[CSD]2010年4月18日号《ヘッドライン》

[CSD]2010年4月18日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
★祈祷課題は「日本代表」——古川頌久さん サッカースクール・エスペランサからプロ誕生か
★米国:ゾンダーバン社がキリスト教書千点をiPadに

 = 2 面 ニュース =
★聖職者の性虐待で揺れるバチカン——アイルランド・ドイツ・米国など隠ぺい疑惑報道 教皇にも火の粉
★日本の礼拝には日本語で——作曲家、オルガニストらが定例創作の集い「賛美歌工房」発足
★<落ち穂>教会もマイホーム主義に

 = 3 面 教界ニュース =
★新連載<竜馬をめぐる人々>[2]聖書と出合った侍の変革——初のロシア正教日本人司祭を生んだ出会い
★裁判員制度、キリスト教会だからできること——NCC・カトリック対話集会で討議
★<オピニオン>出会いは世界を変える 記・友納 靖史

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★小林 実さん[下](ペテロ建設[株]代表取締役)——生き残れるか勝負の時
★<働く人の境界線>[5]あなたの人生 仕切っているのは? 記・中村佐知

 = 5 面 牧会/神学/社会=
◎家庭希薄化の現代に一石 留岡幸助の「心の開拓史」——現代ぷろだくしょんが「大地の詩」映画化へ
★性虐待で教皇の責任問う——カトリック神学者キュンクが論文を発表
★英国:最後の晩餐の食事 過去千年間に大増量
★<精神障害と教会>[72]苦労の残像(2)  記・向谷地 生良

 = 6・7 面 アーティスト特集=
★99%の人々にジーザスの愛届けたい——a-flats
★母子が紡ぐハーモニー——KISHIKO&真利子
★47都道府県ツアーを達成 初ソロアルバム「247」リリース——横山大輔
★身近なモチーフで独創的な世界を表現——画家 宮下桂子

 = 8 面 全面広告=
☆聖句書道展

 = 9 面 情報=
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★CD:「EARTH」(アサフ、1,575円税込)
★BOOK:『必笑ジョーク 202』中野雄一郎・岸 義紘編集(いのちのことば社、945円税込)
★BOOK:『よい相談相手になるために』キリスト教カウンセリングセンター編(キリスト教新聞社、2,520円税込)
★REVIEW:『イエス・キリストに出会う 渡部 信説教集』渡部 信著(YOBEL,Inc、1,890円税込)評・中島秀一

 = 10 面 関西だより =
★関西に賛美が満ち溢れるように——5月 ユーオーディア音楽祭 in 大阪
★女性経営者が「心」を語る——ミッション・ブロードバンド ラジオ新番組
★イエス様も祝った「過越の祭」体験に感動
★書で味わうみことば——第36回聖句書道展5月3~6日に開催

 = 11 面 クリスチャンライフ =
★感動! 「生きた信仰」体験 in ランカスター——ホストファミリーが宣教師
◎映画レビュー「クロッシング」とキム・テギュン監督インタビュー(4月17日から渋谷ユーロスペースほかでロードショー)

