[CSD]2013年3月17日号《ヘッドライン》

[CSD]2013年3月17日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎農地・市場再生とともに歩む復興支援——悲嘆から「前向き」へ

 = 2 面 ニュース=
★仙台地裁:藤本光悦(仙台ラブリ元牧師)に賠償命令——パワハラの事実を認定
★未受洗者陪餐で免職の是非 高裁へ——東京地裁 北村慈郎牧師の訴えを却下
★世俗法への訴えは暴挙——石橋秀雄日本基督教団議長のコメント
★<落ち穂>「八重の桜」 兄の覚馬が見いだした光明とは

 = 3 面 =
★<いのちへのまなざし>[48]気づきと行動 記・柏木哲夫
★アンテオケ宣教会:安海靖郎総主事 3月末で引退へ——4月以降は主事会体制へ
★<オピニオン>震災から2年 フクシマからの発信 記・木田恵嗣
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4 面 特集=
★ソウルで第2回アジア日本語ファミリーキャンプ——無牧問題に信徒牧会者の育成を提言
★シンポジウム「ヘンリ・ナウエンに学ぶ苦しみと希望」——傷ついた主を想起させる牧師

 = 5—7 面 東日本大震災から2年/支援と宣教 =
★宮城県亘理郡:地域に求められる拠点——「神様はどれだけ山元町を愛しているんだろう」
◎支援と東北の開拓拠点——長老教会・東北伝道所を開設
★愛の業により伝える——福音自由・石巻宣教ミニストリー設立
★復興・地域貢献で見える福音を——「良き業・宣教共同体」発足

 = 8 面 東日本大震災から2年/福島 =
★「忘れられることが一番怖い」——福島のあの字あの時伝える本出版
★放射能対策に安心して移動できる小型バスを——米国キリスト教系NGO団体が教会付属幼稚園に寄贈
★震災関連の集会・番組情報

 = 9 面 東日本大震災から2年/防災=
◎東京・中央区月島で防災セミナー——準備しっかり 共助で減災
★災害対応チャプレン養成始まる——「知ってれば燃え尽きなかった」

 = 10 面 仕事と信仰=
★坂井田稲之さん(日本プロモーショナル・マーケティング協会専務理事)[下]——あれこれ欲張らず一点に集中
★<首都圏大震災に備える>[7]下敷きになった人を助けるのは「あなた」 記・栗原一芳

 = 11 面 伝道・牧会を考える=
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>?[42]保守バプ・盛岡聖書バプテスト教会?——活動目的を明確にし教会が一つに
★<神の宣教>神のことばを神の世界へ[21]—— クリストファー・ライト講演抄録

 = 12 面 ひと・証し=
★牛山 泉さん(足利工業大学学長)——風力発電が日本、世界を救う




◎農地・市場再生とともに歩む復興支援−−悲嘆から「前向き」へ=1303170101

 東日本大震災から2年が経過した。宮城県仙台市から南へ福島県に接する仙南地域は沿岸部で甚大な被害があったが、県北部沿岸部に比べ注目されることが少なかった。だが単立・亘理聖書キリスト教会(熊田康之牧師)を始め、教会がなかった地域にキリスト教の支援拠点が築かれ、地域の励ましとなっている(関連記事、東日本大震災特集は5~9面)。岩沼市ではウェスレアン・ホーリネス教団による宮城県南部の復興支援活動「MSR+」(宮城南部復興支援ボランティア)が農業支援によって、地域の必要に応えながら、復興のために活動している。

