[CSD]2012年3月18日号《ヘッドライン》

[CSD]2012年3月18日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎震災ボランティア 生活の証しが力に——「東北・希望の祭典」に仮設からも参加者続々
★東北・希望の祭典:新しいスタイル+変わらぬ大衆伝道

 = 2 面 ニュース/東日本大震災から1年=
★強い「講」の結束 震災で解散も——支援諸団体「南三陸町の文化と風土」学ぶ
◎東北ヘルプ:「心の痛みへの配慮」に注力——実践宗教学で医療と連帯も
★<落ち穂>信仰復興の分岐点ともなる3・11

 = 3 面 =
★<いのちへのまなざし>[3]持ち味は賜物 記・柏木哲夫
★<オピニオン>「3・11大震災」あれから1年(後編)——被災地から全国へ 記・森谷正志
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4 面 全面広告=
☆50th 首都圏イースターのつどい
4月15日(日)15:30~17:00 会場:淀橋教会

 = 5 面 神学/震災 =
★キリスト者は震災の問題をどのようにとらえたらよいのか——聖書と神学から考える? 記・中澤啓介

 = 6 面 全面広告 =
☆奥山実 宣教50周年記念事業 リバイバルに備えて
2012年3月23日(金)午後2時~8時 会場:淀橋教会
TEl.090-7079-5011(ツボイ)

 = 7 面 伝道・牧会を考える =
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>[3]神の家族・アガペチャペル土岐?——神様は誰でも用いてくださる
★ケープタウン決意表明(20)パート?解説——私たちが仕える世のために(3)

 = 8 面 ひと =
◎鈴木雅明さん(バッハ・コレギウム・ジャパン)——被災の痛みを慰め励ますバッハ



◎震災ボランティア 生活の証しが力に−−「東北・希望の祭典」に仮設からも参加者続々=12031801

 世界的に活躍する米国の伝道者フランクリン・グラハム氏(ビリー・グラハム伝道協会総裁、サマリタンズ・パース総裁)を講師に迎えた「東北・希望の祭典」が3月2日(金)から4日(日)、宮城県利府町の会場グランディ21で開催された。初日は昼頃から雪が降りしきる中、夜6時からの集会にもかかわらず約千630人が参加。天候が回復した2日目、土曜日午後4時からの集会には各地から参加者が続々と詰めかけて4千780人、最終日には5千310人と日増しに膨らんだ。

 本心を表すことが苦手だと言われる東北人の気質。しかも、心に大きな傷を負った東日本大震災からまだ1年。大会場で信仰決心者を前に招くような米国式の大衆伝道が通用するのか?…誰もが抱く懸念を、仙台圏の協力教会の牧師たちも感じていた、と実行委員長の田中敬康氏(インマヌエル仙台キリスト教会牧師)は言う。だがフランクリン・グラハム氏は、東北の被災地だからといってその点で特段の変更をすることはしなかった。
 それは、「キリストが公に人々の前で辱めを受け、十字架にかけられて罪を贖って下さったゆえに、人々も罪を悔い改めキリストを受け入れることを公に言い表す必要があるから」……父から引き継いだ、信仰決断の「招き」のスタイルを、息子は忠実に踏襲した。「今、罪を悔い改めてイエスさまを心にお迎えする方は、立ち上がって前に進み出て下さい」。フランクリン・グラハム氏の招きに応じて、7千人収容の巨大アリーナに設営された講壇前に、次々と救いを求める人々が進み出る光景に、実行委員たちは喜びつつも驚きを隠せなかった。3日間で決心者の合計は299人。そのうち7割以上が救いの決心だ。
 田中氏は「人の目を気にする東北で、大勢の人の前で立ち上がり、前に進み出て自分の信仰の決断を言い表すことなど普通では考えられない。10年住んでもよそ者扱いで、なかなか心を開くのは難しい。震災以来1年間、サマリタンズ・パースをはじめ様々な団体を通して送られたクリスチャンのボランティアたちの真実な生活の証しを通して、1年という短期間に信頼を得たことがこの結果につながった」と話す。
 サマリタンズ・パースは3・11大震災直後から被災地入りし、94トンの緊急援助物資をいち早く送り込んだのをはじめ、被災各地に拠点や物資倉庫を設置。海外・国内からのスタッフ合わせて100人、参加ボランティア延べ4千700人を投じて、家屋のドロ出しや400軒余りの家屋修繕、1万8千世帯への支援物資配布にあたってきた。今大会では、そうした活動をしてきた沿岸部や各地の仮設住宅からもバスで輸送するプロジェクトを実施し、3日間で約2千人が参加登録した。
 その人々を念頭に、グラハム氏は「1年前この地域に来て愛する人々を失った人たちと話しました。震災から1年を迎え、心の中に悲しみを覚えている方も多いでしょう。私たちは皆さんと共に嘆いています」と心を添わせた。だが同時に「1年たって過去を振り返るでしょうが未来を見たいのです。聖書は、神様がいのちを与えると言っています」と、ストレートに神の創造と人間の堕落、救いの希望を語った。
 同大会は東北全県の7会場にも衛星中継され3日間で延べ884人が参加、54人の決心者を得た。

