[CSD]2013年12月1日号《ヘッドライン》

[CSD]2013年12月1日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎ローザンヌ連続シンポ 国家を超え市民社会を形成——「損なわれた世界で平和を築き上げる」
★オペレッタで贈る 聖書と平和——ワーグナー&ヴェルディ 生誕200年を記念

 = 2 面 ニュース=
◎特定秘密保護法案は現代の治安維持法に——日本基督教団大阪教区 平和と自由祈る
★信仰の良心の闘いに勇気を——いのち吹き込む教育取り戻そう
★福音功労賞に国吉守氏、三谷康人氏——沖縄から、ビジネスマン伝道
★<逝去>田中民市氏(ハンセン病国賠訴訟原告代表、95歳)
★<落ち穂>NHK大河ドラマ「軍師 官兵衛」に期待

 = 3 面 =
★<フクシマの声を聴く>[28]母たちからの声——原発も沖縄も考えてなかった 記・中尾祐子
★WCC総会報告:核のない世界に向けて[2]——福島発で届いた「原子力NO!」 記・行本尚史
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4・5 面 全面広告 =
★いのちのことば社の電子出版
★クリスチャン新聞電子化

 = 6・ 7面 全面広告 =
★JTJ宣教神学校

 = 8・9 面 シリーズ・対談=
★田島幸児さん(田島建設代表取締役社長)vs.中野雄一郎(伝道者)
 人を喜ばせることが自分の賜物——顧客の心をつかめば仕事はもらえる

 = 10 面 仕事と信仰 =
★伊茂治裕哉さん([株]SSI代表取締役)[上]——化粧で神が創られた顔に
★<サーバントリーダーシップ>[6]米空軍がサーバントリーダーシップを標榜 記・真田茂人

 = 11 面 伝道・牧会を考える=
★<見上げる空>[5]キリストがいる暮らし——教会を建てないのですか 記・米内宏明
★<迫られる宣教と教会の再構築>[7]これからの日本宣教 この世においてキリストの体であること 記・石田 学

 = 12 面 ひと・証し=
◎Without You(法務大臣賞を受賞した関西のゴスペルグループ)——「やり直しできる」と少年らを応援


◎ローザンヌ連続シンポ 国家を超え市民社会を形成−−「損なわれた世界で平和を築き上げる」=13120

 日本ローザンヌ委員会(金本悟委員長)が、3年計画で進める「包括的な日本宣教を考える」連続シンポジウムの第2回を開催した。今年5月の第1回「他の信仰を持つ人々の中でキリストの愛に生きる」に続き、今回のテーマは「分断され、損なわれた世界にあって、キリストの平和を築き上げる」。これは第3回ローザンヌ世界宣教会議の『ケープタウン決意表明』が「私たちが仕える世のために|行動への呼びかけ」として挙げた、世界の教会が直面する6つの宣教課題の1つ。3人のパネリストの発題から、キリスト教会がこの世にあって果たすべき役割を、子どもの人権問題、難民支援の問題を通して考えた。

