[CSD]2012年12月9日号《ヘッドライン》

[CSD]2012年12月9日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎震災で迫られた隣人への「愛」——日本同盟基督教団宣教121周年大会
★普天間基地前 ゴスペルで意思表示——キリスト者はオスプレイ配備と暴力に抗議します

 = 2 面 ニュース=
◎広島・東京 フランクリン・グラハム大会 苦渋の選択——米大統領候補ロムニー候補応援で開催困難に
★CCCシンポ:災害とこころのケア——被災地に求められる適切な支援
★長老教会:東北宣教に木村大介氏を派遣——ウエストミンスター信仰告白23章・31章の現代における意義の見解を採択
★エジプト:コプト教会の新教皇にタワドロス2世 着座

 = 3 面 =
★<いのちへのまなざし>[38]散らす人生 記・柏木哲夫
★JEAフォーラム仙台 発題から<要約>——支援が手薄な原発避難者
★<オピニオン>災害対策から見直す地域と教会 記・品川謙一
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4・5 面 教会教育特集=
★同世代のつながり後押し——JECA・朝顔教会ジュニアクラス
★教会離れ「がっかり」が最大の敵 記・淤見康子(CSK担当主事)
★教案誌ガイド——

 = 6 面 仕事と信仰 =
★クレイグ・カックスさん([株]エフエム・パートナーズ・ジャパン代表取締役社長)——宣教師からビジネスマンに転身
★<首都圏大震災に備える>[6]高層難民で取り残されても生き延びる用意を 記・栗原一芳

 = 7 面 伝道・牧会を考える =
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>[34]単立ペンテコステ・ブンキョーゴスペルセンター?——宣教師は何でもやらせてくれた
★<神の宣教>神のことばを神の世界へ[11]—— クリストファー・ライト講演抄録

 = 8 面 インサイドニュース =
◎国と国の垣根に美しい花を——韓国孤児の母 田内千鶴子生誕100周年

= ?-? 別刷 特集・日本キングス・ガーデン連合 =
★砂漠を主の園のようにする――日本キングス・ガーデン連合 会長 泉田昭
★第1回 介護甲子園で練馬キングス・ガーデンが最優秀賞
★日本キングス・ガーデン連合加盟・友好関係施設一覧




◎震災で迫られた隣人への「愛」−−日本同盟基督教団宣教121周年大会=1212090101

 1891年11月22日、北米スカンヂナビアン・アライアンス・ミッションの最初の宣教師15人が横浜港に上陸した。その多くは20代の彼らを極東の地へ駆り立てたのは、創設者フレデリック・フランソンの「今こそ日本に宣教師を送るチャンス。今なら1人の宣教師でなし得ることが10年後には10人の宣教師がやっても不可能になる」という切迫した時代認識に基づくチャレンジだった。このスピリットの実として形成された日本同盟基督教団の宣教121周年記念大会が、11月22~24日、東京・中野の「なかのZERO」で開催された。
 テーマは「愛」。昨年120周年記念大会を開く予定だったが、東日本大震災により1年延期。同教団では震災直後から緊急物資支援やボランティア派遣、避難者の受け入れなどに取り組んだ。活動は長期化を促され、現在も続いている。記念大会では、95教会から89チーム延べ約560人がボランティアに参加した被災地支援の経験を分かち合い、これからの宣教を考えた。
 同教団の安藤能成理事長は、大会プログラムの挨拶で、最初の宣教師来日当時、前々年に大日本帝国憲法が、前年には教育勅語が発布された厳しい時代だったことに言及。
困難な状況でも聖書信仰に基づき使命に燃えた人々は救霊に励み、生み出された信徒たちも命がけで信仰を守り継承したことに触れ、「その純粋な信仰とビジョンを私たちは受け継いでいます。東日本大震災を経験した日本の教会の一員として、記念大会を契機に新しい宣教に取り組んでゆきたい」と呼びかけた。
 同教団では現在、「全県に同盟の教会を」「点から線へ、線から面へ」を掲げ1億2千万救霊を目指す国内宣教、「2034年までにアジア全域に宣教師派遣」を目指す国外宣教、「10年後に青少年を3千人に」「中高生が楽しくやりがいのある教会に」を目指す青少年宣教を三本柱に据える。
 記念大会では、全体集会講師にキリスト者学生会(KGK)の大嶋重徳主事を招き「若者と生きる教会|失敗に付き合う大人達」をテーマに講演、教団内のKGK主事やhi-b.a.(高校生聖書伝道協会)スタッフが証しするなど、「青年のあふれる教団をつくろう」「世界を変える青年を」との意気込みがうかがえた。
 最終日、マタイ24・3~14から講演した安藤理事長は、「不法がはびこるので、多くの人々の愛は冷たくなります」という主イエスのみことば通りの今の時代に、教会はどう進むべきかを話した。「日本とアジアと世界に仕える」というスローガンと「みことばと御力による宣教」という合い言葉のもとに宣教と教会形成を進めていく姿勢は変わらないとしつつ、「震災発生以来、今まで深く取り組んでこなかった被造物世界について、聖書信仰に立つ者としての検証と認識を明確にすることが求められている」と指摘。3・11の経験が隣人に対する取り組みを迫ってきたとして、「私たちはこの課題に前向きに取り組んでいきたい。これからの日本宣教を考えるとき、この課題を避けて通ることはできない」と述べ、今まで教会過疎地であった三陸沿岸地域に、地元の人々と友人になりつつある関係の中で福音宣教の目を向ける必要を訴えた。

