ニコデムに初聖体拝領の練習をするオラ(右)。(C)HBO Europe s.r.o.,Wajda Studio Sp. zo.o.Otter Films Wazelkie prawa zastrzezone,2016

「初聖体式」とは、ローマ・カトリック教会などで幼児洗礼を行けた児童が、信仰理解を認められて、キリストの化体とされる(種のない)パンを信仰者として初めて拝領する秘儀体験。父母が別居中で、家事や自閉症の弟の面倒を見ている14歳の少女が、近づいている弟の初聖体式をきっかけに再び家族いっしょに暮らせることを願う日常と厳しい現実を丹念に見つめていく。

自立できない両親と
自閉症の弟を抱えて

ポーランドのワルシャワ郊外の街セロック。14歳の少女オラは、飲酒の問題を抱えている父親マレクと、そんな夫に愛想をつかして出て行ったまま帰らない母親マグダレナらから家事一切を押し付けられている状態だ。一歳年下の弟ニコデムは自閉症で、身支度や学校の教科書の準備も覚束ない。家庭保護で訪問してくる福祉士は、普通なら子どもたちを施設に預ける状況だと心配するが、オラは「特に問題ない」と笑顔で応答し、健気に家事をこなし、弟の面倒を見ている。

オラには一つの希望の光がある。ニコデムが教会での信仰教育をクリアして初聖体式を受けることができるようになること。初聖体式の後には神の祝福を分かち合って食事し、再び家族がいっしょに暮らせるようになるようにと願っているオラ。だが、ニコデムは「僕は空気じゃない。生きている」とか、自分を何かの動物と言い信仰教育の復習や祈祷の言葉も覚えようとしない。ニコデムが一人の信仰者として認められる初聖体式を迎えることは、オラにとっても切実な祈りなのだ。

家を出たまま別の男と同棲し子どもも産んでいる母マグダレナとは、よく電話で話してはいる。車が故障しているとか言っていたマグダレナだが、ニコデムの初聖体式には出席するという。家族いっしょに昼食をすることもできてオラの笑顔がはじける。

マグダレナが赤ちゃんを連れて家に戻ってくる。部屋を片付けてベビーベットの置き場所づくりに忙しないオラ。ニコデムは遊び散らかしていた動物の人形たちが、オラに捨てられては大変と必死にかばい避難する。オラが祈り願っていた日々が戻ってきそうになるのだが…

教会での初聖体式に家族がいっしょに集まり、オラの笑顔がはじける。(C)HBO Europe s.r.o.,Wajda Studio Sp. zo.o.Otter Films Wazelkie prawa zastrzezone,2016

オラの心に寄り添えた
ザメツカ監督の映像美

オラが家族と暮らすアパートは狭い。バスタブに浸かっているいるのが好きなニコデム。むしゃくしゃしながら部屋を片付けるオラ。どのショットもザメツカ監督のカメラなど存在しないかのようなリアルな表情と情景を映し撮っている。ザメツカ監督は、あるインタビューでオラの視点からこの作品を描いたことについて「私は、映画の中に描かれている状況のいくつかを経験しているので、自分自身の人生を通じて、彼女鵜の気持ちを完全に理解することができました」と語っている。ザメツカ監督が、オラの心に寄り添うことができたことで、ニコデムや両親の心をも打ち解けた映像を引き出させている。
聖体拝領(コミュニオン)は、信仰をもってキリストの身体(パン)をいただく時、キリストと一つに交わることをも意味している。作中、マグダレナが初聖体式に臨む姿を撮った回想シーンが挿入されている。オラにとって家族が初聖体の祝福に与ることは、家族が一つであることと、キリストと一つにされた一人の人として現実を見つめて歩むことの祝福を感じ取っているのかもしれない。そのような想いを抱かせられるラストでもあった。 【遠山清一】

監督:アンナ・ザメツカ 2016年/ポーランド/75分/ドキュメンタリー/原題:Komunia 配給:ムヴィオラ 2018年6月13日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開。
公式サイト http://www.moviola.jp/shukufuku/
Facebook https://www.facebook.com/shukufuku2018/

*AWARD*
2017年:山形国際ドキュメンタリー映画祭大賞受賞。ヨーロッパ映画賞最優秀ドキュメンタリー賞受賞。ポーランド映画賞最優秀ドキュメンタリー賞受賞。 2016年:ロカルノ映画祭批評家週間最優秀作品賞受賞ほか多数。