2018年09月16日号 02面

 8月25日、日本福音ルーテル東京教会で、同教会の関野和寛牧師が書いた『すべての壁をぶっ壊せ!』(日本基督教団出版局)の出版記念イベントが開かれた。この本は同出版局の月刊誌「こころの友」に連載していたもの。関野牧師は、牧師仲間と共にロックバンド「牧師ROCKS」を結成しており、この日のイベントでも演奏を披露した。曲はすべてオリジナルで、歌詞は賛美であり、信仰を表わしている。

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 このイベントは伝道集会も兼ね、演奏に先立って礼拝体験も行われた。その中で語られたメッセージはサマリヤの女について。「キリストは自ら壁を壊していった。当時の慣例には壊さなきゃいけないものがあった。サマリヤの女と話したのもそう。そうした壁は、今も教会にあるのではないか。自分の心を素っ裸にして、キリストの前に出ていかなくてはならない」と問いかけた。

 また、本についての裏話も飛び出した。「『ぶっ壊せ!』という過激なタイトルですが、僕は結構おとなしいほうですよ(笑)。でも、今日、こうして『ぶっ壊せ』という言葉に反応して、この教会に集まってくれた皆さんのおかげで、勇気を持つことができました。キリストは人間にとって最後の壁である『死』をぶっ壊した。その死の向こうに、本当のいのちがあった」

 その後開かれた交流会では、本の制作の裏話やサイン会、質疑応答などが行われた。以前から「牧師ROCKS」の活動に注目していると語る来場者が多く、所属教会もカトリック、プロテスタント各派など様々だった。

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 関野牧師は、本になったコラムの影響がいろいろとあったと話した。「コラムを読んだ人が訪ねてくるようになった。様々なアディクション(依存症)の人もいた。その人たちに『やめろ』『祈る』と言うのは簡単だが、まず『キリストはお前を最後まであきらめない』と言っている」

 また、コラムを読んで「とにかく会いたい」と、和歌山からアポなしで数年前に上京した元高校生が短い証しをした。かつては信仰に積極的にはなれなかったが、壁を感じさせない関野牧師との会話を通して思いが変わり、今ではルーテル学院大学に通って牧師への道を歩んでいるという。

 プロテスタント教会の中でも典礼を重んじるルーテル教会にあって異色の牧師は、アジア各国の店がならぶ大久保の地で、本来不要なはずの壁を取り除くべく奮闘していた。【砂原俊幸