◎広島・東京 フランクリン・グラハム大会 苦渋の選択−−米大統領候補ロムニー候補応援で開催困難に=1

 ビリー・グラハム伝道協会(BGEA)総裁の伝道者フランクリン・グラハム氏を招いて伝道大会を計画していた広島と東京の関係者は、相次ぎ大会の中止を決定した。フランクリン・グラハム氏と父ビリー・グラハム氏が米国大統領選挙に際し、モルモン教徒である共和党ロムニー候補への支援に事実上関与したと見られる行動が原因。
 広島で2014年5月に開催予定だった西日本フランクリン・グラハム国際大会「平和と希望のフェスティバル」実行委員会(拝高真紀夫実行委員長)は11月19日、BGEAアジア地区ディレクターのチャド・ハモンド氏と会合。同大会を中止することで合意し、解散した。同委員会総務会(リーダー会)が大統領選投票日前の11月5日に出した開催中止の決定と根拠を、実行委員会で受諾し正式に決定したもの。
 同実行委員会は、BGEAと互いの祝福と宣教の前進を祈り合う中で行われた。BGEAの日本宣教に対する貢献、東日本大震災支援を評価しつつも、大統領選に関連してのグラハム父子の行動により、諸教会と連携を築きつつ「教会に始まり、教会に終わる」を基本理念とする大会の開催は不可能と判断した。大会を強行すれば、被爆地?ヒロシマ?での開催という特殊性も相まって、教会内および教会間に大きな亀裂を生むことを懸念。一般の人々からも大きな偏見と誤解を被る可能性が高いと見ている。
 中止の理由として概要次の2点を挙げている。
 ?グラハム氏父子が大統領選終盤にモルモン教幹部のロムニー候補と会って支援する発言をし、ウェブ上などで「聖書の価値観(Biblical Values)に投票しよう」キャンペーンを行い、事実上ロムニー候補の選挙応援に関わったと見られたこと。選挙期間中、ロムニー候補と会った直後にBGEAホームページ上からモルモン教を異端とする文書を削除したこと。
 ?BGEAがキリスト教とモルモン教との教理の違いを軽視したと見られてしまう行動を取ったこと。BGEAは、キリスト教とモルモン教が根本教理において明確な違いがあるにも関わらず、前述のような行動の結果、同団体がその教理的違いを過小評価していると見られる原因を作った。
 なお、同大会実行委員会は、BGEAが現在もモルモン教を異端(cult)とする見解を変えていないことを確認したが、同団体の異端に対する立場ではなく、行ったことの結果的な影響を問題としている。
 さらに、被爆地?ヒロシマ?にある諸教会は、様々な政治的立場を越えて「平和」を希求してきたこと、また日本にある諸教会は、日本社会一般では区別されにくいキリスト教異端との教理的違いを明確にして宣教活動を行ってきたことに言及。この度のBGEAの行動が、米国の文化的環境の中で最善と信じてなされたことには理解を示しつつも、同時に、BGEAが特定の政治的立場に事実上関与し、異端であるモルモン教との教理的違いを軽視するかのような行動をとったことにより、協力体制を築くことは困難と判断した。
 この件に関し、BGEAのフランクリン・グラハム総裁およびチャド・ハモンド・アジア地区ディレクターは、今回の選挙におけるBGEAの行動により、広島の諸教会に否定的な影響を与えたこと、国際的な伝道団体であるにも関わらず自国内の事情だけで行動し、地域の諸教会の宣教協力の環境を著しく壊してしまったことに対して謝罪を表明した。
 広島の牧師たちはこの地への宣教の思いをさらに熱くしている、と拝高氏はいう。
 2013年10月に東京で開催予定だった「ミッションnow」プロジェクトリーダー会(石田敏則マネージャー)は11月27日、同大会の中止に関する声明を発表した。「BGEA側に『モルモン教を容認し、異端リストから削除した』と思わせる事実があったこと、フランクリン・グラハム師が『モルモン教徒に投票できる』とサイト上で発言した事実、またグラハム師父子がロムニー候補への投票を誘導するような言動が見られたこと等は、日本のキリスト教界にとって受け入れがたい由々しい事柄であった」として、大会を開催することはきわめて困難になったとの判断を示した。「もし、今のまま開催に向けて進むならば、教会の内外に取り返しのつかない亀裂が生じると懸念されるから」との理由も挙げ、「BGEAの日本伝道への熱意、今回の事態に関する真摯な謝罪を十分に理解しつつも、この現実を重く受け止め、(大会)開催を中止せざるを得ない」と判断したことを報告している。
 なお、「ミッションnow大会」は中止になったが、ミッションnowに与えられた超教派による首都圏宣教の思いを大切にし、何らかの形で働きが継続されることを希望している旨も述べている。

