葬儀業で日本と教会を励ます オリーブ山葬祭代表 NPO法人おとむらい牧師隊理事長 石村修善さん

卒業礼拝で神様を体験する
フィリピンで宣教の視野拡大

もともとはキリスト教の背景のない家庭に育ったが、高校時代、福岡県のキリスト教主義学校の西南学院に通った。「初めは『宗教を信じるのは弱い人間』とプライドをもっていて、クラスにいたクリスチャンに悪口を言っていました」

 転機は卒業礼拝だった。…人間は人に頼って生きている。しかしどんなにあなたを大切に思う人も、百万人の群衆の中にあなたがいたら、見つけることができない…。

 そのような話を聞きながら、「身体の中に、神様が入ってくるような強烈な経験をした」と言う。「ものすごい喜び。単なる知識で知っていたキリスト教ではない。目の前に見えている人よりもリアルな神様が、いつも自分の中にいる。孤独ではない。このようなことを多くの人が味わってほしいと思いました」

 広島県で大学卒業後、一般企業に就職し、後にその会社の鹿児島営業所に配属。そこで日本フォースクエア福音教団の教会に通うようになった。教会生活の中で、宣教の思いも温めていた。30歳を前に退職し、発展途上国の状況を自身の目で見た上でその後の身の振り方を考えたいという思いもあり、フィリピンの神学校を紹介され入学した。「フィリピンで経験したことは大きい」と話す。「フィリピン人学生達22人との大部屋生活をはじめ、日本人として圧倒的な少数者になるという体験をした。また日本ではなかなか出会えなかったタイプの日本人にも出会いました」。ある人は、暴力団を起こすつもりでフィリピンに来た後、信仰を得ていた。借金を踏み倒して逃げた相手を追いフィリピンに来た地上げ屋の社長は、フィリピンで信仰を持ち、今は帰国して牧師となり、生活保護が必要な厳しい環境の人たちを助けている。

 フィリピンで3年間学び、外国人伝道ではなく日本人伝道をすると決めた。自らは教会形成を目指さず、フルタイムで外に出て伝道をし地域教会につなげる働きがしたいと思ったが、そのような道は開かれず、帰国後は派遣社員をしながら東京の教会で奉仕をした。そのような中、教団のしかるべき立場の方から「(教会形成を目指さないのは)困る」と言われたことで、自営しながら伝道するしかないと覚悟した。自営のために「この世の作法を学ぼう」「この世の作法は経済と法律」と考え、それを実地で学ぶために転職して正社員となり、また体系的に学ぶために中小企業診断士試験の教科書を買い込んで勉強した。

ふるさとで葬儀業を立ち上げる
「教会成長・千載一遇の波が来た」

 経済と法律の学びが進む中で、起業を具体的に考えるようになった。ある牧師がキリスト教葬儀社の存在を教えてくれた瞬間、これだ、と思った。思い出したのは、かつて参加したある教会の葬儀。一般の葬儀社を利用していたが、「内容にがっかりした。礼拝であるはずの葬儀を、異教の礼拝を生業(なりわい)としている人々の手を借りて行わざるを得ない、宗教的少数者であることの悲哀を感じました」

 「地方はさらに因習のプレッシャーもあり、輪をかけて難しい。この悲哀を解消するための葬儀インフラを、地方にこそ作りたい」と考え、調べてみると故郷の福岡には専門の業者はない。「神様が私に残しておいてくれた地域だ」と思い、40歳で会社をやめ、名古屋市の葬儀社で修行。翌年福岡市に隣接する那珂川市で葬儀業を立ち上げた。「牧師先生方からも『助かる』と喜ばれた。天国の希望を共有していることから、ご遺族の満足度も高い」と話す。

 日本の課題に向き合い、日本の文脈でできた働きが、NPO法人おとむらい牧師隊だ。「多くの国において、工業化が進む過程で、プロテスタント教会は農村から都市に流入する労働者の受け皿になり成長してきた。日本でもかつて農村の次男、三男が『金の卵』と呼ばれ中学卒業後に労働力として都市に集まった。ところが日本では例外的に、教会ではなく新興宗教などが受け皿になった経緯がある。私見だが、日本の教会は旧士族・高学歴の人が多く、農村出身の低学歴労働者を受け入れられなかったのではないか」

  「かつての金の卵も今や都市で老境に入り、故郷の地縁から切り離されていることや、現役時代の経済的不安定さから、宗教者を呼ばずに直葬で送られる人が多いと感じている。おとむらい牧師隊への葬儀の生前相談を通して、50年、60年遅れであっても聖書の言葉に触れてもらえるのは嬉しい」と語る。「現在、日本で行われる葬儀の約10%が、お金が無くて葬儀に宗教者を招くことを断念したものだ。生活保護世帯の葬儀に宗教者が来ないのは葬儀業界の常識。死者数も、生活保護受給世帯も年々増加しており、今後もこうした直葬が増えると予想される。おとむらい牧師隊は、時代の必要に応えながら、聖書信仰に触れてもらえるもの。派遣された牧師達の多くが『拝まれんばかりに』遺族から感謝されながら、聖書からメッセージを語っている。日本の教会がこの千載一遇の波にのれば、世界で初めて、脱工業・人口減少社会で教会成長を経験する国になるのではないか」

 おとむらい牧師隊では、地域のホームレス支援団体から葬儀を専属で頼まれてもいる。「人が亡くなるたびに牧師が派遣される。こうした仕組みを作ることで、残された関係者はきちんと見送れたという納得感を持つことができ、また牧師がメッセージを語る機会が創造される。この仕組みは大都市ほど歓迎されます」

 自営業の価値を次世代に伝えたいと願っている。「働くというと、どこかの企業に就職することになりがち。自分で起業することも選択肢として考えたい。自営業者は人々のニーズを見て、考え、行動を起こし、成功、失敗を肌で感じる。『祈りましょう』で終わらず、『じゃあ、こうしよう』という構想力と実行力がある。時間管理も自分で出来るので、教会の奉仕でも力になります」