[CSD]2013年7月14日号《ヘッドライン》

[CSD]2013年7月14日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎日本軍「慰安婦」強制明らか——インドネシアで実態調査した元宣教
★「ハンガーゼロ自販機」設置で防災備蓄——特製ボックスにパンの缶詰と水96人分
★NCC平和・核委員会:憲法・原発で立場表明

 = 2 面 ニュース=
★日本軍「慰安婦」問題に関する橋下発言の根本問題とは——橋下氏と安倍首相の歴史認識の類似性 記・木村公一

 = 3 面 =
★<フクシマの声を聴く>[9]母たちからの声?——なぜこんなことをしないといけないの 記・中尾祐子
★日本民族総福音化運動10年——台湾人牧師を講師に「愛と赦しと癒しの聖会」
★9条改定に反対——宗教者らが共同声明
★<オピニオン>存在することを通しての支援 記・
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4 面 ニュース=
★「日本国憲法活かす道こそ御心」——JEA社会委員会 参院選を前に重大性訴える
◎被災しながら支援続ける——いわき・内郷キリスト福音教会
★高山右近を紹介し金沢伝道——牧師が私財投じ「ギャラリー・ジュリスト」開設
★三浦綾子 電子全集が完結——小学館で体験型展示
★<落ち穂>明治40年のリバイバル

 = 5 面 伝道・牧会を考える=
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>?[56]単立・アドラムキリスト教会?——受刑者の若者も自分も同じ罪人
★<憲法が変わるってホント?>[14]強いられた自主避難——家族を隔てる安全安心キャンペーン 記・片岡 輝美

 = 6 面 全面広告=
☆Asia for Jesus —天の御国が今ここに— 2013東京聖会
8月8日(木)~10日 会場:東京中央教会 主催:東京福音リバイバル聖会
ホームぺージ http://tokyo-revival.jp

 = 7 面 仕事と信仰=
★社員とその家族を大切にする会社は滅びない——坂本光司氏の講演から
★<首都圏大震災に備える>[10]実践編?——地域の状況を分かち合う 記・栗原一芳

 = 8 面 映画・監督インタビュー=
◎映画「台湾アイデンティティー」——5人の日本語世代が語る戦後と日本 酒井充子(さかい・あつこ)監督に聞く



◎日本軍「慰安婦」強制明らか−−インドネシアで実態調査した元宣教=1307140101

 橋下徹・大阪市長(日本維新の会共同代表)が、旧日本軍の慰安婦について、必要だったという趣旨の発言をしたことに端を発し、国の内外で波紋が収まらない。
 橋下氏は5月13日、大阪市で記者団に対し、「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、精神的にも高ぶっている猛者集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」などとして、2007年に第1次安倍内閣が閣議決定で戦時中の慰安婦について強制の証拠はないとしたことなどを述べた。また沖縄で米軍司令官に、風俗業の活用を勧めたこともひんしゅくを買った。
 これに対し同23日、20か国の68団体が共同で抗議声明を出したのをはじめ、国内で少なくとも30の地方議会が抗議や非難を決議。米国や韓国からも批判が高まった。
 そうした中で、元インドネシア宣教師だった木村公一氏(日本バプテスト連盟福岡国際キリスト教会牧師、西南学院大学/福岡大学非常勤講師)が本紙に投稿、「慰安婦」徴用の強制連行があったことを示す資料はすでに政府機関から開示されている、などと歴史の事実に注視を促し、橋下氏の発言の根本問題がどこにあるのかを指摘した。
 木村氏は1986年から2002年まで17年間、インドネシアの神学大学で教育と宣教に携わっていた。その間の92年、ひとりの女性が「わたしは日本軍によって軍施設に連行されて数年『性奴隷』にされた」と新聞紙上で名乗り出ると、日本軍の「慰安婦」問題は大きな社会問題になった。それを機に木村氏は、多くの協力者とともにこの問題を調査し、その結果を公表してきた。
 橋下市長が5月27日の外国特派員との記者会見で「報道は誤報だ」と繰り返したことも問題視。「橋下氏自身が米海兵隊に女性の『利用』を勧めた事実がある以上、誤報ではなく明らかな自己正当化」だと批判。「女性の
『利用』とは女性を物化することであることを大阪市長は知らないだけでなく、自己義認の罪の重さを知らないようです。
自己義認とは信仰義認の対立命題。権力をあずかる政治家が教会が最も大切にしている教えを否定したことは見過ごせない」とし、宣教の務めとして見解を明らかにした。

