2000年3月19日号《ヘッドライン》

2000年3月19日号
《ヘッドライン》
 = 1面 =
◎<献金袋課税問題>「信教の自由」に基づく税務行政を国税局に要望
★米国の国家朝祷会で大統領とスター検察官が同席
★ナイジェリア:政府がイスラム法の施行停止を決定
★<21世紀への対話>ペンテコステと福音派(9)万代栄嗣・内田和彦
★<落穂抄>月刊「らみい」のハッピー・バースデーコーナー
 = 2 面 =
◎日本キリスト教連合会:「信教の自由」に基づく税務行政に関する要望書(全文)
★核兵器を鋤に打ち直す——トライデント・プラウシェア2000のメンバー来日
★<論説>「40/70の窓」新しい挑戦
★<逆転の信仰経営>(41)生まれ変わったビジネスマン<24> 三谷康人回顧録
 = 3 面 全面広告=
☆第4回日本伝道会議
 = 4・5 面 全面広告=
★春の教会案内
 = 6面 生活のページ=
★教会で楽しく子育て——地域の必要にこたえて親子教室
★神戸からSOS——「ノーサイド」がボランティアキャンプ
★<投稿>伝統的な教えの絶対化も肉の働き
★<投稿>宗教批判社会と福音宣教
★<投稿>福音派に偏向あるのでは?
★<CDの時間>「Womens of Hope」 ライフ・ミュージック発売
★<今月の試写会>「クッキー・フォーチュン」 評・高梨 大
 = 7面 =
★クリスチャン女優・和泉ちぬさん初プロデュ—ス公演「なんのこれしき」
★第1回北海道ゴスペルフェスティバル——メンバーにも聴衆にも伝道
★教会のコーヒーハウスで「普通のかかわり」
★2000年をゴスペルで祝おう
★<声なき叫びが聞こえますか=41>医学がだめでも、主の奇跡はそこから・・ 記・岡本富郎
 = 8 面 =
★<聖書66巻>詩篇(4)今も天でとりなす方 記・鍋谷 尭爾
★<書評>「この国で伝道を」木谷 信三著
★<新刊書紹介>ラインハルト・ボンケの著作
★<情報クリップ>催し情報ほか
 

<献金袋課税問題>「信教の自由」に基づく税務行政を国税局に要望

キリスト教会で慣例化している月定献金袋が九州地方の税務署によって印紙税法違反に問われ、同地方の日本基督教団の教会が過怠税を徴収された事件(昨年8月)が大きく波紋を広げている。
国税当局と交渉した同教団が、違反と見なされない新しい書式の月定献金袋を製作し対応したのに対し、日本バプテスト連盟などのように行政による宗教への不当介入を警戒する動きもある。
各地の教会の財務担当者からはどう対応してよいのか戸惑う声が聞かれる。
そうした中で、信教の自由を守る観点からこの問題を放置できないとして、カトリック、プロテスタントを含む教界の対行政窓口である日本キリスト教連合会は3月8日、都内の日基教団・渋谷教会を会場に「献金袋と印紙税に関するシンポジウム」を開催、国税庁長官あての「信教の自由」に基づく税務行政に関する要望書を採択した。
シンポジウムでは、日本基督教団でこの問題に対応した財務担当幹事の猪狩満友氏が問題の経緯を説明、セブンスデー・アドベンチスト教団の税理士・生沼忠氏が印紙税法について解説、日本バプテスト連盟元総務部長の鈴木重義氏が献金の本質と献金袋の意味、税務当局の対応や法適用の問題点について発題した。
冒頭、あいさつに立った日本キリスト教連合会の竹田眞委員長(日本聖公会首座主教)は「宗教法人法が改定されてから、憲法の政教分離と信教の自由に触れるのではないかという心配があったが、確かにその可能性が出てきつつある。
行政による宗教法人の管理、規制、介入が強化されつつある」として、「それが具体的になった事例が今回の献金袋の課税問題」との見方を示した。
猪狩氏によると、問題の発端は99年8月、日本基督教団九州教区のある教会に所轄税務署による源泉所得税の調査があった際、月定献金袋を目にした調査官が「印紙税の課税文書(受領の事実を連続的に記入する通帳)に該当する」と指摘。
