2018年04月15日号 02面

今、日本の子どもや若者は、かつてない人身取引、特に性的搾取の危険にさらされているという。その実態を知り、どうしたら性的搾取をなくせるかを考える講座「日常に潜む性の搾取から子どもと若者を守るには」(公益財団法人武蔵野生涯学習振興事業団主催、ノット・フォー・セール・ジャパン〔NFSJ〕企画)が3月24日、東京・武蔵野市境南町の武蔵野プレイスで開催。坂本新氏(特定非営利活動法人 人身取引被害者サポートセンター ライトハウス事務局長)が「子ども・若者の性的搾取の実態と対策」、福田和子氏(世界性科学学会Youth Initiative メンバー、国際基督教大学公共政策メジャー4年生)が「ヨーロッパに学ぶ、若者の性を受け止める社会の仕組み・大人の理解」と題して講演した。

坂本氏は、日本人の被害例として、①AV(アダルトビデオ)をはじめとするポルノ等への出演強要、②売春の強要(風俗店舗、デリバリーヘルス等での従事)、③児童買春(JK〔女子高生〕ビジネス等)、④児童ポルノ、⑤リベンジポルノ、などを挙げ、2016年1月から12月までのライトハウスの直接支援数は146人で、うちAV出演強要100人、売春強要22人、その他24人だったと語る。DSC_0224
AV出演強要被害は、被害者をだまし、脅し、経済的困窮状態という弱い状態につけ込み、本人の意思に反する形で出演を強要され、第三者が利益を得るという点で、まさに人身取引であると指摘。「AVに出ようと考えたことのない人たちに、スカウトが『モデルになりませんか?』と街頭で声をかけ、AVプロダクションに誘導し、巧妙かつ執拗な説得で契約をさせる。撮影の連絡が来た時、初めてAV撮影だと知るが、拒否した場合、多額の違約金を要求され、『家族・学校にばらすぞ』などの脅しがあり、出演を余儀なくされる。一度ネットに流出した映像は、完全削除は非常に困難だ」
相談を寄せる人と相対する場合は、▽「相談者は被害者である」という認識で話を聞いてほしい、▽被害者の立場で寄り添い、傾聴を常に意識してほしい、▽打てる手がない状況でも、支援団体につなぐなど、相談者が孤立しない次の手を考えてほしい、などと訴えた。
福田氏は、世界で初めて買春が禁止されたスウェーデンに、性に関わる政策や社会状況を学ぶため、2016年から1年間留学。そこで見たことは「若者が自分の心・身体・性を守れる環境が、性的に傷つくはるか前から日常的に整っていること」だった。
その環境として▽RFSU(スウェーデン性教育協会)、▽ユースセンター、▽UMO、▽性教育、が具体的にある。「RFSUは1933年設立のNPOで国内に30以上のブランチがあり、全国にボランティアがいる。国内に知らない人はいないと言ってもよく、若者との距離が近い。ユースセンターは260か所以上あり、13〜25歳を対象にカウンセリング、避妊具の提供、STI(性感染症)検査などがほぼ無料で受けられる。すべての若者が当然の権利として訪れることのできる場所とされていて、対応スタッフの性別も選択でき、プライバシーも厳守してくれる」DSC_0247
スウェーデンではこれらの団体を通し、身体的・心理的・社会的問題が包括的に取り上げられると分析する。一方、日本では、「性に関して自己管理することへの馴染みが薄く、日常レベルの性に関する悩みやトラブルに対する包括的対処が不在だ」と指摘。「若者の『日常の性』から受け止める社会の仕組み・大人の理解が必要」だとし、「あまりにないものだらけの日本の性を巡る環境を変えたい」と、「♯なんでないのプロジェクト」(Shttp://www.nandenaino.com)を立ち上げ活動していると語った。
質疑応答では「子どもが被害に遭ったのを知った時、親はどんな言葉をかければいいか」という質問に対し坂本氏は「どのような状況であっても、あなたは悪くないと言ってほしい」、「性教育をすることで性の乱れにつながらないか」に対し福田氏は「むしろ性が乱れているのは今現在で、多くの人が傷ついている。性で誰も傷つかないようにするのが性教育なので、乱れさせるものとは逆のものと私は考えている」と答えた。
その後、「大人たちにできること」をテーマに各テーブルでディスカッションした。【中田 朗】