[CSD]2011年8月7日号《ヘッドライン》

[CSD]2011年8月7日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎ノルウェー銃乱射・爆弾テロ犯の実像——キリスト者原理主義者とは
★心のゴミを取り除くイエス様——ネパール・カトマンズでのエデンプロジェクト

 = 2 面 ニュース=
★サイバースペースが我が教区へ——ソーシャルネットワーク時代の宣教パラダイム
★教派超え 神の家族60年——日本盲人キリスト教伝道協議会
★東京地裁:生存者も合否取り消し認めず——韓国人遺族らの訴え棄却
★日本福音連盟:被災地に「新聖歌」を支援——新理事長に郷家一二三氏
★<落ち穂>東北の村に起こっている国際交流

 = 3 面 =
★<竜馬をめぐる人々>[54]坂本直寛の章:13——女性に宛てた獄中書簡 記・守部喜雅
◎<逝去>ジョン・ストット氏(英国・神学者、90歳)——ローザンヌ誓約で20世紀福音主義に貢献
★<オピニオン>非常時の牧師の疲弊に対応する 記・藤掛 明

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★橘 陽司さん[上]([株]文悠 代表取締役社長)——神楽坂ならではの書店を
★<『もしドラ』教会編>[9]イノベーション?—— 記・千葉雄志

 = 5 面 情報 =
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★DVD:「聖書を読んだサムライたち ?」守部喜雅(ライフ・クリエーション、3,990円税込)
★CD:「Song for Jesus」山本香織(Heavenly Praise Ministry、1,000円税込)http://web.me.com/sunshine_gospel/
★お知らせ:「東北応援団文化祭出演者募集」9月19日(月・祝)13時~19時@神の家族主イエス・キリスト教会http://www.love-east.com/
★REVIEW:『使徒行伝講解説教』渡辺信夫著(教文館、2,625円税込)評・結城晋次

 = 6 面 被災地その後 =
★仮設住宅へ置き薬——JIFHが2年間無料提供
★いわき希望教会ウェブに震災から50日間の記録——5月に「造り変えられ出発式」
★路傍伝道が出会いのカップル結婚へ——世界からの救援隊も祝福

 = 7 面 クリスチャンライフ =
★全世界から救援のハーモニー——帰国者クリスチャン・サマーコンサート2011
★教会の入り口になりたい——ドイツから参加した四本喜一さん(トランペット奏者)
◎Movie:「カウントダウンZERO」——<核>管理のリアルな恐怖と廃絶への提言

 = 8 面 被災地の教会は今 =
★いわきアッセンブリー教会から3つの小学校へ絵本などを贈呈——小学校から感謝の手紙
★仮設住宅で喜んで受け取られる聖書——避難所の人たちとのふれあい

 = 別刷?—? 世界宣教・国際協力ガイド =
★環境改善で 福音に心開く——ゴミの町をエデンの園に
★国別 派遣宣教師・国際協力スタッフ一覧
★宣教師・国際協力スタッフ派遣団体一覧

