BalletBoys_main 各地のオペラハウスで、たくさんの子どもたちがバレエを踊っているヨーロッパの国々。だが「彼らはたいてい10代になる前にバレエをやめてしまう」と語るケネス・エルベバック監督。エレガントさがイメージについて回るだけに、男子ともなればさらにバレエ人口は少なくなる。ノルウェーの首都オスロでプロのバレエダンサーを目指すルーカス・ビヨルンボー、シーヴェルト・ロレンツ・ガルシア、トルゲール・ルンドらは共に14歳。中学から高校へ、多感な少年期にチャレンジしている狭く厳しいダンサーへの道。寄り添うようなまなざしで彼ら3人を追っているドキュメンタリーだ。

3人とも12歳ころからバレエを始め、同じ中学校で学び、将来はバレエダンサーを目指し、お互いにかけがいのない親友として友情をはぐくんでいる。更衣室では屈託なく談笑し、毎週6日間猛訓練をこなしていく。14歳の彼らの課題は、女の子を持ち上げられるように上半身を鍛えることだ。

15歳になった彼らに中学校の担任教師は、「もしバレエダンサーになれなかったらどうするのか? ほかの進路も考えてみたら?」と問いかける。だが、彼らは異口同音に「今は、ダンサーを目指したい」と答える。しかし、シーヴェルトは両親からも「学校の勉強をもっとしっかりやるように勧められている」。シーヴェルト自身は、ほかの二人に比べて自分はダンサーに向いていないのかもしれないと悩み、夏休みバレエから離れてみて考えを決めたいと悩んでいる。

左からトルゲール、シーヴェルト、ルーカス
左からトルゲール、シーヴェルト、ルーカス

ルーカスは、ダンサーへの目標を明確に持っている。誰よりも早くレッスン室に入り入念に準備運動し、教師たちの評価も高い。トルゲールは、頑健な身体に恵まれていて、バレエコンクールなどへの取り組みも現実的に考えている。フランス・グラース国際バレエコンクール、スウェーデン・ファールン北欧バレエコンクールへのチャレンジを経て、オスロ国立芸術アカデミー(KHiO)への入学試験を受け、3人ともパスした。
だが、思いがけない出来事が起こる。入学願書を提出していないルーカスに、名門の英国ロイヤル・バレエスクールからオーディションの招待状が送られてきた。合格すればもしダンサーになれなくとも進路の道は広がり最高のチャンスだが、高額の学費や言語、環境の変化、自分の才能についてなど、ルーカスは不安やプレッシャー、課題を真剣に検討し自分の決断を見極めようとする。

2014年ローザンヌ国際バレエコンクールでは、優勝した二山治雄さん、2位の前田紗江さん、6位に加藤三希央さんら3人が入賞。今年の同コンクールでは、伊藤充(みつる)さんが3位、金原里奈(りな)さんが5位で入賞し、日本のバレエ界も若手の活躍が話題となっている。また、今年の同コンクールには、シーヴェルトもファイナリストに選ばれて演技した。

14歳から16歳の時期に、自分の人生の目標に向かってそれぞれに進もうとする少年たち。舞台での演技やレッスンでのハイスピード撮影など、バレエの動きの美しい映像。最初の頃のあどけなさが残る顔立ちが、厳しい訓練といくつものコンテスト、入学オーディションを経てたくましい表情へと変わっていく。その姿に「私は決勝点がどこかわからないような走り方はしていません。空を打つような拳闘もしてはいません」(Ⅰコリント9章26節)という聖書の言葉の力強い響きを思わされた。 【遠山清一】

監督:ケネス・エルベバック 2014年/ノルウェー/75分/ドキュメンタリー/原題:Ballettguttene、英題:Ballet Boys 配給:アップリンク 2015年8月29日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開。
公式サイト http://www.uplink.co.jp/balletboys/
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