◎東北ヘルプ:「心の痛みへの配慮」に注力−−実践宗教学で医療と連帯も=1203180202

 仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク(東北ヘルプ)は昨年震災後、3月18日に仙台市周辺地域の牧師らによって設立された。9月からは事務局を財団法人化し、復興支援団体や教会のネットワークを後方支援する体制を整え、外国人被災者支援、仮設住宅支援、食品放射能測定、心のケア、津波被災地復興、古文書保存、支援団体間の連絡調整など多岐にわたるプロジェクトを実施している。
 事務局の川上直哉氏は今後の展望について、第一に「被災者のスピリチュアル・ペイン(心の痛み)への配慮が重要」だとする。展望のない仮設住宅の暮らし、移住者も、生活の見通しがないなどで気持ちが落ち込み、自殺者が増えている現状がある。「1周年ということで様々なイベントがあるが、区切りをつけてやって忘れてしまいたいという気持ちはないか。記念イベントが次にちゃんとつながるように気をつけないといけない」と注意する。
 地元大学と協力して「実践宗教学」講座を開く計画がある。「医者、牧師、僧侶などそれぞれ個人プレーでやっているので、枠組みをつくれるといい」という課題があった。祈りはどう機能するか、スピリチュアルケアは何を目的とするかなどを学び、傾聴、放射能計測所、在宅医療の現場で医者と宗教者が一緒に実習する。この成果を各方面に報告し、学会で資格認定の設立を目指す。
 「牧師が看取りの技術を磨くことも大切」とする。高齢化で、20年後には年間の死者が70万人以上増える予想だ。原発事故による放射線の人体への影響が数年後現れ、寿命が縮む可能性もある。
 12月に開設した食品放射能計測所は口コミで尿、母乳などの検査依頼があり実施した。防音、内装を充実し、安心できる工夫をし、ホームページで広く受け付ける。各地の民間計測所とも協力する。
 外国人被災支援センターを東北ヘルプ内につくる。特に農家の外国人妻の孤立に取り組む。長く住む外国人を雇い、調査し、新来者を助ける。外国語学校と協力し、夫とともに外国語、コミュニケーションを学べる講座を無料で提供する計画もある。大崎市の教会を会場に実践し、教案を作成、国際結婚の斡旋業者に紹介し事業化する。
 集まった義援金約7千万円はほぼ配分が終了した。一次見舞い金として申請したすべての教会に配分、必要性が高い教会への再建費、ネットワークの活動費、信徒の人的被害、大規模半壊があった各教会に配分した。今後は残金にイースター募金を呼びかけて加え、1千万円を一定の原発被害があった教会に配分する計画だ。
 東北3県や各地のネットワークを集めてつなぐ準備もする。原発の問題でも協力する。「顔の見える支援」を目指す姉妹教会プロジェクト(担当理事・三枝千洋氏)は検討中も含め、7組できた。週報交換、講壇交換や信徒の訪問など関係を築く。
 別働隊として若林ヘルプがある。仙台市若林区の仮設住宅一角に基地を持ち、ボランティア斡旋、教育サポート、弁当を生活困窮者に廉価で提供するなどをしている。
 若林ヘルプとの関係が東北ヘルプのあり方のモデルだ。「出先から情報を集め、事務局で企画し、さらに大きな支援にしていく。経費を出し、報告を求める以外は現場裁量で動いてもらう。あちこちで若林ヘルプのような出先をつくり、情報を集められたらと思います」

