今、日本に30万人以上いると言われている在日ベトナム人。彼らはこのコロナ危機の中でどんな状況に置かれているのか。記者は8月9日、東京・荒川区日暮里の東京日暮里国際教会で毎月第2日曜日に行われているベトナム語礼拝に参加した。

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 当日は新型コロナ感染を避けるため、オンラインで行われた。ベトナム人参加者は25人。その多くは、日本で仕事をしている2030代の若者だ。


説教は同礼拝を手助けしている日本人の長谷川与志充さん(三浦綾子読書会顧問)で、通訳は同礼拝メンバーのグェン・ティ・クィ・ナーさん。ベトナム語礼拝を担当するトラン・ニー牧師がアメリカに1年間の予定で帰国中のため、長谷川さんが担った。メッセージでは、三浦綾子の小説『氷点』から「人生の目的」、「自分の存在価値」、「罪の赦し」、「将来の希望」という四つの「なくてはならぬもの」を挙げた。「私たちはこれら四つのものが分からない者だったが、御言葉を知り、イエス・キリストを救い主と信じるなら、この四つのものを知ることができる」と長谷川さん。「これらは三浦綾子が体験したことであり、私たちも体験することができる」と語りかけた。

 賛美とメッセージの後、共に分かち合い、祈る時をもった。その祈りの課題の一つが、タンさんのことだった。ベトナムにいるタンさんの父が数日前に亡くなったが、このコロナ禍のため帰国できず、葬儀に参列できなかったという。「心が痛かった。妹もアメリカにいて帰れない。ベトナムには母一人。本当に申し訳ないと思った」と無念さを表す。ただ、母がクリスチャンで「母から励まされた」とも言う。

 メンバーの中には、今のところコロナの影響で失職した人はいない。だが、「アルバイトを探すのが大変になった」「働く時間が減り、給料も通常の8割しかもらえなくなった」などの声も。「厳しい状況の中で、ベトナム語礼拝のメンバーとの交わりが心の支えになっている」との声も聞かれた。

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 8月23日には、大阪府八尾市の在日大韓基督教平野教会で行われているベトナム語礼拝に、長谷川さんと東京のベトナム語礼拝の5人が参加。平野教会には毎週15人ほどが集まっている。こちらのメンバーも「以前は週5回の出勤がコロナの影響で4回になった。そのため通常より6080%しか給料がもらえない」「日本語学校で2年間の勉強が終わり帰国の予定だったが、飛行機の予約ができないためいつ帰れるか分からない。留学ビザが切れ、しばらくアルバイトができずお金の問題にも直面したが、その後6か月の特定活動ビザが申請でき、何とか持ちこたえている」と、コロナの影響が出ていることを語った。

 コロナ禍でのベトナム語礼拝のことについては、9月29日午後にオンラインで開催される「JEA宣教フォーラム」の分科会、異文化ネットワークB「日本における外国語宣教と日本の教会のつながり」の中で紹介される。

ベトナム語礼拝参加者。8月はオンラインで行われた