[CSD]2011年2月27日号《ヘッドライン》

[CSD]2011年2月27日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎交際中から既婚者・再婚者までネットで探るカップルの絆と課題——関係診断「Couple Check-up」
★アフガニスタン:改宗者に死刑迫る——タリバン政権崩壊から9年 状況変わらず
★スリランカ洪水の被害拡大——ワールド・ビジョンが緊急人道支援を実施

 = 2 面 ニュース =
★2・11:「日本が神国だった頃の教育」から虚偽を警告——JECA関東三地区2・11集会で山口陽一氏
★2・11:卒業式控え連帯と励まし——予防訴訟原告ら「なお平和つくりに希望」
★国家主義に利用された賛美歌を検証——石丸 新氏講演
★大阪でも教員の処分増加——信教の自由を祈る祈祷集会で課題に
★事実を知らずにただ謝罪——岩崎孝志氏 教会の対韓戦後責任を問う
★<落ち穂>地域の生活ニードを知る

 = 3 面 教界ニュース =
★<竜馬をめぐる人々>[42]今井信郎の章:7——龍馬を斬った男の回心 記・守部喜雅
★ケープタウン2010報告[11]——各国からリバイバルの報告 一方で激しい迫害の現実
★<オピニオン>教会の野性を回復せよ 記・趙 南洙

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★川本可奈子さん[下]([株]エレガンス東京代表取締役社長)——目標決めたら必ずやり抜く
★<働く人の境界線>[17]プロアクティブになる——問題解決に乗り出す一歩は自分から 記・中村佐知

 = 5 面 牧会/神学/社会=
★「ケープタウン決意表明」全文を発表——「ホリスティック」な福音理解を理念から行動へ
★<精神障害と教会>[91]苦労の起き方——問題を解きほぐす  記・向谷地 生良

 = 6・7 面 教会教育特集=
◎若者の減少ではなく、若者の課題を課題に 森田喜之師に聞く
★「孤独」化する子どもに神の愛を——姫路アガペーチャペル「アビックス」
★新しい教会教育を目指して——聖書と学習科学からのアプローチ

 = 8 面 結婚特集 =
★パーティで出会いの場を[2]——二つ星で気兼ねなく選択の自由 ショーン尾谷さんの聞く
★BOOK:『愛という名の贈り物』ゲーリー・チャップマン著(いのちのことば社、2,310円税込)
★BOOK:『ほんのちょっとでも結婚が気になるあなたへ』石井希尚著(角川書店、1,365円税込)

 = 9 面 情報=
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★BOOK:『とことんつきあう関係力をもとに』岩尾貢、平山正実共著(聖学院大学出版会、630円税込)
★BOOK:『聖書とキリスト教倫理』ウィリアム・C・スポーン著(日本キリスト教団出版局、2,520円税込)
★BOOK:『わたしを求めて生きよ』小島誠志著(教文館、1,890円税込)
★REVIEW:『牧師の読み解く 般若心経』大和昌平著(YOBE,Inc.、1,575円税込)評・松岡広和

 = 10 面 関西だより =
★神に愛されたベストスイマー——がんに負けず毎日3キロ水泳 内藤征之さん
★被災者助けるクリスチャンに——RACネットがクラッシュ災害ボランティア訓練セミナー
★本紙韓国支局の働き紹介——北浜で関西地区活動報告
★賀川豊彦の足跡を追う——3月 記念館でシンポジウム

 = 11 面 クリスチャンライフ =
◎大政治家支えた信仰と賛美歌、ジョン・ニュートン——映画「アメイジング・グレイス」
★「政治をとらえ直すきっかけになってほしい」——マイケル・アップテッド監督に聞く
★<また行きたい! 教会の魅力>[7]キーワード「リーダー」?——「シンプル」だから人から人に伝えられる

 = 12 面 ひと=
★田中友樹子さん(ピアニスト)——一度やめたピアノをもう一度




◎交際中から既婚者・再婚者までネットで探るカップルの絆と課題−−関係診断「Couple Check-

 人間関係が希薄になったと言われる現代。それは家庭においても例外ではなく、離婚や別居など、深刻な問題を抱えている人は少なくない。そんな中、家庭の基礎となる夫婦関係を見直そうと、米ライフ・イノベーション社が作成した結婚カウンセリングプログラム「カップル・チェックアップ」の翻訳を、このほど臨床牧会研究会(渡辺俊彦代表)が完成。キリスト教界への普及を図っている。

