弱い者に向かう差別の構造 東京告白教会講演会で西浦氏 沖縄の現状訴え

 東京告白教会主催の平和講演会、「辺野古でいま、何が起きているのか」が8月15日、東京都内で開催された。講師は、35年間務めたキリスト教学校教員を今年3月に早期退職し、沖縄に移住して、辺野古基地建設の反対運動や平和ガイドとして活動する西浦昭英氏。戦後沖縄が担わされてきた歴史的状況とともに、自らその場に身を置く者として沖縄の現状を語った。      【髙橋昌彦

   ◇  ◇

 まず西浦氏は沖縄の状況を数字を挙げて概観する。その面積は、日本の総面積の0・6%、人口は1・1%。そこに日本全土にある米軍専用基地の70・6%が集中する。この状態を次のように説明する。「沖縄の人口は日本全体の約1%。日本の総人口を仮に100人とし、米軍基地全体を100キロの荷物とするなら、沖縄は一人で荷物の70%の70キロを持ち、本土では99人で30キロ、一人当たり0・3キロの荷物しか持っていない。沖縄の人は、本土の人間の231倍の荷物を持っていることになる」

 歴史的に見ても、本土の米軍基地がもともと日本軍の基地だったところであるのに対し、沖縄の基地は、1945年以降に拡張され、普天間飛行場のように、住宅、農地だった所を強制的に接収された。その40%が私有地で、地権者は3万人。基地内にある墓参りは、米軍の許可なしには行けない。「戦後74年間奪われた土地を返してほしいというのは当たり前ではないか」

 現在政府は、沖縄中南部の基地を北部にまとめようとしており、辺野古がある名護市久志地区は人口4千240人で、名護市全体の6・7%。「米軍基地は人口の少ないところ、反対運動が起きにくいところに作られている。沖縄の平良修牧師は『嫌な物は、より弱く、小さく、そして人の少ない場所に押しつける差別の構造がある』と言った。それは、原発や核廃棄物、産業廃棄物の問題も同じだ」

 現在西浦氏は、埋め立てが行われている辺野古、埋め立てのための土砂が搬出される安和、塩川地区での抗議活動に参加している。海上保安庁の職員やトラックの運転手たちとは、立場上相対する形にはなるが、顔を合わせれば互いに挨拶をし、声を掛け合う状況なのだという。「彼らの中にも、工事を快く思っていない人はいるのだろう」

 その他、日本の米軍基地への負担がいかに片務的か、新基地建設の地質的な問題、周辺建物の高さ制限、基地返還による沖縄への経済効果などを指摘し、最後に故翁長雄志知事の言葉で西浦氏は講演を結んだ。「公正な選挙で選ばれた地域のリーダーが、地域の海に座り込み、本土の機動隊員が排除する。日本は民主主義の国と言えるだろうか」「米軍基地は、沖縄経済発展の最大の阻害要因である」