◎ノルウェー銃乱射・爆弾テロ犯の実像−−“キリスト教原理主義者”とは=1108070101

 7月22日、ノルウェーの首都オスロの官庁街で起きた爆弾テロと、南部ウトヤ島で起きた銃乱射連続テロは、死者76人に上る大惨事となった。犯人のアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)が「キリスト教原理主義者」と報じられたことから戸惑いが広がっている。ノルウェーで「キリスト教原理主義」と称されるものはいったい何か―。
 日本語の「原理主義」は英語では「ファンダメンタリズム」。もともとキリスト教の自由主義神学に対して、聖書の無誤性、キリストの処女降誕や代償的贖罪、復活、再臨などを字義通り信じる保守的福音主義を表し、神学用語では「根本主義」と訳される。それがイスラムに転用され、欧米を敵視しイスラム法に基づいて改宗者に厳罰を科したり、聖戦として自爆テロを行ったりする過激な勢力を「原理主義者(ファンダメンタリスト)」と呼ぶようになった。本来のキリスト教根本主義に暴力的な思想はない。
 「ノルウェーのクリスチャンファンダメンタリストは、聖書を文字通り信じようとする平和的な人々です」と、元日本宣教師でノルウェー福音ルーテル教会牧師のヘルゲ・ホレルド氏は解説する。ブレイビク容疑者は自らを?ファンダメンタリストクリスチャン?と名乗るが、教会でもキリスト教組織でも活動したことはないという。
 ブレイビク容疑者はイスラム教徒への反感と憎悪を露わにする。イスラム教徒がヨーロッパを席巻することを恐れ、中世ヨーロッパの十字軍を遂行しているかのように見受けられる。ヨーロッパには移民イスラム教徒の台頭を恐れる政治的保守のクリスチャンもいるが、そのメッセージをこのような暴力行為を通して果たしはしない、とホレルド氏は指摘する。
 とはいえ極右思想の団体が近年ヨーロッパで増えつつあり、「古きキリスト教の価値を守れ」と主張していることも事実。ブレイビク容疑者はそうした流れに関わっていたと見られる。だが「それは政治的に動機付けられた動きであり、キリスト教の精神性とは何の関係もありません」。犯人が?ファンダメンタリストクリスチャン?と名乗っても彼の立場と同一視するいかなる教会もキリスト教団体もない、とホレルド氏は言う。
 事件以来ノルウェー国民は苦悩の中にある。24日の日曜日にはオスロ大聖堂と周辺に約10万人が訪れ、花を手向けて犠牲者を追悼した。同教会のオーレ・クリスチャン・ファルメ監督は特別礼拝で、「姉妹、兄弟、家族を失ったすべての皆さんに慰めと希望を与えることのできる神を求めましょう」と呼びかけた。
 ホレルド氏は語る。「全ノルウェーのクリスチャンが深い悲しみに暮れ、キリスト教指導者たちは愛と祈りをもってこの事態に立ち向かうよう呼びかけています。この殺害行為はノルウェーの人々に新たな一致、さらなる自由と民主主義をもたらし、おそらくキリストの福音にも道を開くことになるでしょう」

◎<逝去>ジョン・ストット氏(英国・神学者、90歳)−−ローザンヌ誓約で20世紀福音主義に貢献=11

 ローザンヌ運動や多くの著作を通して20世紀後半、世界のキリスト教会とその宣教に多大な影響を与えた英国の神学者ジョン・ストット博士が、7月27日、90年の地上の生涯を閉じた。特に盟友であった伝道者ビリー・グラハム博士と共に尽力したローザンヌ世界宣教会議(74年)で起草委員長を務めた「ローザンヌ誓約」は、世界と人間の霊肉全ての問題を包括的に福音の光の下で捉えるホリスティックな福音理解を示し、その後の世界の福音派教会のあり方や宣教の理解に変化をもたらした。それは福音派が今日、主流派教会やカトリック、正教会とも対話が可能なまでに開かれた基とも言えよう。
 1921年、ロンドンで貴族の医師の家庭に生まれた。母はルター派の教会に通っていたが父は不可知論者だった。39年ラグビー校在学中にエリック・ナッシュの福音的な説教に感化され、ナッシュの指導を受けた。ケンブリッジ大学トリニティ校でフランス語と神学を学び学生のクリスチャン団体で活動。その後、牧師を志してケンブリッジ内のリドレー・ホール神学大学に転科。英国国教会の司祭となり、オール・ソールズ教会副牧師、教区司祭、女王付牧師などを歴任。また英国のキリスト者学生会(インターバーシティ・クリスチャン・フェローシップ)を指導した。第1回ローザンヌ世界宣教会議が開かれた74年には、第1回日本伝道会議の主講師として来日もしている。オール・ソールズ教会名誉牧師。
 ローザンヌ運動のダグ・バーザル総裁は、おそらくストット氏の最も偉大な貢献は、常に新約聖書に根ざした聖書信仰として福音主義信仰を堅持し明瞭に主張したことだろう、との談話を発表した。「福音主義はストットにとって歴史的、伝統的キリスト教であった。キリストの十字架がメッセージの中核であり、十字架をそれによって人間が正しいあり方を可能にする唯一のものとして説教した」として、バーザル氏は次のようにストット氏の信仰を評している。
     ◇
 キリストの復活は、全ての人類にとってと同様に彼の人生の偉大な希望だった。死後にもある生命の希望は偉大なリアリティーであり、彼は今それを報酬として、また彼が説教してきた全てのことの正当性の証明として経験している。そのために彼は全生涯を費やし世界中で奉仕してきたのだ。
 ジョン・ストットは20世紀、神の言葉と聖書的説教および教えの中心性に対する信頼を回復したことにおいて、彼に優る者はいなかっただろう。聖書の真理の堅固で明確な告白を確立するために世界中の多くの福音派を鼓舞した。また同時に、それが他にはない信心深いクリスチャン生活を裏打ちするものでなければならないと教えた。
 彼は聖書解釈上の緊張関係にある、伝道への情熱と、苦難や破壊の中に置かれた人々の必要に対する大切な奉仕への献身とを併せ持つことができた。このことは、彼が起草委員長を務め20世紀の福音派を定義する文書と見られているローザンヌ誓約の中に最もよく表されている。ジョン・ストットは教えるところどこでも、神の霊の声と壊れた世界の必要の両方に聴くことを勧めた。学生たちを愛し、アフリカ、ラテンアメリカ、アジア、南太平洋、中東の牧師や学生たちをたえず助け励ましたことで知られる。またバードウオッチングの趣味でも知られた。
 英国と世界の教会は彼のゆえに豊かにされた。質素なライフスタイル、精緻な思想と表現を伴う力強い説教、そのような深さと明晰さから生まれた著書は、世界の多くの人々を感動させてきた。
     ◇
 バーザル氏が数週間前ストット氏に会った際、昨年10月の第3回ローザンヌ世界宣教会議で採択された「ケープタウン・コミットメント」を読み上げると、「キリストはまさしく意のままにそのチームと共に起草を成し遂げさせてくださった。この新たなローザンヌ文書によって一致の度合いが進む」と喜んだという。
     ◇
 日本語では『現代の福音的信仰|ローザンヌ誓約』『今日における聖霊の働き』『まことの神、まことの人』『いま求められる牧師と信徒のあり方』『今日における聖書の語りかけ』『空の鳥を見よ』(いのちのことば社)『これがキリスト教です』『地には平和』『和解の務め』『地の塩世の光』(すぐ書房)などの著書が翻訳されている。いのちのことば社から刊行中のティンデル聖書注解では『ヨハネの手紙』を執筆している。