 第2回シンポジウムは11月9日、東京・千代田区の中央大学駿河台記念館で行われ、教職・信徒約40人が参加。シンポジウム冒頭、委員長の金本氏は「分断された世界は2千年前のイエス様の時代にもあった。時代は変わっても、イエス様が救い主であるという事実は変わらない。イエス様の日々の歩みとともに宣教が広がっていったことを思いつつ、今日のシンポジウムを進めていきたい」と挨拶。
 米内宏明氏(同委員)の司会により、東京基督教大学大学院教授の稲垣久和氏が公共哲学の立場から公共領域におけるキリスト教会の役割と可能性について、元都立高校教員で浜松ウェスレアン教会牧師の木村葉子氏が「子どもの必要は、温かい人間関係と真実を学ぶこと|現政権の『教育改革』による危機」と題して、また、元JICA(独立行政法人国際協力機構)職員で開発コンサルタントの松浦由佳子氏が「難民・移民にむきあう」と題して発題した。
 稲垣氏は、ローザンヌ誓約(1974年)の「宣教は伝道と社会的責任からなる」という内容は日本の福音派陣営にどの程度受け止められたのかと問いつつ、それを支える「神の贖罪愛と恩恵」に言及し、「信じれば天国に行ける」というだけでは「信じるだけで極楽浄土に行ける」という日本人に根付いた鎌倉仏教の霊性を超えられない。「伝道と社会的責任」の宣教概念は賀川豊彦以来の伝統がある。賀川は贖罪愛を説いた上で社会運動にコミットした。十字架の「恩恵」は救済の恩恵とは別に「共通恩恵」という形でキリスト者以外にも及ぶもの。そこが他者との対話の糸口となる。例を上げれば、国家を持たない難民の人権はだれが保障するのか、国から見放されたようなフクシマの被災者を支えるのは誰なのか。それは国家国境を越える市民的公共性の領域であり、そこにこそ地域教会が果たすべき役割があり、そのとき日本のキリスト教は仏教の霊性をしのぐ内容を提示できる、と語った。
 木村氏は、都立高校での34年間の教員生活の経験を交えて、現安倍政権が進める「教育改革」は、「破壊的教育改革」と名付けられた東京都や大阪府で行われている教育行政の全国拡大であるとし、2010年に国連子どもの権利委員会から日本政府に出された勧告をも踏まえ、現在の子どもたちが置かれている深刻な状況を指摘。その上で、子どもの権利、尊厳を尊重しつつその発達段階に応じた精神的な成長を促す役割を我々は負っていること、教会は子どもの意見を尊重し、現在の教育改革に関心をもって様々な場を通して聖書の持つ価値観を発信していくべきこと、人権・平和の個々の問題で目的を同じくするノンクリスチャンとも協力協同の歩みをすべきこと、を提言した。
 松浦氏は、まず世界と日本の難民の状況を概観。昨年末時点で世界には4千520万人の難民がおり、一国で160万人を受け入れている国がある中、日本では昨年度の難民認定者18人、人道的配慮による在留特別許可付与者112人、1978年からの保護者累計でも1万4千86人にとどまっていることなど、日本の難民受け入れの実態を説明し、彼らの置かれている状況とその必要を指摘。そして、行政による難民支援が貧弱な一方、私たち自身は、難民を隣人として自分たちの地域に受け入れる心構えができているか。「難民」という立場ゆえに社会の片隅に追いやられている人々の声にどうやって耳を傾けるか。「不認定者」「不法滞在者」と呼ばれ、国の制度による保護からもれてしまう多くの人にどう向き合うのか。そこにこそ教会がかかわる領域があるのではないかと問いかけた。
 発題を受け、参加者らは小グループで討論の後、質疑応答。「問題に取り組むには、教会外の団体との連携も有効」「問題をあくまでも教会内部の問題として捉える視点が不可欠」「教会は国家、国境を越えていく市民社会の形成に寄与できる」などの発言があった。
 次回は来年6月7日、テーマは「キリストの教会を謙遜と誠実と質素に呼び戻す」。

◎特定秘密保護法案は現代の治安維持法に−−日本基督教団大阪教区 平和と自由祈る=1312010201

 「特定秘密保護法案」反対集会・祈祷する会(日本基督教団大阪教区「教会と天皇制」を考える特別委員会・大阪教区社会委員会共催)が、11月12日に大阪市玉造の大阪クリスチャンセンターで開かれた。講師は前衆議院議員の服部良一さん。
 服部さんは大阪市西成区在住。地域運動、労働運動や沖縄問題などに取り組んできた。2009年に衆議院近畿比例で当選して12年まで務めた。13年には東アジア青年交流プロジェクト発足。
 服部さんは「これは平成の治安維持法になるのではないか」と、危機感を抱く。この日は大阪弁護士会が大阪市役所までデモを行って、法案反対の表明と啓発をした。マスコミ界にも同様に不安が広がっている。
 「安倍政権は国会会期末の12月6日までに法律を通したい意向。この法律は憲法違反。基本的人権の侵害であり、三権分立に反する。行政が国会をコントロールし、勝手に秘密を作って、これを国民に知らせないとは大問題。情報が国に統制されるとどんな結果を生むか、歴史的にも現在の原発事故でも、枚挙にいとまがない」
 今回の最も大きな問題は、軍事情報に限らず、我々の生活に結び付く範囲まで秘密が広がる恐れがあることという。「この法案をいったん認めたら、どんどん特定範囲が拡大してプライバシーを侵害する。憲法に抵触する。法律は通してしまったら一人歩きする。君が代・日の丸にしても、強制しないと言ったのにもかかわらず、今や教育現場では教職員の口の動きまで監視しようとしている。今回、報道の自由は規制しないと言いながら、行政の勝手な判断で規制される可能性もある。厳罰化によって生まれるのは委縮社会であり監視社会だ」
 この体制の行きつく先は集団的自衛権にあると、服部氏は見る。「安倍政権は来年1月の通常国会で国家安全保障基本法を出し、集団的自衛権の行使を可能にしたい。これは憲法9条がなくなるに等しい。大変な時代がきていると思う。これら法律の制定によって、憲法改正しなくても、実質憲法が変えられるということだ。この法案を廃案にできれば、安倍戦略にひずみを持たせることができる。なんとしても12月6日までに阻止したい」
 服部さんは国民の反応が厳しいと、内閣支持率に響くので強行採決ができないと指摘。世論を広げて審議切れ、廃案を目指そうと結んだ。
 最後に平和と自由を祈る祈祷があった。この日の献金の一部はフィリピンの被災地に献げられた。

