[CSD]2010年8月15日号《ヘッドライン》

[CSD]2010年8月15日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎戦犯108人解放へ導いた犠牲的行為——『ジョナサン・正武・藤田追悼集』に戦争秘話
★日韓台青少年が国際交流——「ジョイジョイキャンプコリア」韓国で開催

 = 2 面 ニュース =
★人権闘争貫く「生きること」——故 崔昌華牧師の足跡たどる企画展21日まで開催
◎共通認識こそ和解の基本——併合100年 日韓知識人ら千人が共同声明に署名
★NCC教育部:「平和のきずな献金」募る
★アルゼンチン:中南米初の同性愛婚合法化
★中国:バチカンは今も中国政府と綱引き——香港の枢機卿語る
★<落ち穂>留岡幸助の生涯描く映画「大地の詩」

 = 3 面 教界ニュース =
★<竜馬をめぐる人々>[18]西郷隆盛の章:7——龍馬が観察したキリスト教?
◎性的虐待受けた子らの苦しみと向き合う——子どもたちと弁護士によるお芝居「雨の記憶」
★<オピニオン>「韓国併合」から100年の敗戦の日 記・根田祥一

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★澤田 猛さん[下]([株]竹中工務店東京本社設計部副部長)——「未完成」をキーワードに 記・清水茂則
★<働く人の境界線>[10]内的力を蓄え「資産」を増やす 記・中村佐知

 = 5 面 牧会/神学/社会=
★日本人キリスト者の見た「日韓併合」[4]韓国独立より国益優先を批判した柏木義円 記・山口 陽一
★ロシア:倫理問題でローマ教皇に同庁——ロシア正教キリル総主教
★<精神障害と教会>[79]多剤多量(2) 「自分の助け方」を見つけよう 記・向谷地 生良
 = 6・7 面 特集=
★過去から繋がる今の戦争、平和とは——日韓中の青年座談会

 = 8 面 全面広告=
☆日本福音聖書学校

 = 9 面 情報=
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★BOOK:『希望とは何ですか』平野耕一著(いのちのことば社、1,050円税込)
★BOOK:『聖句を道しるべとして』著(日本キリスト教団出版局、1,260円税込)
★BOOK:『改訂新版 雪ノ下カテキズム』加藤常昭著(教文館、3,465円税込)
★REVIEW:『札幌宣言 21世紀における教会のチャレンジ』第5回日本伝道会議宣言文起草プロジェクト編(1,470円税込)評・倉沢正則

 = 10 面 関西だより =
★響けゴスペル大仏殿に——30日に「ゴスペルプレイズin東大寺」
★JIFH:大阪で出発記念会——「ハンガーゼロ」へ取り組み
★<集会案内>KAVACO、OCC

 = 11 面 クリスチャンライフ =
★コソボの傷を癒し和解の架け橋に——一時帰国中の日本人宣教師・小野寺ふみさん
★MOVIE:「トイレット」——「家族」って何だろう(8月28日より新宿ピカデリーほか全国ロードショー)

 = 12 面 ひと=
★吉野信嗣さん(鍼灸師、ヴァイマール代表)——突然の解雇から父親と同業の道へ転身




◎戦犯108人解放へ導いた犠牲的行為−−『ジョナサン・正武・藤田追悼集』に戦争秘話=10081501

 第二次世界大戦中、一人のクリスチャン日本軍属が憲兵に捕まったフィリピン人を助けた。これが後にモンテンルパ日本人収容所にいた日本人戦犯の・奇跡の解放・へとつながっていった──日本が敗戦65周年を迎える今夏、『信仰と希望と愛 ジョナサン・正武・藤田牧師追悼集 』(雨宮剛、中条石、高橋玲二編)が出版された。本書では、藤田牧師を知る人々の証言をもとに、戦時下での藤田氏の犠牲的行為を紹介している。

