2018年04月29日号 04面

 大阪府堺市のシャローム株式会社の住宅型有料老人ホーム「晴れる家5号館」が、4月20日にオープンした。要介護1〜認知症の人も入居できる。在宅支援リハビリ強化型デイサービス「リカバリー」も併設。理学療法士、作業療法士が常駐し、個々に適したリハビリを行って在宅復帰の支援もする「リハビリに強い老人ホーム」の誕生だ。俣木泰三社長は「キーワードは喜び、楽しみ、安心。高齢者は体が動かない、迷惑をかけると、仕方なくじっとしてはるだけ。動けるようになったらあそこに行って楽しもうというような、夢や希望を作る助けになれば」と、体のケアに直結する心のケアに意欲を燃やしている。(記事=藤原とみこ、写真撮影=酒井羊一)

喜び、楽しみ、安心できる住宅型有料老人ホーム

IMG_0030

写真=スタッフと俣木泰三社長と聖子副社長(前列中央)。俣木社長の左後ろは片岡施設長、前列右端は勝さん、後列右から山城さん、高野裕貴さん、田村さん

一人ひとりに合わせたリハビリプラン

IMG_0115

写真=晴れる家5号館外観

IMG_0103

写真=広々とした廊下。どこも採光豊か

IMG_0069

写真=明るくゆったりした共有フロア

IMG_0105

写真=さりげなく散りばめられた和のテイスト

IMG_0055
写真=共有フロアに面した坪庭

阪和線津久野駅から徒歩約14分、閑静な住宅街の一角に、晴れる家5号館は建っている。木造2階建、消防署からほめられたほど堅固な耐火構造だ。茶色を基調とした落ち着いた外観。内観も「晴れる家」初の、和のテイストをふんだんに取り入れたデザインだ。日本のお年寄りの住まいの雰囲気を反映させた内装だという。壁紙やランプシェードなども風雅な和テイスト。全体が茶やベージュ、薄グレーの色合いで、天窓を設置して採光は豊かに、明るく上品な雰囲気を醸し出している。1階の共有フロアに設けた石灯籠のある坪庭が、さらに雰囲気を盛り上げる。
IMG_0059
写真=明るい居室。トイレは介助しやすい3枚開き戸

居室は1、2階合わせて49室。各フロアに2部屋ずつショートステイルームがある。各部屋13㎡にトイレ付き。料金は、敷金25万円、月額費用15万4千200円(家賃、管理費、食費、リネンリース)プラス介護保険・医療保険の自己負担費用、個室の電気料金、必要に応じたオプションサービス費用。夫婦で2部屋入居も可能だ。

入居する人に合わせたリハビリプランを作成して、それに合わせた環境作りを行う。リハビリコーディネーターによる非常に細かな環境調整フローチャートがあり「入居後はどのように生活していきたいか」など、入居者の希望を汲み、暮らしの中で自然にリハビリが行われるように工夫されている。

リハビリコーディネーターで作業療法士の山城雄馬さんは「入居された方が自宅に帰られても、ちゃんと生活できる動きがすべて入ったメニューを作ります」と、一人ひとりのライフスタイルを視野に入れたリハビリメニューの作成に取り組む。入るときも出た後もしっかりケアするのが、シャロームの介護だ。

1泊2食付き千972円という格安のショートステイ「晴れる家ノアホーム」は、前後にデイサービスを利用する人が最長31日まで宿泊できる。家族の介護疲れの予防や、病院から退院直後の自宅復帰の準備、将来の施設入居のリハーサルにも利用できる。

年を取っても体が動かなくても役割がある

IMG_0109

写真=菜園のある庭。ここでイベントも開催

庭には堺市を含む泉北地域の特産レモンの木とブルーベリーが記念に植樹された。作業療法の一環にも使用される菜園には、トウモロコシや枝豆を植えた。このスペースは夏の納涼祭が開かれる場所。スタッフが手を貸して、入居者主体の催しになる予定だ。近所の人を招待し、トウモロコシや飲み物を提供して楽しんでもらうつもりだ。

ここは内に閉じこもるのではなく、地域に開かれた老人ホーム。地域との交流を深め、多くの人と関わりながら、楽しく生き生きと暮らしてほしいと、スタッフは様々なプログラムを考えている。
IMG_0053

写真=アクティーモを使った歩行訓練。寝たきりの人も、片マヒの人も訓練できる

IMG_0050

写真=階段を使った歩行訓練

理学療法士で施設長を務める片岡勇樹さんは「年をとっても、体が動かなくても、寝たきりでも、認知症でも、そこにいるだけでも役割があります。おじいさんおばあさんと暮らしていない子どもたちは、ここのイベントでお年寄りと触れ合うことの楽しさを知り、高齢者ケアに興味を持つきっかけになるかもしれません。オープンな環境で、居場所があり、人と関わり、人に頼られたり役目を果たすことが、どんな人にも必要で大切なこと。晴れる家5号館は、そんな心を大事にするホームにしていきたいのです」と、熱く語る。

