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平和の礎 (C)2015 SIGLO

1945年6月23日、太平洋戦争での沖縄戦が組織的な戦闘を終結した日として歴史に刻まれている。復帰前の1961年に琉球政府は、これにちなんで6月23日を「慰霊の日」記念日として公休日に定めた。復帰によって法的根拠を失ったが、91年から条例で再び公休日に定められた。これは、忘れるべきではないという一つのケジメなのだろう。だが、忘れるべきでないというのは、戦争が終わったということではないのかもしれない。本作で大田昌秀元沖縄県知事が「戦争体験者は戦争は今も続いているという言い方をするわけですが、私なんかもそう思います」という心情と史実が、ジャーナリストのユンカーマン監督の目をとおして記録した、明日を指し示すドキュメンタリー作品だ。

アメリカ人のユンカーマン監督は、マシュー・ペリー代将率いる海軍“黒船”が1853年、那覇港に来航し翌年琉米修好条約を締結した近代史から沖縄を解き起こす。当時からアメリカにとって沖縄はアジアへの戦略的拠点として認識されていた。
それから約92年後、アメリカは戦勝国として沖縄を手に入れる。その現代史を第1部「沖縄戦」、第2部「占領」、第3部「凌辱」、第4部「明日へ」の4部構成にまとめていく。

第1部「沖縄戦」では、“鉄の暴風雨”と表現されたほどの艦砲射撃弾をくぐり抜けた後、凄惨な地上戦で対峙し生き残った元アメリカ兵と元日本兵、現地徴用された沖縄の人たちの証言とともに新たに発掘された当時の資料映像などを重層的に構成し沖縄戦の実像に迫っていく。

第2部「占領」では、沖縄本島への上陸作戦開始直後から基地建設を始め占領計画が実施され、アメリカ軍による差別的な占領政策が戦後も実施されて行く実態を追っていく。

第3部「凌辱」では、戦時中に読谷村で起きたチビチリガマ集団自決(集団強制死)の生存者証言や、沖縄に派兵された日本軍部隊の駐屯地域にはまず慰安所が島々にまで作られたことを追跡している「女性たちの戦争と平和資料館」などが実態を語る。「凌辱」は薩摩以来の日本と日本軍では終わらず、戦後のアメリカ駐留軍によっても行われ続ける。とりわけ女性たちへの性暴力の実態を明らかにしていく。なかでも兵士らによるレイプ事件は、日常茶飯に起こりほとんど実行犯たちは軍法裁判にかけられることもなく、罪悪感さえ麻痺していたという元憲兵隊員の証言には胸が痛む。そのようななかで、97年に沖縄県民が結束して地位協定見直しなどを求めた県民総決起大会の起因となった小学生少女レイプ事件事件(95年)の実行犯の一人が、インタビューに答え懺悔の心情を吐露しているのは印象的だ。

最終章ともいえる第4部「明日へ」では、普天間航空基地“返還”のためという名目で辺野古への新基地建設をめぐり強引な対応を取る日本政府と私たち日本人の無関心さへの深い失望感が語られていく。だが、県知事選挙と総選挙に現れた沖縄の“民意”は、不断不屈の連帯を強めていく。

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NO 基地!を意思表示し続ける (C)2015 SIGLO

10年前に「映画 日本国憲法」で世界の知識人12人へのインタビュー取材を基に日本国憲法を検証しその意義を問いかけたユンカーマン監督は、本作ついて「米軍基地を撤廃するための戦いは今後も長く続くでしょう。沖縄の人々はけっしてあきらめないでしょう。しかし、沖縄を「戦利品」としての運命から解放する責任を負っているのは、沖縄の人々ではありません。アメリカの市民、そして日本の市民です。その責任をどう負っていくのか、問われているのは私たちなのです。」と語っている。

監督:ジャン・ユンカーマン 2015年/日本/148分/ドキュメンタリー/英題:The Afterburn 配給:シグロ 2015年6月20日(土)より東京・岩波ホール、沖縄・桜坂劇場ほか全国順次公開。
公式サイト http://okinawa-urizun.com
Facebook https://www.facebook.com/okinawa.urizun/

 

関連イベント:
岩波ホールでのトークイベント日程決まる。
映画「沖縄 うりずんの雨」上映にともない、下記に日時にトークイベントが催されます。

6月20日(土)
*1回目~3回目の上映前:ジャン・ユンカーマン監督
6月23日(火)=慰霊の日=
*2回目上映後 17:00~:ジャン・ユンカーマン監督+山上徹二郎さん
7月3日(金)
*2回目上映後 17:00~:石川真生さん(写真家)
7月8日(水)
*2回目上映後 17:00~:池田恵理子さん(wam 女たちの戦争と平和資料館)
7月16日(木)
*2回目上映後 17:00~: 三上智恵さん(映画「戦場ぬ止み」監督)