◎Without You(法務大臣賞を受賞した関西のゴスペルグループ)−−「やり直しできる」と少年ら

 関西で活躍するゴスペルグループ「Without You」(ウィズアウト・ユー)が、今夏法務大臣賞を受賞、7月27日に奈良少年院で授与式が行われた。ゴスペルグループとして日本で初めての受賞。昨年は法務省大阪矯正管区から第62回「社会を明るくする運動」(法務省主唱)の団体表彰を受けている。2001年から近畿を中心に少年院や刑務所を訪問し、ゴスペルを通して受刑者たちを励まし続けてきたことが評価された。今月で結成14年。様々な職業、教会のメンバー20人は結成当時のままだ。共有するのは「あんたがおらんかったらあかんねん」という神さまのメッセージ。その熱い思いは傷ついた人々の心に希望の火を灯している 。

 加害者に寄り添う。この難題にゴスペルで答えた。
 リーダーの西山哲穂さんは言う。「少年院の子どもたちは大人に対する不信感がある。大人の助けが必要な時、信頼できる大人に出会えなかった。自分の犯した罪にはちゃんと向き合わねばならないが、僕らは大人、社会の立場で彼らにこう伝えています。僕たちはみんなを応援している。みんながSOSの時、助けることができなかったことを謝りたい。しかし、ここから新しい物語が始まる。人生はやり直しができる。神さまは君の人生に素晴しいドラマを用意している、と」
 少年たちは西山さんのそのことばに感動する。訪れた各地の矯正施設の感想文には、西山さんたちに敬意と感謝を込めた文章が目立つ。多くの少年たちの背景には劣悪な家庭環境がある。誰も「あんたがおらんかったらあかん」と言ってくれなかった人生に、ゴスペルを歌う「おっちゃんやおねーちゃん」を通して、世の中には自分たちを応援してくれる人がいるのだと気付くきっかけになっている。
 「ある少年院の先生はWithout Youのメッセージは自分の言いたいことを代弁してくれていると言ってくださった。先生たちはメンバーの一員のような気持ちでいるとも。今少年法が厳罰化の方向に向かっています。本来更生施設である少年院が、刑務所のような刑罰の対象になりつつある。現場の先生方は、刑罰でなくもっと豊かな教育をしたいと強く願っておられるのに。今回の受賞は、今までにないアプローチや在り方を評価してもらえたのだと思います」
 メンバーで大阪女学院中学・高校教頭の山哲嗣さんは「一番大切なことは、少年たちが社会に出たあと」と、受け入れ場所の必要を痛感している。帰る場所、働く場所のない少年たちの再犯率は高い。
 「犯罪を犯した人を社会で監視していこう、隔離しようという流れになっている。そうではなく、道を踏み外した人もやり直せる社会でありたい。人のしたことと、存在の価値は違う。放蕩息子を迎えられたイエスさまにならいたい。更生活動をしている牧師方とタイアップできたらと考えています。教会も受け皿になれたらいいのですが」
 メンバーの藤本輝雄さんは、受刑者の雇用に尽力しているお好み焼きの『千房』の中井政嗣社長と面談した。「少年たちの就労は大きな問題。中井社長は『知恵と忍耐のいること、決して甘くない』と。Without Youの活動にも関心を持ってくださって、関西の経済界の新年会に出演依頼をいただきました」
 こうした交流が今後の働きにつながればと期待している。
 歌、演奏、本格的な音響がそろい、泣いたり笑ったり躍動感あふれるステージが持ち味。ときには拍手しか許されない施設で演奏しても、今まできいたことのない本格的なコンサートに驚き、身を乗り出して聴く少年たちの目の輝きに打たれる。メンバーのカメラマン酒井羊一さんは「神さまに導かれて祈り心でやってきた働き。一人ひとりの思いが感謝状につながったと思う」と、今までの道のりに思いを馳せる。
 西山さんは「ゴスペルを通して何も壁のない世界が見えてくる。刑務所であっても神様の愛によって互いの心が一つにつながっていく。Without Youは神さまご自身がしようとしておられることに、僕たちが参与する働きなんです」と、目を輝かせた 。