 1942年、日本軍マニラ占領下でのこと。フィリピンYMCA総主事だったドミンゴ・C・バスカラ氏は、YMCA存続のため行っていた募金活動が日本軍条例違反だとして憲兵に連行された。
 だが当時、宗教宣撫班員だった藤田氏は、「これを許可したのは私だ」と虚偽の証言をした。藤田氏は、日本では東京YMCAの主事だった。バスカラ氏は釈放され、藤田氏は軍事裁判にかけられることになった。
 この体験は敗戦後、バスカラ氏を日本人戦犯の助命運動へと導く。キリスト教教誨師として、モンテンルパ日本人収容所の日本人戦犯を訪問していたある日、一人の日本人女性から「獄中にいる夫の釈放に助力してほしい」と頼まれた。調査のため女性の夫を直接面接し、関係者の証言を確認するうち、日本軍が軍民区別なく殺害し、略奪、強姦などの残虐行為を行ったとされるケソン大虐殺(45年)に直接関わっていないことが判明。時のエルピディオ・キリノ大統領に謁見して赦免嘆願を取り次いだところ、彼は釈放された。また、バスカラ氏をリーダーとするフィリピンYMCAが日本人戦犯の釈放の減刑運動に立ち上がった。
 まだ、戦争の傷痕が残る1953年、キリノ大統領は日本人戦犯全員を赦免する特赦令に署名。モンテンルパ日本人収容所に収容されていた108人の死刑囚と未決囚が解放された。日本軍により妻と3人の子どもを殺されたキリノ大統領の心を動かしたのは、「フィリピンはアジアで唯一のキリスト教国。キリスト者の憐れみにより、犯罪者を赦すことができないだろうか」と訴えたバスカラ氏の呼びかけだった。「私にこのような和解の業をさせたのは、苦しみの時に私を救ってくれたあの藤田中尉の愛の業への返礼だった」と、バスカラ氏は回想する。
 77年11月、第1回日本YMCA全国大会の基調講演者として来日したバスカラ氏は東京・神田の東京YMCA会館で、当時、米ロサンゼルス・センテナリー合同メソジスト教会の牧師だった藤田氏と34年ぶりの再会を果たした。
 藤田氏は、虚偽証言後のことは多くを語っていない。ただ殴打や蹴り、つるし上げ、鞭打ちなど、憲兵隊本部であらゆる拷問を受けたことは確かだと、当時を知る人々は言う。実際に藤田氏は44年、英語力を買われ海軍情報部にいた時、「(日本は)勝つ見込みはない」と発言したことで憲兵隊本部で拷問を受け、殴られた後遺症で前歯を全部失っている。
 ジョージ・W・ギッシュ氏(青山学院大学名誉教授)は「戦争というあの狂気の時代にこんな牧師が存在したこと自体が、今後日本と世界を考えていくにあたって希望を与えてくれる」と感想を寄せる。
 編集責任者の雨宮剛氏は「先生は徹頭徹尾、常に弱き者、貧しき者、失われた者の側に立つ牧師であった。藤田氏の犠牲的行為を、歴史に埋もれてしまう一歩手前で残すことができた」と語る。
 本書の問い合わせはTel.048・882・6196、中条まで。