◎Movie:「カウントダウンZERO」−−<核>管理のリアルな恐怖と廃絶への提言=11080707




© 2010 NUCLEAR DISARMAMENT DOCUMENTARY, LLC.


 日本での8月6日と9日は、特別な日だ。1945年のその日、広島と長崎それぞれに投下された一発の原子爆弾で、都市は荒れ野に変貌し、放射線物質を浴びた人々を病死させ、恐怖の人生に陥れた。
 その後の核兵器開発は威力を増大させ、今は25g(グレープフルーツぐらいの大きさ)のウランでニューヨーク市を破壊し放射線の死の灰で覆うことが可能だ。ドキュメンタリー「カウントダウンZERO」は、その威力と破壊力をつぶさに見せてくれる。
 <核>爆弾・兵器への恐怖は、その威力だけに留まらない。冷戦時代からの<核>のずさんな管理と誤発射を奇跡的に免れてきた核バランスの中での日常。そして現在も変わらない<核>流出への危険性。この作品はこれまでの事故、危機管理への妄信と誤算、拡散された<核>を狙うテロ集団の狂気を関係者らのインタビューと歴史的に事実を丹念に積み重ねながら明らかにしていく。


© 2010 NUCLEAR DISARMAMENT DOCUMENTARY, LLC.

 ルーシー・ウォーカー監督のインタビューに応じて出演している元国家元首や政府関係者らの名前に驚かされる。ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領、ジミー・カーター元米国大統領はじめパキスタンに核実験の成功に感動したというパルヴェーズ・ムシャラフ元大統領、南アフリカの核兵器を全廃させたフレデリック・ウィレム・デクラーク元大統領、英国のトニー・ブレア元首相ほか、<核>をテロ集団に密売しようとしたオレグ・キンサゴフまで接触している。そのリアルな現状と証言に、<核>の恐怖を実感させられ、<核>ゼロ実現への一人ひとりの意思表示の重要さが、具体的な提言として伝わってくる。
 冒頭シーンでオバマ米国大統領とロシアのメドベージェフ大統領がプラハでの「新核軍縮条約」調印式の映像を単なるセレモニーに終わらせないためにも。   【遠山清一】

脚本・監督:ルーシー・ウォーカー。2010年/アメリカ/89分/ 配給:パラマウント・ピクチャーズ・ジャパン。9月1日(木)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国順次公開。 公式サイト http://www.to-zero.jp/