第一次大戦後の不況の中で育った。「メッセージは一つだけだ。イエス・キリストがこの地上に来られ、十字架の上で死に、よみがえられたこと。そして罪を悔い改め、信仰によってイエスを主、救い主として受け入れるなら、すべての罪が赦されること」。2005年のニューヨークにおける彼の最後の伝道大会で、こう語った。

 1947年から伝道大会を開始し、49年のロサンゼルスの大会で全米の注目を集めた。彼のメッセージを聞くために子どもを含む何十万人もの人々が集まり、3週間の予定の天幕集会は8週間に延長された。このキャンペーンをきっかけに、50年にはノースカロライナ州シャーロットを拠点とするBGEAを設立、2000年以降は、息子のフランクリン氏がこの組織を率いている。

 その福音伝道は、全米のみならず全世界に及んだ。冷戦終結後はいち早くロシアで伝道大会を開き、北朝鮮を訪れ金日成主席(当時)と会談、香港での大会を衛星中継するなど、常に全世界のすべての人々に福音を伝える可能性に挑戦し続けた。

 説教ではいつも、その土地の最近の話題に触れ、社会や人々の抱える問題を指摘しながらも、聖書に究極の答えがあることを強調した。「聖書は言っています(The Bible says)」という言葉には、聖書を重んじ、イエス・キリストとの人格的な関わりを重要視する姿が現れている。

 かつて氏は本紙のインタビューに対し、次のように答えている。あなたが一番誘惑を感じることは?「偉大な伝道者と人から言われるとき、それを誇ろうとする誘惑が自分にもあります」。最も大切なことは?「第一に祈り。第二に祈り。第三に祈りです」

 歴代の大統領就任式で祈りをささげたのみならず、大きな政治課題を抱える危機的な時に、多くの大統領がグラハム氏のもとを訪ね、その都度彼は、民主党・共和党の立場にかかわらず快く祈り支えた。差別撤廃を支持し、01年には、9月11日のテロの後、ワシントンの国立大聖堂でアメリカと世界に向けて慰めを語った。

 国際会議を通して世界中のキリスト教団体を連携させた。1966年、ベルリンでの世界伝道会議、74年にはスイスのローザンヌでの世界伝道会議を主導し、アムステルダムで開催された伝道者のための3つの世界会議(1983年、86年、2000年)では、208の国と地域から約2万3千人の伝道者を集めた。特に、英国の神学者ジョン・ストット氏らと協力して開催したローザンヌ世界伝道会議に端を発した「ローザンヌ世界宣教運動」は今日まで継続され、宣教の理解に多大な影響を与えている。福音伝道と社会的責任のバランスのとれたホーリスティック(包括的)な福音理解を世界中に広め、福音派を糾合しただけでなく主流派や東方教会との協働にもつながった。息子のフランクリン氏は、父の大衆伝道を継承するとともに、戦争や災害、飢餓、貧困に苦しむ人々に仕える団体サマリタンズパースを創設している。

 日本での大会は、1956年、67年、80年、94年に開催され、のべ66万4千人に福音を語った。これはほぼ日本のプロテスタント人口に匹敵する。そして5万4千人が招きに応じた。

 さらには、日本の福音的諸教派の指導者をつないで大衆伝道、宣教協力、一致を促した。66年のベルリンの世界伝道会義には羽鳥明氏(故人)を始め、日本から30人の伝道者が参加した。翌67年にビリー・グラハム国際大会が日本で行われ、その時の福音派諸教会の協力体制が、ひいては日本福音連盟と日本プロテスタント聖書信仰同盟、福音主義に立つ宣教師2団体(後に日本福音宣教師団に統合)の4者の大連合につながり、この動きから、68年に日本福音同盟が創立された。そして70年には、日本福音主義神学会が創立され、それはさらに、74年に京都で開かれた第1回日本伝道会議へとつながっていく。

 2006年以降も息子のフランクリン氏、孫のウィル氏を迎えて伝道大会が日本で行われている。15年11月東京・千代田区の武道館で開かれた「セレブレーション・オブ・ラブ」でも、同じメッセージが語られたのは記憶に新しい。グラハム氏のスピリットは今も受け継がれている。