 = 12 面 ひと=
◎一人芝居「アブラハム」の自主公演にチャレンジ——役者 須貝まい子さん




◎家庭希薄化の現代に一石 留岡幸助の「心の開拓史」−−現代ぷろだくしょんが「大地の詩」映画化へ=10

 映画「石井のおとうさんありがとう」(2004年)では、日本で最初に孤児院を設立し、「児童福祉の父」と呼ばれた石井十次。映画「筆子その愛—天使のピアノ」(2007年)では、日本の知的障害者福祉の創始者である石井亮一とその妻・筆子。近年、福祉にその身をささげたキリスト者の生涯を、映画を通して伝えてきた株式会社現代ぷろだくしょん(東京都新宿区)が、新たな映画の製作に取りかかっている。次回作は「大地の詩~留岡幸助物語~」。北海道で、児童の自立支援に尽力した留岡幸助の生涯とは—。
     ◇
 留岡幸助は1864年(元治元年)、備中松山藩(今の岡山県高梁市)に、理髪業を営む吉田満助の次男として誕生。生後まもなく、留岡金助・勝子の養子となった。
 8歳の時のこと。当時、松山藩は教育に力を入れており、武士の子に限らず商人や百姓の子でも寺子屋で学ぶことができた。幸助は、通っていた漢学塾で、武士の子どもが弱いものいじめをしているのを見かね、相手の手にかみついてしまう。その翌日、それが元で武家屋敷に出入り禁止となった父・金助から、幸助は激しい折檻を受けた。この時の経験がもとになったのか、幸助は後に「士族の魂も町人の魂も赤裸々になって神の前に平等」の精神を自身の信仰に表明している。
 キリスト教との出合いは14歳の時。1882年、18歳で高梁教会の上代知新牧師より洗礼を受けた。養父からの迫害を耐え85年、同志社英学校別科神学科邦語神学課に入学。88年卒業し、丹波第一基督教会(現・丹波新生教会)に赴任した。91年、牧師・金森通倫の勧めで北海道空知集治監の教誨師に就任。そこで不良少年教化事業の必要を痛感した幸助は、3年後に渡米。コンコルド、エルマエラ監獄などで監獄改良、感化教育事業研究について学んだ。
 97年に帰国すると、東京の霊南坂教会牧師に就任。98年に巣鴨監獄教誨師、99年警察監獄学校教授などを務め、監獄改良運動に尽力した。この頃、死刑廃止論を提唱。同時に、「犯罪防止の根本は不良少年の教化にある」との素志から感化院(児童自立支援施設)設立のためにも奔走し、99年、東京・巣鴨に巣鴨家庭学校を設立。同年霊南坂教会を辞任した。また内務省嘱託として日清戦争後の貧民救済問題と日露戦争の社会改良につとめ、報徳思想(私利私欲に走るのではなく社会に貢献すれば、いずれ自らに還元されるという思想)を掲げて社会教化にあたった。
 1914年、北海道・北見の社名淵に国有地の払い下げを受け、家庭学校の分校と農場を開設。これが、後の北海道家庭学校となる。「流汗鍛錬」を信条とし、自然の中で農作業等の労働体験を通じて感化事業を行う、という幸助の、構想実現の一歩だった。
 23年には神奈川県茅ヶ崎市にも分校を開設するが、こちらは関東大震災で焼失、33年に閉校となる。この間、幸助は巣鴨と北海道を行き来し、学校を指導監督した。
 31年、巣鴨の本校で徳富蘇峰と会談中に脳溢血で倒れる。34年2月、東京・上祖師谷の自宅で死去。享年70歳。
 「教育上一番大切なのは、家庭である。次に大切なのは学校と社会である。人の子を教育する最も適当な場所は、地球上どこか。オックスフォードかハーバードかエールかベルリンか。人間を良くする基本は家庭にある」
 少年の育成に家庭環境の重要性を説き、その精神を遠く北海道の地で実現した留岡幸助。家族関係の希薄化が叫ばれる今日、改めてその生涯に焦点を当てた映画「大地の詩」に、関係者の注目が集まっている。
 「今、あまりにも子どもたち、親たち、そして学校との関係に何か欠け落ちているものがあるのでは、と思えます。一般的に生活水準も向上した現代。しかし、貧しくても喜び、悲しみを分かち合い、親子が真剣にぶつかって、家族が寄り添いながら暮らしていた姿は減りました。今、留岡イズムにスポットを当て、お母さんと子どもの教育のお役に立てれば」と山田火砂子監督。77歳、意気込みは衰えない。
 現代ぷろだくしょんでは、映画製作のために広く支援を呼びかけている。問い合わせTel.03・5380・9871、振込先=00160・3・336280「留岡幸助映画応援団」。

◎映画レビュー「クロッシング」とキム・テギュン監督インタビュー(4月17日から渋谷ユーロスペースほか




キム・テギュン監督

 家族で一つの食卓を囲み、誰かが病気になれば皆で心配する。共に笑い、共に泣く。生活、人生が家族に支えられている。日本では、そのような光景が見られることもそう多くはなくなったが、世界から失われたわけではない。たとえば本作の舞台、北朝鮮には今も濃厚な家族関係がある。
 元サッカー選手の主人公ヨンスは、妊娠中の妻ヨンハと11歳の息子ジュニの3人家族に犬が1匹。ジュニの大好きな雨の中、父子で思い切りサッカーをしたり、貧しくても食べ物も喜びも分かち合いながら暮らしている。ヨンスは、中国で交易をしている知人を通して、少しだけ中国や韓国の情報が入る。そして韓国語の聖書も。
 その日常は妻が肺結核に倒れてから崩れ始める。「中国ルートなら薬が手に入るかもしれない」。頼みの交易商の知人は北朝鮮当局に連行され、ヨンス自ら脱北を試みる。嫌がる息子と、別れ際に石ころでサッカーをし、妻への薬を求めて中国を目指す。「すぐに戻るよ」という言葉を残して。
 中国渡航が成功しても連れ戻される危険は付きまとう。薬のお金を稼ぐために肉体労働し、取材に応じれば薬代がもらえるという約束を受ける。しかし、その間に妻は息を引き取る。一人息子は中国を目指すが途中で見つかり、収容所送りに。韓国に渡っていたユヨンスは息子を呼び寄せようと仲介者に依頼し、計画は少しずつ動き出す。しかし、ヨンスはこの手で息子を抱くまで一秒たりとも穏やかではいられない。家族を残して豊かな韓国で暮らすこと、妻に何もしてやれなかった無力さ、狂おしいほどの息子への思い…。ヨンスの煩悶は誰とも分かち合えない孤独の中にある。隣国にいながら、出会うこともままならない父子が、地上で再び抱き合い、サッカーをする日は来るのか。

