「今、こちらで大きな地震がありました。大津波警報が出ています。祈ってください…」
 3月11日、阿部克衛さんの携帯に次女の淳子さんから一通のメールが届いた。その時、阿部夫妻はウィクリフ宣教師として働いている長女の宣教地を訪問していた。
 その直後からメールが不通になり、淳子さんとは一切、連絡が取れなくなった。心配になり、長女が出先から戻るとすぐに日本大使館に電話をして、地震状況を聞いた。大使館員によると「今、気仙沼は大変なことになっている」とのことだった。テレビを見せてもらうと、見慣れた街並みに津波が押し寄せ、家や車が流されていく光景が目に飛び込んできた。「しばし呆然として立ちすくみ、現実のこととは思えず、目を疑いました」
 「家族、家は大丈夫か、自分がここにいるのはなぜなのか…」いろんな思いが交錯した。(中田 朗)

3月4日、11日号に掲載

写真=津波で流された家の跡地に立つ阿部克衛さん。気仙沼で。