 ライフ・イノベーション社は、米国で幅広い普及率を誇る結婚準備プログラム「プリペアー」、結婚1年以上の夫婦を対象としたプログラム「エンリッチ」で知られる。「カップル・チェックアップ」は両プログラムをベースに作成され、交際中から既婚者、再婚者まで、幅広いカップルの関係を客観的に診断するもの。インターネットで気軽に取り組めることから、教会を中心に、少しずつシェアが広がりつつある。
 診断は、まず臨床牧会研究会のホームページ(http://rinshobokukai.main.jp/couplecheckup.html )にアクセスし、クレジットカードもしくは銀行振り込みでバウチャー(前売り券。3千990円税込)を購入することで、受けられる。インターネットで質問に回答すると、ものの30秒でカップルの関係を分析した資料と、「話し合いのガイド」が送られてくる仕組みだ。質問項目は「鍵となる二人の関係の領域」(コミュニケーション、対立の解決、家庭の経営管理など)、「特別な領域」(交際における期待、交際の課題など)、「カップルとファミリー図」(カップルや家族の親密性と柔軟性)、「性格チェック」(社交性、適応性、几帳面さ、協調性、情緒の安定性)など、多領域から二人の絆と今後の課題を探る。
 代表の渡辺氏はこう語る。「人間の人格形成には家庭環境が影響を与えると言われます。その家庭環境を決定するのは夫婦関係です。このプログラムを通して、お互いの関係性を見つめ直し親密性の高いレベルで維持することが可能になります。そして、健全な家庭を築くための道具となるはずです。また、健全な家庭を築くことは、与えられる子どもに対する責任、社会に対する責任です。教会は、このような使命と責任を負っていると思います。何よりも、健全な家庭共同体の形成は、やがて教会共同体を形成することに結びつくはずです。どうも、福音が届きにくい原因のひとつはこの辺にありそうです。ますます、伝道困難と言う叫びが聞かれる昨今、健全な家庭を築くために教会の業として用いていただければ幸いです」
 臨床牧会研究会事務局=Tel.04・2926・3834(ホーリネス・下山口キリスト教会 西岡)rbmarriagecounseling@yahoo.co.jp

◎若者の減少ではなく、若者の課題を課題に 森田喜之師に聞く=1102270601

 現在、若者の数が教会から少なくなっています。そのことについて話すとき、多くは「このままでは教会の働きを継いでくれる人がいなくなる」といった趣旨になりがちです。ですが、若い世代がそれを聞いたとき、はたしてどのように感じるでしょうか。「自分たちは、教会が担っている働きを引き継ぐためだけの存在なのか」と思わないでしょうか。しかし、そう感じたとしても、若者は教会に対してある種の期待を寄せています。自分自身が直面している課題に聖書を通して向き合い、そして分かち合える仲間を求めているのです。しかし教会が若者を「働きを受け継ぐ存在」としてしか見ないなら、若者は友達すら教会に誘いにくくなってしまいます。私は、教会そのものが、若い世代が居場所を見つけられる工夫をしていく必要があると感じています。
 実はこういった教会の意識は、30年も前から変わっていません。当時、20代だった私の赴任先で、若い世代への伝道をテーマにした教区の集まりがあり、発題者の一人に挙げられました。その際、伝道委員長が開会にあたり、「これまで一生懸命重荷を担ってきたが、振り返れば継承者がいない。このままでは教会の働きはだめになってしまう」といった趣旨のことを話したのです。そのとき私は、「私たちは働きを継承するいわば『道具』に過ぎないのか」という違和感をもち、発題の内容をそのことに変えました。それがきっかけで、若い牧師や青年たちを対象に青年キャンプを開き、課題を共有したり励まし合ったりする場をもつようになりました。
 私の離任後もこのキャンプは続けられていましたが、そういった若者の居場所のような機会を、様々なところでもてればと願っています。例えば、昨年8月の平和聖日で、アジア各国で保健衛生の取り組みに携わっている「アジア保健研修所」から、アジアでの取り組みの経験を持つ若い人をお招きしました。その後、教会の青年の間で、具体的な課題を担う若い人との新たな出会いへ心が開かれています。お互いに自分の取り組みや課題をシェアすることを通して、刺激を受けたり自分を見つめ直したりすることにつながるようです。
 名古屋キリスト教協議会を通しても、多くの可能性があると思います。様々な取り組みと教会をつなげたり、超教派でも機会をつくりたいと思っています。
 現代の若い世代には、実体験が少ないと感じています。例えば、調べものがあればインターネットですぐに検索できる時代です。ですが、その情報が実際のところどうなのか、身体で感じる機会は少ない。情報は膨らんでも、それに伴う実体験が乏しいのです。そのことが、実際に問題に直面したとき、脆弱性として現れてしまいます。人間関係もメールでのやりとりで済み、言葉を交わしてぶつかって、ということが減っています。もう少し、実体験を伴うプログラムを教会が考えていくことができるのでは、と思います。
 当教会では、夏のCSのキャンプでは、夜、私が先導して懐中電灯を持たずに山の中を歩いたりと、子どもたちを大自然の中に放り込んでいます。星やホタルの光など、明かりの下では見えないものを見聞きして帰ってくると、電灯がまぶしくて目が痛くなります。日常生活の中で、人間がつくり出し、当たり前となっているものがあまりにも多いのです。
 また、教会を会場にゴスペル教室も開いています。参加者には若い人たちも多く、関わりをもつうち、ふと抱えている課題を話してくださったりすることもあります。大切な出会いの機会です。できれば、教会は様々な窓口をもつ必要があると感じています。
 (もりた・よしゆき=日基教団・名古屋中央教会牧師)