過去3年間分の過怠税を課された。
このため同教団では国税局と交渉を重ねて対応策を検討し、印紙税法違反と見なされない書式の新しい献金袋を製作、諸教会に推奨している。
生沼氏は、印紙税法が基本通達で「営業に関しないもの」は非課税とし、「公益法人が作成する受取書は、収益事業に関して作成するものであっても、営業に関しない受取書に該当する」と定めていることから、月定献金袋を「通帳」と見なし課税文書とする解釈と矛盾することを指摘。
税務署の担当者によっては「非課税」と解釈する実例もあることを紹介した。
また、私立学校の授業料納入袋は通帳形式であっても非課税扱いであることとも整合性がないことを指摘した。
鈴木氏は、「(問題が発生した九州の)税務署員は『もし聞き従わないならば国税局は全国のキリスト教会に対して査察を行う』旨の脅しをかけたという。
牧師・会計役員は税法を知らなくても、聖書から本来のキリスト教会の宗教活動を説明し、税務署員を説得するくらいの気迫がなければいけない」と問題提起。
献金が単なる会費ではなく、キリストの恵みに応答するささげものであり、すぐれて宗教行為であることを強調し、献金袋は単なる事務用品ではなく祭儀用品であるというくらいの意識を持つように勧めた。
そして「行政には憲法20条(信教の自由)、宗教法人法84条(宗教上の特性及び慣習の尊重)を守る義務があるのに、税務署員は全く無視して高い姿勢で踏み込んできた。
税務当局の不当な介入を許すべきではない」と主張。
「今回の出来事は税法の基本通達の矛盾が教会にしわ寄せされたと言うべき。
私たちは宗教法人法84条を特に覚えて掲げ、税務署の踏み込みすぎに対して強く退けなければならない」と警鐘を鳴らした。
また、日本福音ルーテル教会管財室長の長尾博吉氏は、消費税などで課税額が正当か判断するために宗教法人の献金収入を精査することは、信教の自由の侵害であり憲法違反となることを指摘。
日本キリスト教連合会常任委員の佐藤丈史氏(日本福音キリスト教会連合)は、土地・建物の取得に伴う登録免許税に関連して、被包括団体のためにこれまで問題なく発行されていた非課税証明を、東京都と群馬県が昨年から出さない方針に転じたことを報告。
「信教の自由はこういうところから少しずつ侵されていく」として、注視していく必要を訴えた。
シンポジウムには、キリスト教連合会加盟(30教団、28教会)以外の教会からも含め、会計担当者ら約百人が参加し、活発な質問や意見が交わされ関心の高さをうかがわせた。
最後に、国税庁長官あての「信教の自由」に基づく税務行政に関する要望書を盛んな拍手で採択した。
同要望書には、献金袋がキリスト教会における伝統的な慣習であることの解説文書も添付している。
(2面に全文掲載)日本キリスト教連合会ではこの要望書を元に、国税庁と今後ねばり強く交渉していく方針だ。
【宗教法人法第84条】国及び公共団体の機関は、宗教法人に対する公租公課に関係がある法令を制定し、若しくは改廃し、又はその賦課徴収に関し境内建物、境内地その他の宗教法人の財産の範囲を決定し、若しくは宗教法人について調査をする場合その他宗教法人に関して法令の規定による正当の権限に基づく調査、検査その他の行為をする場合においては、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない。

日本キリスト教連合会:「信教の自由」に基づく税務行政に関する要望書(全文)

国税庁長官殿「日本キリスト教連合会」は、カトリック中央協議会・日本聖公会・バプテスト連盟他プロテスタント諸教団・諸教会等によって構成され、憲法が保障する信教の自由と政教分離の精神のもとに、キリスト教文化の向上及び日本国民の良心の自由と平等・平和に寄与するため幅広い宗教活動を展開しております。