 「イエスは南朝鮮にしかいないのか? 豊かな国にしかいないのか?」そう問うヨンスの声は、すべてのクリスチャンに突きつけたものとして、心をえぐられる。


 主人公ヨンス役のチャ・インピョも、本作を撮ったキム・テギュン監督自身もクリスチャンだ。5年かけて創り上げた本作に、監督が込めた思いを聞いた。

 ― ―親子の愛というものが、映画から伝わるが、北朝鮮について舞台化するときに、家族というテーマはありましたか。
 「脱北や事件をテーマにするよりも、家族をテーマにした方が観客と近づけると思いました。多くの人にとって珍しい国知らない国を、家族の姿を通して映したかった」

 ― ―ジュニは雨が好きです。たびたび雨のシーンが登場しますが、雨が意味するものとは。
 「主人公は大変な思いをしていますが、いつでも空から降り注ぐ雨があることを表現したかったのです。空とは神様のことです」

 ― ―公開後、韓国での反応はいかがでしたか。
 「反応はよく、韓国では100万人が見てくれました。この手の映画で100万人見たというのは成功なのかもしれません。ただ、配給の問題などもあり、100万人しか、という思いもあります。その中でも、学校などで今でも上映会をしてくれることはうれしいです」

 ― ―韓国のクリスチャンはどのように受け止めたのでしょうか。
 「実は、クリスチャンに見てほしいと思って撮った映画でもあります。神様は、貧しい国にはいないのか。神様は北朝鮮を見て泣いていると強く感じました。クリスチャンは何をしているのか。私たちは知らないふりをしているけど、神様は知らないふりはしていない。神様が見つめている、人が知らないふりをしている。それを知ってほしかったのです」
 「すべての教会が変わったわけではないですが、教会で上映会をしてくれたり、よく祈るようになったと思います」

 ― ―映画タイトル「クロッシング」に込めた思いとは。
 「まず最初に砂漠(中蒙間をジュニが渡る)や川(中朝国境)を渡る意味があります。また、父と子の行き違い、十字架のクロスという意味もタイトルには込めています」
 「また、映画の最後のエンドロールで、家族や近所の人が仲良く食卓を囲んでいます。そのシーンは、神様と共に過ごす、天の御国を思い浮かべて撮りました」


 海ひとつ渡ったところに、壮絶な苦しみの中、神の存在を感じたくても信じられなくなるような暮らしを強いられている人々がいる。神様と北朝鮮の人の間に立ちはだかる「壁」とは、無関心で想像力のない「私」に他ならないと肺腑にしみる。

映画評はこちら

◎一人芝居「アブラハム」の自主公演にチャレンジ−−役者 須貝まい子さん=1004181201


一人芝居「アブラハム」の自主公演にチャレンジ
——役者 須貝まい子 さん




「神様からの一方的な恵みと愛が、少しでも伝われば感謝です」
 Photo by RIKA HOSOMI

 山田火砂子監督の映画「石井のおとうさんありがとう」(2004年公開)では、石井十次(松平健)の娘役。「筆子・その愛~天使のピアノ」(2007年公開)では、知的障害児施設・滝乃川学園を創設した石井筆子(常磐貴子)の鹿鳴館時代に登場する友人の井上夫人を演じた須貝まい子さん。舞台、映画、朗読とその活躍の場を広げている。昨年、3月に中川健一著『日本人に贈る聖書ものがたり 族長たちの巻』(文芸社刊)を原案に自ら企画・構成・演出して演じた一人芝居「アブラハム」。今年は4月16日~18日の3日間で4回の自主公演を行う。