◎被災しながら支援続ける−−いわき・内郷キリスト福音教会=1307140402

 東日本大震災で損傷した教会堂の再建が続く。福島県いわき市の同盟基督・内郷キリスト福音教会(金成孝悟牧師)は6月30日、新会堂で初の礼拝と献堂式を開いた。
 市街地方面からの坂を上ると、新会堂の壁の巨大な十字架が目を引く。日本の民家の雰囲気を持ちつつモダンな印象だ。
 設計を担当した一級建築士で保守バプ・いわき希望教会会員の先崎正男氏は「1地方都市の教会とはどうあるべきかという問いの中で、威厳のある会堂ではなく、20年後、30年後味わい深くなる会堂を目指しました」と言う。内部は礼拝堂を中心として、収納、厨房、講師室などを囲む。随所に木材を生かし、壁は自然素材の珪藻土を使用し、温かみをもたせた。
 旧会堂は昨年8月に解体。その後、フリーメソジスト・平キリスト教会で合同礼拝を続け、5月末に新会堂が完成した。資金は日本同盟基督教団を始め諸団体の支援で満たされた。
 心懸けたことは、?震災被害をきっかけとする新会堂建築であること、?教会員の一致を最優先に考えたことだ。金成牧師は「誰一人つまづくことなく献堂式を迎えられました」と感謝する。同教会は今後も支援活動を継続していく。
 献堂式では日本同盟基督教団理事長、日本福音同盟理事長の安藤能成牧師(世田谷中央教会牧師)が教会形成の土台を語り、創世記1・1~2から?神によって?みことばによって?聖霊によって、教会が建てられることを説き明かした。
 1968年に東洋福音宣教会のノルウェー人宣教師エドウィン・クヌッツン氏が開拓した同教会は、今年で開拓45年。2代目牧師を28年務めた黒田昭一牧師(小川聖書を読む会)は祝辞で、クヌッツン宣教師が告げた「互いに愛し合ってください」という言葉に加え、「イエス様にいつも結びつく教会」「御霊の実を結び続ける教会」であることを勧めた。
 祝辞で日本同盟基督教団東北宣教区長の東頭戍牧師(小湊キリスト福音教会)は?超教派、?同教団東北宣教区、?内郷キリスト福音教会の3つの喜びを分かち合った。
 いわき市内牧師交流会委員長の岑正幸牧師(ジーザスお父さんの家教会)は震災後、牧師交流会が盛んになったことを報告。「震災の苦しみが理由ではないか。私たちには圧倒的勝利が約束されているが、そのための圧倒的な苦しみを避けて通れない。重荷を負い合える同労者とともに前進したい」と話した。
 いわき希望教会牧師の伊藤順造氏は、自身がいわき市で初めに洗礼を授けたのが先崎氏だったと明かし、一人の魂の救いとその後の思いがけない導きの喜びを述べた。
 福島県キリスト教連絡会の委員長、木田恵嗣牧師(東北ミッション・郡山キリスト福音教会)は、「毎年同じところに生える草は上の部分を刈っても根は残り、根だけが毎年太くなる。内郷キリスト福音教会も様々な苦しみがあったと思うが、下に根がはっている。今度は上にも実を結ぶと信じます」と励ました。

◎映画「台湾アイデンティティー」−−5人の“日本語世代”が語る戦後と日本 酒井充子(さかい・あつこ)