◎共通認識こそ和解の基本−−併合100年 日韓知識人ら千人が共同声明に署名 =1008150202

 1910年8月29日に日本が韓国を併合してから今年で100年となることを受け、7月28日、日韓知識人千人が学士会館(東京都千代田区)で「『韓国併合』100年 日韓知識人共同声明」を発表、署名した。
 声明では、韓国併合の過程や「韓国併合条約」をどのように考えるべきか、日韓両国の政府と国民が共同の認識を確認することが重要だとし、この問題こそが両民族間の歴史問題の核心であり、和解と協力のための基本、と前置き。1875年の「江華島事件」から1910年「韓国併合」までの歴史を回顧し、同時に同年8月22日の併合条約に見られる、「平等な両者の自発的な合意」によって併合がなされたという「神話」に言及。「韓国併合にいたる過程が不義不当であると同様に、韓国併合条約も不義不当である」と指摘した。
 95年の「村山総理談話」、98年「日韓共同宣言」など、日本でも植民地支配に関する認識は前進してきており、「侵略と併合、植民地支配の歴史を根本的に反省する時がきている」。共通の歴史認識に立つことで、日韓の歴史に由来する多くの問題を問い直し、共同の努力によって解決していくことができるだろう、として、「対立する問題は、…解決を図らねばならない。このようにすることによって、韓国と日本の間に、真の和解と友好に基づいた新しい100年を切り開くことができる。私たちは、この趣意を韓日両国の政府と国民に広く知らせ、これを厳粛に受け止める」よう訴えた。
 当日は、作家、映画監督、ジャーナリスト、大学教授、社会活動家、牧師、司教など、様々な立場から日本側537人、韓国側587人が署名した。

◎性的虐待受けた子らの苦しみと向き合う−−子どもたちと弁護士によるお芝居「雨の記憶」=1008150

 少年非行や学校でのいじめ、家庭内での児童虐待など傷つく子どもたちをテーマに、その実情や少年法をめぐる問題を知ってもらおうと、東京弁護士会の弁護士たちが十代の子どもたちと共に手作りで開催してきたお芝居「もがれた翼」が、今年も8月21日、東京・池袋の豊島公会堂で上演される。17作目になる今回の「雨の記憶」では性的虐待をテーマに、被害を受けた子どもたちの苦しみや、一緒に事実と向き合い戦おうとする大人たちの姿を描く。物語は、弁護士たちが関わった実際の事件を題材に脚色。性的虐待が子どもたちにどれほど深刻なダメージを与えるのか、傷ついた子どもたちに周囲の大人は何ができるのかを問いかける。
 01年に上演した第9作では、行き場を失って犯罪に巻き込まれる子どもたちを援助する民間のシェルターの必要をテーマにしたところ、児童福祉の現場や市民から広く賛同の声が寄せられ、舞台で描かれた夢の施設「カリヨン子どもセンター」が社会福祉法人として実現した。初回からの中心メンバーで脚本を書いてきた弁護士の坪井節子さん(日基教団・弓町本郷教会員)が理事長に就任、その間のいきさつはいのちのことば社刊の著書『子どもたちに寄り添う』に詳しい。坪井さんの夢は娘で同センター事務局長の花梨さんに継がれ、近作では花梨さんが脚本を書いている。
 「雨の記憶」は援助交際で補導された高校生の亜美が主人公。家裁から少年鑑別所に送られ、付添人の狭山弁護士に出会う。「フーゾクだってキャバクラだってあるのに援助交際の何が悪いの」と反発する亜美。だが狭山が「本当にそれでいいと思っているの。あなたはお金では買えないかけがえのない存在。両親がどれほど心配しているか」と諭すうちに、亜美が父親から性的虐待を受けていたことを明かす。保護観察で家に帰されるところを、カリヨン子どもセンターの援助で立ち直っていく軌跡を、怒りと悲しみの間を揺れる「亜美の心の声」と共にたどる。
 東京弁護士会によると実父や養父による性的虐待は、まだ事態をのみ込めない幼少時に始まり、数年間にわたり被害を受け続けるケースが多い。中学生ぐらいで被害に気づいたときには、心に深刻なダメージを受けている。被害者が自分を責めたり、性に対するイメージや自己評価が低くなる傾向があり、売春などにつながることもあるという。被害が発覚しにくく実数は不明だが、08年度中に児童相談所で対応した件数は千324件。
 また性的虐待は、被害の聴取の過程で二次被害に遭ったり、証言が大人の質問に誘導されて証拠能力を認められないケースもある。このため今回の「雨の記憶」では、被害事実の聞き取りによる子どもたちへの心理的負担をできるだけ軽減しながら正確に事実を把握する「司法面接」の必要性も盛り込んでいる。
 開場は午後4時30分、開演は5時。入場無料・全席自由・予約不要。http://www.toben.or.jp/kodomo/