福島、福岡
札幌で開催
 このほか、福島で2013年6月、福岡で14年3月に、フランクリン氏の息子の伝道者ウィル・グラハム氏を迎えて、札幌では14年5月にフランクリン・グラハム氏を迎えて、それぞれ伝道大会が計画されている。

◎国と国の垣根に美しい花を−−韓国孤児の母 田内千鶴子生誕100周年=1212090801

 韓国ソウル市と木浦市で10月に開かれた「田内千鶴子生誕100周年記念 国連『World Orphans Day(世界孤児の日)』制定推進大会」(同事業会主催)。ソウル市のソウル女性プラザ(29日)では開会式、基調講演、国際学術シンポジウム、クリスチャンを中心としたシンポジウム「宗教と社会貢献」、「愛の黙示録と文化交流の夜」が開かれ、木浦市(30、31日)では、木浦市民文化体育センターで国連「World Orphans Day」制定推進宣言大会のほかに、日韓文化交流を兼ねた記念式前夜祭「愛と平和の祭典」などが開かれた。また日本からの訪韓団一行は、田内千鶴子(韓国名・尹鶴子)が孤児3千人を育てた木浦共生園や関連施設「木浦障害者療養院」「共生再活園」を訪問した。


 田内千鶴子は
 道しるべ

 開会式の挨拶では、皆それぞれが韓国孤児の母・田内千鶴子への思いを語った。
 相馬弘尚在大韓民国日本国大使館経済公使は、「日韓関係が非常に厳しい時代にあってご苦労が絶えなかった田内千鶴子さんは、両国民の誰もが一同に高く評価する方。私のように日韓関係に携わる者にとっての道しるべです」と述べた。
 大会の辞で朴鍾淳氏(崇實大学校理事長、田内千鶴子生誕100周年記念事業会韓国側会長)は「福祉とは共に生き、共に分かち合い人が人らしく生きられる社会をつくるということ。まだ福祉という名がなかった時代、木浦共生園園長の尹致浩伝道師と尹鶴子女史はこの福祉を始められた。私たちはこの温かい心を受け継ぎ、福祉国家の礎を築いていかなければなりません」、阿部志郎氏(同日本側会長、神奈川県保健福祉大学名誉学長)は「韓国に対し、日本は武力で侵略し、創始改名をはじめ日本の文化を押しつける恥ずべき罪を犯した。だが、田内千鶴子は韓国の子どもの幸せのために献身し、罪を贖う働きをした。愛された子どもは必ず愛する人に成長する。その文化を皆で発信していこうではありませんか」と語りかけた。
 千鶴子の長男で国連「World Orphans Day」制定を推進する田内基氏(韓国名・尹基、社会福祉法人こころの家族理事長)は「両親の足跡はそれほど特別なものではない。家がなく、両親がおらず、寝るところもままならなかった子どもらを寝かせ、食べさせ、育て、学校に生かせ、社会に送り出しただけ。ただ、その数があまりに多かったので苦労した。『共に生きる(共生)』道を歩んだ両親を私は尊敬しています」と語った。