 日本は、1895年(明治28)から1945年(昭和20)の敗戦までの50年間、台湾を統治していた。その時代に生まれ、公教育を受け、激動する戦後を生きた台湾の日本語世代5人の証言ドキュメンタリー映画「台湾アイデンティティー」(酒井充子=さかい あつこ=監督)が、7月6日(土)より東京のポレポレ東中野でロードショー公開された。戦後の思想統制と弾圧の中を生きた日々。日本人として出兵し、戦後は内政不安定で帰国できず日本で暮らしている人。台湾人にも日本人にもなりきれずインドネシア人になった人。それぞれの人生に触れ、証言を記録した酒井監督に話を聞いた。 【遠山清一】

日本に浸透する?親日国?台湾
 台湾は、アジアで最も日本語が通じる観光地。台北駐日経済文化代表処が今年5月に日本国内sで実施した意識調査では、約67パーセントが「台湾を身近に感じている」と回答。2年前(11年)に比べ約11ポイント上昇した。東日本大震災直後、台湾製パソコンの基盤に小さくGod Bless Japanと印字されていることが全世界で話題になり、台湾からも200億円に上る義援金が寄せられた。
 そうした親しみやすい台湾のイメージはあっても、冒頭に触れた日本の統治時代や日本語世代の存在は、あまり知られていない。それは、前作の「台湾人生」の時にも感じさせられた。「でも、知らなくても仕方ないと思うんですよ。この映画を見た時に、そうした日本とのつながりについて知らなかったことに気づいてもらえたら、それでいいと思います」

38年間の戒厳令と
反体制弾圧の中で
 戦時中の日本人から戦後は中華民国籍へ移された。今も流ちょうな日本語で語られる5人それぞれの人生。
 高菊花さんは、部族の自治を主張していた父・高一生が当局ににらまれ、無実の罪を負わされ銃殺された。その後、歌手をしながら家族を支え、長年かけて父親の名誉回復も果たした。カトリック信徒の菊花さんは、父親のためお墓を建立し家族で墓参する。「台湾の原住民部族には、キリスト教が広く浸透していますよ」と実感している。
 黄茂己さんは、敗戦直後に日本で結婚し台湾に帰国後は、小学校教員として定年まで勤めた。国民党によって38年間敷かれた戒厳令下の反体制弾圧(白色テロ)時代、本当の民主主義について子どもたちに語り続けた。張幹男さんは、白色テロ時代に日本語の冊子を翻訳しようとして、政治犯収容所に8年間収監された。その後、旅行会社を起こし、出所してきた政治犯らの面倒を見てきた。
 宮原永治さんは、インドネシアのジャカルタで残留日本兵として過ごしてきた。日本への思いは熱いが、インドネシア独立戦争で戦い、インドネシア国籍を持ち、インドネシア人として死ぬと、凛として語る。呉正男さんは敗戦後、中央アジアの捕虜収容所で2年間の強制労働を余儀なくされ、復員したが二二八事件(1947年に起きた政府や大陸から来た中国人への抗議行動や襲撃が台湾全土に広がった事件)後の台湾へは帰国できず日本に残り進学し、就職した。
 大上段に理詰めの議論ではなく、「お茶を飲みながらお話を聞かせてくださいと言う感じで撮った」一人ひとりの表情はとても豊かで、重い話なのに観る側の心に届いてくる。

「今に続いている
過去」と向き合う
 登場する一人ひとりが、現在の中国名のほかに日本名、部族での名前を持っている。取材と撮影で出会ってきた人たちに接して、「日本が統治していたことは、過去の歴史ですが、登場する方々はその歴史を生きて来られた。今に続いている過去というか、現在進行形なんですよね。その人生の一部を歴史という風には呼べず、すごく生々しいものと感じています。大きく国と国との関係で言えば、いろいろあるかもしれないけれど、その中で暮らしてきた一人ひとりの人生の積み重ねが歴史ではないのかと思っています」。
 台湾が日本人に感じさせる親近感。そのルーツと現在進行形を知る事実との出合いが、この作品にはある。

監督:酒井充子 2013年/日本/102分
配給:太秦 2013年7月6日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー。
公式サイトShttp://www.u-picc.com/taiwanidentity/