宗教法人は、公益法人の一つとして複数の税法上の非課税措置を受けておりますが、これは政教分離の原則のもとに宗教法人が行う宗教活動の高度な公益性と宗教活動の非営利性によるものであります。
不公平税制の是正という名目と税収確保のために、宗教法人を含む公益法人等に対して諸税法が施行されて以来これまで課税しないとされてきたものにまで課税するという実質的な課税強化の動きがありますことは、宗教法人の宗教活動が行政の制約により萎縮停滞させられることとなり憂慮に堪えず遺憾に存じます。
課税当局は、キリスト教会が最近経験した下記のような課税強化の実態と税務当局による宗教活動への実質的な介入の実態を調査し、些かも「信教の自由」を侵すことがないよう各所轄税務当局に対し速やかに公正な措置を講じることを強く要望します。
【宗教法人法第84条】(略)記 ?、「献金袋」に対する課税「献金袋」は、第19号文書に該当しない文書であることを明確にして頂きたい。
「印紙税法基本通達」(別表第一 第17号文書22)によれば、宗教法人(公益法人)が作成する受取書は、収益事業に関するものであっても営業に関しない受取書に該当し非課税であることが明確にされております。
他方、献金の方法として献金袋によって献金すると課税、というのは法律の精神に矛盾を覚えるところであり、「通達」の不備といわなければなりません。
さらに「印紙税法基本通達」(別表第一 第19号文書6)によって、学校法人の授業料納入袋が第19号文書から適用除外されていることを考えると憲法第23条(学問の自由)と憲法第20条(信教の自由)の間に「通達」によって実質的な格差を生じさせているといわなければなりません。
このことは、課税庁が「信教の自由」を軽視している所以であり「通達」に不備があるといわなければなりません。
キリスト教信者の献金と献金袋は、別紙「献金袋はキリスト教会における宗教上の伝統的な慣習である」に詳述したとおり、キリスト教会の伝統的な慣習であり純粋な宗教行為であります。
生徒等が金銭を落とさないように持ち運ぶための袋形式のものまで課税することは適当でないとして課税しないことに取り扱う(改訂版『印紙税実務問答集』国税庁消費税課課長補佐松本正春編)と通達しているなら、宗教行為としての「献金袋」に課税することは同じように適当でないと判断するのが当然と考えます。
「献金袋」が宗教行為であることをご理解賜り、憲法第20条及び宗教法人法第84条を尊重し、「献金袋」は第19号文書において課税しないことに取り扱う措置を講じて頂きたく強く要望します。
?、「還付」消費税に関する算出方法公益法人は、支払い消費税が多く預かり消費税が少ないため、過払い消費税の還付を受ける必要が出て来ます。
この還付請求をする場合、課税収入、非課税収入及び不課税収入を精査し、その割合に基づき還付消費税額を減額算出するという仕組みに信教の自由を侵す虞れが潜んでいます。
即ち、宗教行為としての献金の記録は、本来、秘密とされるべきであるのに、行政が教会の不課税収入を精査することは、献金者の信仰的プライバシーを侵害し、国民の宗教調査に等しい調査であることを意味します。
憲法が「信教の自由」を保障しているにも拘わらず現行の消費税法は、信教の自由を軽視していると言わなければなりません。
国その他の機関が政教分離の原則に従って宗教活動に不当に介入することがないため、宗教本来の聖なる活動領域には触れないという原則を再認識し、それを確立するよう要望します。
?、登録免許税法第4条2項かっこ書 別表第3欄の大蔵省令で定める添付書類「登録免許税法 別表第3の12」に「専ら自己又はその包括する宗教法人の宗教の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内地境内建物の取得登記」とあります。
