2015年01月04・11日号 3面

「大勝」ではなかった

2014年12月14日に投開票が行われた第47回総選挙の結果、自民、公明両党は326議席を獲得し衆議院の3分の2を超える議席を維持しました。それは、参議院で法案が否決されたとしても、衆議院の再議決で成立させることができ、衆議院に限って言えば憲法改正発議ができるということです。
しかし、大勝と言われながらも、投票率は戦後最低の52・66%であり、自民党は単独で過半数の291議席を獲得しましたが、
公示前よりも4議席減らしており、得票率は小選挙区で48%、比例代表では33%に過ぎません。今回も一票の格差が是正されず法の下の平等を定めた憲法に違反しているとして、小選挙区の選挙無効を求める弁護士グループが、全295小選挙区で一斉提訴を予定しています。さらに沖縄においては、辺野古の新基地建設反対派が全小選挙区で当選しました。また、現政権よりも保守色を前面に出した次世代の党は、公示前の19議席から2議席へと減らしましたが、安倍政権に対する明確な対決姿勢を打ち出した共産党は、公示前の8議席から21議席へと増やし議案提案権を獲得しています。

「改憲」「再稼働」進む

ところが安倍首相は、開票日の夜には既に、全閣僚を留任させ、アベノミクスを継続し、憲法改正に向けた議論を推進する考えを表明しています。選挙結果を待っていたかのように、12月16日には建設中の大間原発が新規制基準への適合性審査を申請し、12月17日には高浜原発3、4号機が新規制基準に適合しているとされ、川内原発に続いて再稼働が進められようとしています。自民党は公約において、原発を重要なベースロード電源と位置づけて活用する方針を明らかにしていますから、今回の与党圧勝の追い風を受けて、原発再稼働の動きが今後も加速するのではないかと懸念されます。
さらに今後、14年12月10日に施行された特定秘密保護法が具体的に適用されていくでしょう。また、7月1日に行使容認が閣議決定された集団的自衛権についても、実際に行使するための法整備が本格的に行われます。 安倍首相自身、15年の通常国会に関連法案を提出すると明言しており、同時に自衛隊と米軍の役割分担を定めた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定も目指しています。そうなりますと、自衛隊が、アメリカが起こした戦争の戦闘地域にまで行って行動することになり、そこで攻撃されたならば武器を行使することも起こりえます。それはまさに憲法九条で放棄した「戦争」であり、否認した「交戦」に他なりません。しかしながら憲法九条こそ、すべての戦争を終結に導き、武力紛争を予防し、正義と平和が実現するための中心的価値として世界からも注目されているのです。
憲法改正は、自民党結党以来の悲願であり、安倍首相も「歴史的使命」と強調しています。今や国会で改憲案が発議されれば、国民投票が実施できる環境も整っています。12年に自民党の憲法改正草案は決定していますから、今後は具体的な改正項目を絞る改憲原案の議論が進められます。しかし、まずはその改憲案そのものが現行憲法の主旨に反していないかどうかの議論がなされるべきであり、反していればそれは排除されなければならないのです。特に信仰者にとって、天皇元首化を打ち出し、社会的儀礼として国家宗教を復活させるかのような自民党憲法改正草案はとても受け入れられません。

信仰に立ち変化を

私たち日本のキリスト者は、戦時下に犯した神社参拝、天皇崇拝という偶像礼拝の罪と、侵略戦争への加担の罪を決して忘れてはならず、戦争責任、戦後責任の悔い改めの告白を常に新たにし、どのような嵐が吹き荒れようとも、主イエス・キリストご自身を土台として堅く信仰に立て上げられたいものです。
かつて民主党への政権交代が起こったときには、69・28%と戦後最高の投票率でした。主権者である私たち国民がその権利を行使するならば変化が起こります。「わたしはあなたをイスラエルの見張り人とした。あなたは、わたしの口からことばを聞くとき、わたしに代わって彼らに警告を与えよ」(エゼキエル3・17)とのみことばを、私たちも真摯に聞いて行くべきです。