ルート・アルトン(右)と友人のエレンは戦争未亡人を装って街をさまよい、新たな隠れ場所を探す。 (C)2016 LOOK! Filmproduktion / CINE PLUS Filmproduktion

ヒトラーのナチス政権下、およそ16万人のユダヤ人がドイツ国籍を保有していた。だが、国外移住は認められず1941年頃から強制収容所への移送が始まり、ついに宣伝相ヨーゼフ・ゲッペルスは、43年6月に首都ベルリンからの「ユダヤ人不在」を正式に宣言した。だが、実際には約7000人のユダヤ人がベルリン市内に潜伏し、戦争終結まで約1500人が生き延びた。彼らは、どのようにして“見えない存在”であり続けられたのか。4人の証言を織り込みながら物語が構成され展開するドキュドラマ。

4人の証言者たちの物語

20歳のツィオマ・シェーンハウスは、家族とともに当局から移送命令を受けたが、集合場所で担当官に「工場に戻れと言われています」と弁明し自ら偽造した命令書を提示し強制移送を免れる。彼の偽造技術はユダヤ人を支援するカウフマンに認められ大量のパスポート偽造を受注する。だが、不注意なミスが重なり自分が指名手配されてしまう…。

医師の父親を持つ20歳のルート・アルントは、医師の父親を娘の恩人と敬意を抱くクリスチャンのゲイル夫人に匿われる。だが危険が迫り友人のエレンと共に街頭を彷徨ていたがドイツ国防軍のヴェーレン大佐の邸宅でメイドの仕事を得ることができた。大佐は二人がユダヤ人と気づきながらも何故か仕事を与えて守っていたが…。

16歳だったオイゲン・フリーデは、活動家の家に匿われ周囲に怪しまれないようヒトラー青少年団の制服を着せられた。ある日、収容所を脱出してきた男から大量虐殺の事実を聞き反ナチスの抵抗運動を手伝うようになる。

反ナチスの地下活動を手伝っていたオイゲン・フリーで(右)はベルリンに侵攻してきたソ連兵に発見されるが… (C)2016 LOOK! Filmproduktion / CINE PLUS Filmproduktion

17歳だった孤児のハンニ・レヴィは、母の友人だったクリスチャンのベルガー夫人を頼ると髪を金色染められ親戚の娘として偽名を与えられた。ある日、映画館で出兵間近の青年に声を掛けられ、映画館で働く母親の相談相手になってほしいと頼まれるが…。

生き続けることへの強い意志と
人間を信頼するとき起こる出会い

証言者4人は年齢も情況もそれぞれ異なり物語が重なり合うことはない。だが、彼らが生き続けようとする意志と決断が緊迫した日々を乗り越えさせる。そして、人間を信頼するとき、想像もできない助け手が起こされる出会いの実話に触れる。それは、たとえ独裁的社会、閉塞的な社会であっても生き続けることの意味を、21世紀の現代に力強い示唆を感得させられる。 【遠山清一】

監督:クラウス・レーフレ 2017年/ドイツ/110分/映倫:G/原題:Die Unsichtbaren 配給:アルバトロス・フィルム 2018年7月28日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
公式サイト http://hittler-kiiroihoshi.com
Facebook https://www.facebook.com/hittlerkiiro/