従来、地方自治体の長は、包括宗教法人に対し被包括宗教団体((例)宗教法人○○キリスト教団○○○○教会)(非法人)にかかる飛地境内地の「境内地境内建物証明書」を交付して来ました。
然るに、包括宗教法人と被包括宗教団体である教会は、活動の実態が一体をなしており且つ包括宗教法人が申請人であり、土地建物の名義人であるにも拘わらず同証明書を交付しないという地方自治体が相次いでいることは、行政がキリスト教会の宗教活動に介入し、著しい制約を加える結果になるといわなければなりません。
これらのことについて、貴庁から然るべき適切な措置が講じられるよう要望いたします。
2000年3月8日
「献金袋」はキリスト教会における宗教上の伝統的な慣習である
「献金」は、信仰の実践であり、会費ではない。
 キリストを信じる者の「献金」は、聖書の教えを実践し、感謝と献身のしるしとして喜んで献げるものです。
それは信者ひとりひとりが心で決めたとおり、喜んで神に献げる聖なる行為であり、会費や分担金とは全く異質の純粋な宗教行為である。
「献金」は聖書に基づくものである。
 キリスト教会の「献金」は救いを経験した信者が進んで神に献げるものです。
そもそも献金は信仰の顕れであり信仰と献金は一体をなしているものであります。
そこには御利益目的や不純な思いは伴ってはいません。
「マタイによる福音書6章3節」によれば「あなたは施しをするとき、右の手のしていることを左の手に知られないようにしなさい。
」と勧めています。
献金額が人の目に触れ心の中で傲慢になることがないために伝統的に「献金袋」が用いられて来ました。
「献金袋」による献金は祈りと表裏一体です。
 およそキリスト教会の運営は、収益事業による収入に頼らず信者の献金のみによって宗教活動が行われています。
信者は教会の活動を維持し、イエス・キリストの宣教命令を推進するため自ら決めた「月定献金」をします。
キリスト者が神の恵みによって生かされているとはいえ、忘れることもあるし、怠慢に陥ることもあります。
これを戒め自らを励ますのが「献金袋」であります。
「献金」によって海外宣教に参加しているのです。
 「全世界に出ていき、すべての造られた者に福音を宣べ伝えなさい。
(マルコ16:15)」日本の教会からアジア・アフリカ・南米・その他のヨーロッパ・アメリカの諸国に数多くの宣教師が派遣されています。
国内にいる信者は、「献金袋」によって宣教師の働きを覚えて祈り、献金をすることによって自らも海外宣教活動に参加しています。
もう一つの「献金袋」の使い方 以下はキリスト教会の「献金袋」がどのように使われているかを示す一例です。
〔中川義也著『献金と礼拝』(141頁)より〕「私の牧会している教会では、献金袋が用意されています。
裏側に、十分の一献金、感謝献金、指定献金の項目が、一覧表になって印刷されています。
教会員のある姉妹は、一つの喜びを持っています。
それは、その献金袋の空欄をすべて、いっぱいに満たすことなのです。
一項目も抜かすことなく、また献金が何もなかったという月がないようにです。
この袋は一年間にわたって使用するのですが、この姉妹の袋は裏面全体が領収印で赤くなってしまいます。
そして、しまいには、感謝献金の欄が埋まってしまうので、新しく紙を張って使っているのです。
その姉妹は、ある時、主より、この袋を一杯にしなさいという導きを受けたのだそうです。
こういう方は、まさしく献金の賜物がある方だと言っていいのではないでしょうか。
しかし、賜物があるなしにかかわらず、ささげることは、クリスチャンの責任であり、また特権です。
機会のある度に、喜んでささげていきましょう。
」むすび以上述べたとおり「献金袋による献金」は、権利と義務という関係に基づかない、キリスト者の純粋な宗教行為であり、キリスト教会における宗教上の伝統的な慣習であります。