◎鈴木雅明さん(バッハ・コレギウム・ジャパン)−−被災の痛みを慰め励ますバッハ=1203180801

 古楽器による小編成のオーケストラと合唱団バッハ・コレギウム・ジャパンが、東日本大震災から1年を期して、犠牲者への追悼と復興の祈りを込めたチャリティCD「Bach for Japan」(BIS-CD-2011)をリリース。3月23日には東京の調布市グリーンホール大ホールでチャリティコンサートを開く。音楽監督の鈴木雅明さんは、物質的な復興が進むにつれて、被災者の心は取り残され、孤独になっていき、隣人の来訪を求める気持ちが日増しに強まっていると聞き、バッハの音楽をとおして「いま私たちにできる『心の訪問』を」と願っている。

 「Bach for Japan」に鈴木さんは特別な意図を込めた。昨年3月11日に起こった大震災とそれに伴う津波は、直接被災した地域の人々のみではなく、日本という国を根こそぎ変えてしまったと言っても過言ではない、とこのCDのブックレットに書いている。
「この津波によって引き起こされた福島原子力発電所の事故とその後の処理をめぐる問題は、私たちの命と現実の生活を脅かし、さらに政治的経済的な様々な駆け引きの中で、私たちの心は乱れ、底知れぬ奈落に突き落とされました」

チャリティCD、演奏会で
少しでも安らぎと希望の光を
 そうした中にあって、「演奏家にできることは、心から演奏し、人々の心に訴えること」。バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)は震災直後のアメリカ公演に始まり、4月から「BCJ震災義援プロジェクト」を立ち上げ募金活動をしてきた。これまで集まった約470万円を、仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク(東北ヘルプ)の活動にささげている。
 「J・S・バッハの音楽は、18世紀のみならず21世紀の現代においても、大きな慰めと励ましを与えてくれることを、私たちは実感してきました。そこで今、震災で亡くなった数え切れないほど多くの犠牲者を悼み、大きな喪失感の中にある被災した方々に寄り添い、心の傷が少しでも癒されるように、さらに、この国を次世代へ受け継ぐことができるような活力を得られるようにと、そのような思いをもって、このCDを制作しました」 
 過去の録音からバッハの「教会カンタータ」のふさわしいアリアと器楽曲を選び、鈴木さんが演奏するオルガンソロの新録音3曲を加えた。そこに、死に瀕し不安におののく弱い人間の姿(BWV156第2曲、105第3曲)、天国への希望(BWV106第3曲)、魂の安らぎと慰め(BWV127第3曲)、苦難にもめげず続けられる祈りと瞑想(BWV115第4曲、641)、神の摂理と成就とイエス・キリストへの希求(BWV159第4曲、639、727)といったメッセージを託す。
 静かな優しさがにじむ曲想、透明感の中に柔らかな光を感じさせる演奏だ。「これらの音楽によって、思い乱れる心に、たとえ一瞬でも、安らぎと希望の光がさせば、それに優る喜びはありません」

礼拝音楽「教会カンタータ」
全曲の演奏・録音が完結へ
 「教会カンタータ」は、自分の作品をただ神の栄光のみにささげたバッハが、教会の毎週の礼拝のために、聖書の日課に合わせて作曲した。BCJは95年から東京・神戸の定期演奏会で、その約200曲ある「教会カンタータ」を概ね年代順に演奏・録音してきた。そして遂に、この2012年度(最終回13年2月)で全曲の演奏が完結。世界でまだ数人しか成し遂げていない偉業が達成される。
 BCJの定期演奏会では93年から、受難週にバッハの受難曲を演奏する。今年度は東京オペラシティで4月6日の聖金曜日にマタイ受難曲を皮切りに、13年3月29日の聖金曜日にヨハネ受難曲で閉じる。日本でバッハを極め続ける鈴木さんもまた、苦難を通して希望を与えた方の光を映している。
 ▼バッハ・コレギウム・ジャパン東日本大震災チャリティコンサートは3月23日(金)7時、調布市グリーンホールで。チケットはS5,500円、A4,000円。Tel.03・3226・5333(平日10~18時)。