山城さんの考案した「百寿健康体操」は、座ったままでもできるリハビリ体操だ。肩や首周り、手首のストレッチもあり、無理なく自然な動きでできる。入居者もデイサービス利用者も、共有フロアなどに設置したモニターで山城さんの作ったDVDを観ながら、7種類の体操を日替わりで毎日行う。この積み重ねの効果は絶大だ。
IMG_0092

写真=温泉風のお風呂の入り口

IMG_0048

写真=天然岩盤石の“濡れない足湯”

IMG_0040

写真=寝たきりでも機器を使って入浴できる

歩行訓練や立ち座り訓練など、その人に合ったリハビリを行うことで、車イスの人はもちろん、寝たきりの人でも起き上がって歩けるようになる人もいる。デイサービス「リカバリー」でも、個々に合ったリハビリプランを作り、在宅でもできるリハビリの指導を行う。午前中にしっかり体を動かして、午後はお風呂で汗を流してもらう。デイサービス管理者の田村将幸さんは「寝たきりでも絶対諦めてはだめ」と、リハビリの効果を強調する。歩行器や平行棒などの機器を駆使して適切な訓練をすれば大丈夫と太鼓判を押す。「リカバリー」では、運動と共にリラクゼーションの場も提供できるプログラムを考案中だ。

副施設長の勝由美子さんは認知症にも効果が期待できる「環境コーディネーター」を作ろうと模索している。古い道具や昔の写真、昔の音楽など、回想法で脳の活性化を促す。体と同時に心もリハビリをすることで、生活の質の向上が期待できる。

「シャロームと関わりのある人は最期まで看ます」

このように、スタッフの意見やアイデアをどんどん取り入れて躍進してきた「やすらぎの介護シャローム」。創業18年で、従業員約600人、堺市で住宅型有料老人ホーム居室数ナンバーワンとなった(晴れる家1号館〜5号館で314室)、市内でも指折りの介護事業所だ。シャロームのいずれかの施設に行けば、スタッフが生き生きとして、仕事に誇りと喜びを持って働いている姿が見られる。シャロームの財産はスタッフだと、副社長の俣木聖子さん。

「介護の仕事に来てくれる人には、本当に頭が下がります。介護はとても気を遣う大変な仕事ですから」

各施設に在駐するチャプレンの存在も大きい。5号館には奥田昭牧師が務める。各施設の日曜夕拝の司式はもちろん、心のケアや相談になくてはならないのがチャプレンだ。1〜4号館の礼拝に参加する人は現在20〜30人。その中から信仰を持つ人もいる。看取りの中で救われた人もいる。聖子さんの腕の中で安心して亡くなった人もいる。施設でも在宅でも、看取りはシャロームの介護の大切な部分を占める。

聖子さんは「創業からこれまで、すごいスピードで来ました。何もないところから始まって、ただただ神様の恵みで、ここまで広げてくださった。おかげでとても良い証しになると感謝しています。これからも、神様のみ心の通りに行くのみです。神様がさらに天幕を広げよとおっしゃれば広げるでしょう。常に笑顔で、ユーモアを持って、ね。介護に、人生に、ユーモアは大事です」と、ほほ笑む。聖子さんの著書で第1回読売・日本テレビ「Woman’s Beat大賞」受賞作品『花咲きまっか』は、創業当時の笑いと涙あふれる奮闘記。あの頃の驚きととまどいは20年近くたった今もそのままに、神の御業の大胆さに感動は深まるばかりだ。

これからますます増える在宅ケアにも、シャロームは力を入れて行く。施設を拠点に周辺のケアに対応するガーデン構想は、シャロームが進める地域密着の在宅サービス。柔軟な対応で「シャロームと関わりのある人は最期まで看る」のが、シャロームの介護だ。

教会関係者にアピールしたいのが、今後シャロームのNPO法人が組織するボランティアの「アガペークラブ」。ポイント制にして、自分も家族も将来に備えられるという画期的な仕組みを考えている。

俣木社長は「シャロームはこれから介護保険外で、喜び、希望、平安を与えられる様々なサービスを提供して行きたいと思っています。高齢者は体が自由に動かせないから、じゃまになってはいけないから、仕方なくじっとしてはる。でも、どこかに行きたい、いろんなことをしたいんです。楽しみや喜びがなければ、生きているのがしんどいだけ。あと半年したらあそこに行けるとか、目標があれば日々の生活に張り合いが生まれる。楽しみ、喜び、安心をキーワードに、希望を生み出す介護を提供して行きます」と、シャロームの楽しい老後に期待してほしいと話していた。