 汗と血を融合
 する友愛の涙
 
 基調講演で李御寧氏(韓国初代文化部長官)は、「友愛を基とした生命資本主義」を提唱。「韓国が世界で注目されるようになったのは、どの国よりも汗を流して産業化発展に尽くし、血を流して民主化を遂げたから。しかし、あまりに短い期間で成し遂げたので、汗と血が葛藤してきた。この経済原理と政治原理の矛盾を克服するのが汗と血を融合してあふれ流れてくる友愛の涙。尹鶴子女史は、まさに韓国で友愛の涙を流してきた」と語った。
 国際学術シンポジウムでは、潮谷義子氏(日本社会事業大学理事長、前熊本県知事)が「家庭ある孤児」、朴庚氏(梨花女史大学教授、韓国初代人権大使)が「北朝鮮の孤児問題と人権の視角」、ジハン・ペレラ氏(スリランカ国民平和委員会専務理事)が「スリランカの孤児たちの状況」と題して発題した。
 潮谷氏は「日本も韓国も、家庭という容れ物はあるが、家族機能は衰退している。日本の場合、養護施設、乳児施設の入所理由に棄児がある。しかも、経済発展を遂げている都市で赤ちゃんが棄てられるということが起きている。家庭ある孤児は繁栄の中にあることを、受け止める必要がある」と語った。
 26回以上北朝鮮に出張訪問したという朴氏は、「国家や家庭が北朝鮮の子どもを孤児にさせてしまったという事実を直視しなければならない」と強調。「91年の旧ソ連崩壊以降、時期はずれのひょう被害、2度にわたる洪水などによる悲惨な状況は、北朝鮮の疲弊を加速させた。私たちは北朝鮮体制下で飢餓に苦しむ数百万人が生んだ孤児、北朝鮮を脱出し中国と東南アジアをさまよう数十万の幼い孤児、韓国に来ても定着できない数千人の孤児を見守らなければならない」
 国連児童権利委員会は03年と09年、北朝鮮に孤児院制度をより強化するよう勧告したと朴氏。「尹鶴子女史の精神を受け継いで孤児の生存権のため私たちすべてが献身する覚悟を確認すべきだ」と強調した。
 ペレラ氏は「スリランカは09年まで30年間、内戦に巻き込まれ、10万人を超える犠牲者が出、100万人を超える人々が脱出。タミール族の武装蜂起を主導した武装組織LTTEは強制的に子どもたちを兵士として徴用。子どもを徴集から守るため宗教団体や他の施設に送る家庭を生み出した。現在、スリランカの孤児院には、孤児でない子どもたちがたくさんいる」と現状を報告。「国連『世界孤児の日』制定により、スリランカも福祉がもっと向上しなければならない」と語った。
 3氏の発題を受け阿部氏は「人と人の間に愛が生まれると隣人になる。その隣人によって村と村との境を越えることができる。国家間には垣根がある。垣根は壊す必要はない。この垣根に美しい花を咲かすことで良い垣根に変わっていく。田内千鶴子の精神を受け継ぎ、この美しい花を世界中に広げていく。これがこの会合の目的です」と締めくくった。
 そのほか木浦市では、丁鍾得木浦市長主催の歓迎晩餐会で、田内千鶴子の故郷・高知のよさこい踊りと韓国伝統舞踊が披露され、「愛と平和の祭典」では韓日合唱団により「故郷」「アリラン」が歌われるなど、日韓親善を意識した国際文化交流プログラムが行われた。