◎大政治家支えた信仰と賛美歌、ジョン・ニュートン−−映画「アメイジング・グレイス」=11022711

 時代は18世紀。大英帝国は産業革命、自由主義貿易による経済成長とアジア、アフリカ大陸へ支配を広げていた。産業、市場の拡大と植民地政策、フランス革命戦争…。いくつもの大波が押し寄せ、ダイナミックに歴史が動く時代のイギリスを舞台にした映画「アメイジング・グレイス」。

 タイトル名からもわかるように、世界中で愛され、今なお歌い継がれているジョン・ニュートン作詞の賛美歌「アメイジング・グレイス」と深く関わる内容だ。だが、この曲の誕生秘話を描いたものでも、ジョン・ニュートンを描いたものでも、黒人奴隷の悲劇を描いたドラマでもない。一人の若い政治家、ウィリアム・ウィルバーフォースが奴隷貿易廃止に至るまでどのような闘いを通ってきたかを描く。

 劇中、何度かジョン・ニュートンとウィルバーフォースのやりとりが出てくる。ウィルバーフォースは若き日にジョン・ニュートンの牧会する教会に導かれた。多大な影響を受け、ジョン・ニュートンはウィルバーフォースのメンターであった。生涯を神に捧げることを誓うウィルバーフォースに対して、政治の世界に留まるようアドバイスしたのはジョン・ニュートンであった。
 ウィルバーフォースが黒人奴隷貿易の廃止に成功するまでに、同じ思いに立つ先達としてジョン・ニュートンがいる。奴隷船の船乗りだった男が神様と出会い、その計り知れない神様の恵みを「アメイジング・グレイス」に表した。自然の中で神様の存在を感じ、神様をたたえる信仰篤いウィルバーフォースでも、黒人奴隷貿易廃止に至るまでに、議会で何度も挫折し、闘い続ける勇気を失う。しかし、そのたびにビジョンを分かち合い、アドバイスをくれる友人や妻、そしてジョン・ニュートンが励ましと希望を与える。
 帝国主義時代に黒人奴隷貿易を廃止させたことは、国内にある「闇」に光を当て、それが明るみにされる恐れや恥を超えて社会を変えた点で、戦争の勝利や産業革命よりも革命的だったといえるのではないか。

 だが、同時に「何かおかしい」と感じていたイギリス市民も少なからずおり、奴隷貿易廃止は時代の要請であったとも言えるだろう。
 歴史、人物、文化、音楽…。様々なことが想起され、想像力をかき立てられる映画であり歴史をも支配する神を感じさせる作品だ。