You Tube登録チャンネル URL: http://www.youtube.com/user/sugaimaiko#p/u/13/ffE609Z9FNE

幼いころからの夢
役者でいられる今

 幼い頃から役者になりたいと夢みていた。
 3歳の頃「テレビを見ていて『いいなぁ、あの中に入りたいなぁ』と思って、テレビの裏側に行ってみたけれど、入れなかったんですよねぇ」
 「教会学校のクリスマス劇で羊の役が初舞台。楽しいなぁ」と実体験。小学5年の時に大好きだったオードリー・ヘップバーンが他界した。彼女の映画特集を見て、「この人みたいになりたいと思った。大体、多くの人が勘違いする頃ですよねぇ」(笑)
 それでも夢は持ち続けていると近づいてくる。高校生の時に劇団の養成所があることを知り、あまり演劇の世界には賛成していなかった両親が「本当にやりたいのなら、やってみたら」と了解してくれた。「多分、私の飽きっぽい性格を見て、続かないだろうと思ったのかもしれないですね」と笑う。
 劇団青年座研究所本科を卒業し、小劇団で出演している時に山田火砂子監督に声をかけられ、オフィス・サエで2年間役者修行を受けさせてもらえた。その山田監督から映画「石井のおとうさんありがとう」で、石井十次の娘役を与えられた時は「本当に、うれしかったです」
 「私には、大女優さんのように『これだ』と言えるようなものがまだないです。それでも、3歳の頃に役者の世界に入ってみたいと思ったことが、少しずつ与えられてきて、今ここに居られるということがとても不思議。ですから、舞台や映画の作品に携われることが当たり前なこととは思えないです」
 須貝さんの3段発想は、聞いていて楽しくなる。
 ある日、電車でのこと。友達と話しに興じている男の子のバッグが、座っている女性に揺れてぶつかるため、女性が少し彼のバックを押したら逆ギレして怒りだした。「自分も含めて、なんで自分のことしか考えないのだろうか」。何かを伝えたい。「そうだ! テレビ番組を作って放送してもらおう」。どうしようか。「テレビ伝道番組ハーベスト・タイムの中川健一先生に電話して、『伝道番組を作りたいんですけれど、どうすればいいですか』と聞きました」(笑)

一人芝居「アブラハム」
時代超えて与えられる愛

 これがきっかけで中川氏主宰の「聖書塾」に通い、一人芝居「アブラハム」の原案となる『日本人に贈る聖書ものがたり』と出合った。それを読んでいて「アブラムと一緒に呼吸して、一緒にウルを出てカナンへ旅している感覚になり、とても感動した。そうだ、これを芝居にして伝えよう」と思った。
 著者の中川氏から「自由に脚色してもいいですよ」と快諾を受け、構想を温めていた冬。シンガーソングライター神山みささんのクリスマスライブに行き「ただ前に、進め。」を聞いた時、「これだ! この曲はアブラムが神様に従ってウルを出て旅するときの音楽にぴったりだ」と思った。もう一人、劇全体の音楽の作曲とフルート演奏で多久のりえさんが協力。昨年3月に東京の神田デシジョンで1回の自主公演が実現した。このときの芝居を録画してくれる協力者も起こされ、ユーチューブの自分のチャンネルに登録し、誰もがいつでも見ることができる。
 アブラムやサライなど何役も須貝さんが演じながら、ウルの地で神ヤハウェの声を聞いたアブラムが、サライとしもべたちや家畜を連れてカナンへ向かい、カナンの地を襲う飢饉でエジプトに逃れて行った創世記12章。その物語から神の一方的な恵みの契約と時代を超えて与えられる神からの無償の愛を描く一人芝居「アブラハム」。
 今年は、ヴァイオリンの長直子さんが加わり3人のアーティストで音楽に厚味を増して4月中旬に自主公演を行う。「この一人芝居が、どのように受け止められていくのかはまだ分かりません。でも、いま与えられていることを一所懸命になって、みんなで作り上げていきたい」と、役者であることの今を感謝し、チャレンジしている。
◇    ◇
 【公演メモ】一人芝居「アブラハム」(50分)と神山みさライブ(20分)の2部構成。4月16日(金)午後6時、17日(土)午後2時と6時、18日(日)午後2時の4回公演。料金は2,000円(1ドリンク付)。場所と予約は、東京・神田デシジョンカフェ(Tel.03-5217-3311)