 仙台市から南に10キロほどの岩沼市。津波の被害を大きく分けた仙台東部道路を越えると、乾いた田んぼが広がる。点在する集落にある民家がウェスレアン・ホーリネス教団による「MSR+」の岩沼センターだ。
 震災後の津波で田んぼ一帯はヘドロで覆われた。岩沼センターとなった民家も床下浸水。近隣の農家は土壌汚染のみならず、家屋、倉庫、農業機械に甚大な被害があり、農業再開を断念した人もいる。震災後、田畑の用水路・排水路には瓦礫が入り、水たまりから蚊やハエが発生。海水が濃縮された生臭い悪臭が立ちこめた。だが報道が目立った県北・三陸地方に比べると復旧支援は遅れた。
 ところが同教団が微生物の力で臭いを分解するEM(エフェクティブ・マイクロオーガニズムス)を使った消臭、土壌改良支援を実施し、地域の状況が改善した。
 地域の農家、岡崎知恵子さんは家屋が床上浸水。農業機械は壊れ、大型ハウス2棟が倒壊、農地をヘドロが覆った。ショックでついさっきまで考えていたことを忘れたり、言葉が耳に入らない状態だった。
 だが同教団ボランティアの支援やプレゼントされたCDに励まされた。「見せかけや形だけの支援ではなく、心から見返りを求めずやっている」と感動した。「津波でたくさんのものを失ったが、津波以上のものを得た。何も考えられなかったが、前向きになれました」
 当初、同教団淀橋教会の被災地支援活動「アガペーCGN」は気仙沼市を支援していた。同教団復興支援委員会委員長の小寺隆さん(九十九里みぎわ伝道所牧師)は、そこで足利英紀さん(理想産業有限会社代表取締役、バプ同盟・日本バプテスト気仙沼教会員)と出会う。足利さんはEMの実践者で、震災後の復旧で活躍した。
 県南部に支援の必要があることを知り、岩沼の民家を拠点として借りた。6月から亘理町、山元町、岩沼市の被災家屋600軒以上の軒下や床下へEM活性液を散布した。10月からはEM塩害のあった田畑にも散布した。
 9月末には海外宣教から帰国した木内一夫・美香子牧師夫妻が常駐。12年からは山形南部教会信徒の小寺義さんが市の農政課の臨時職員をしながら常駐を引き継いだ。
 月1回様々な教会の協力でボランティアとして活動し、毎回初日には岩沼センターで礼拝をする。今年は月1回の聖日礼拝も検討している。
 昨年の大きな活動は岡崎さんが取り組んでいた野菜直販所「あさどり市場」の再建だった。同教団や様々な教会のボランティアにより、木造テラスつきの売り場、倉庫、研修所ができた。岡崎さんは「採れたての野菜とピザを焼けるピザ釜も作る。広いスペースにテントを張ってキャンプもできる。ヤギ、ポニーも飼いたい。楽しい夢がどんどん広がる」と喜ぶ。
 誰でも楽しんでもらえる施設にすることが目的だ。隣接する元ビニールハウス畑は市民農園として92区画を無料提供する。「都市のお母さんたちに提供して本当の野菜の味を知ってもらいたい」という思いがある。この土地は塩害でコンクリートのように堅くなっていたが、何度もEM散布をすることで復活した。
 仮設住宅の支援もしている。三浦綾子読書会の協力で芝居や講演会をしたり、餅つき大会を開いたりした。小寺さんは「物は揃っても人の心がついていかず、落ち込んでいる人も多い。精神的な面で支援したい」と考える。岡崎さんとも協力し仮設住宅の住民にプランターに植えた花を渡す。「もともと農家の人が多い。土いじりや育てることは癒しにいい」と思いやる。

◎支援と東北の開拓拠点−−長老教会・東北伝道所を開設=1303170601

 日本長老教会(渡辺晴山大会議長)は、2012年11月の大会会議で「東北宣教推進委員会」を発足させ、木村大介牧師を派遣した。今まで東北地方に日本長老教会の教会は無かったが、10~15年間に3教会が与えられ、東北中会が設立されることを目指している。
 木村牧師の家族は12年8月に東京から仙台市中心部に移り、いち早く宣教協力を申し出たケント・ミューリン宣教師一家、音楽伝道をおこなっている高奈秀匡・美香夫妻に加え、複数の人たちと行動を共にしている。日曜日に周辺の教会で礼拝し、午後に交わりと祈りの時を持つ。
 木村牧師は震災直後、日本長老教会の大会総務として震災に対応。日本長老教会有志の支援組織HELP東北(現「グレースミッション東北」)に参加し、石巻支援に関わる中で福音宣教の必要性が明確にされていった。
 支援当初から「伝道の働きが必要だ」という声もあったが、木村牧師は「すでに被災地には教会がある。支援と伝道を安易に結びつけるのではなく、クリスチャン、人間として助け合うべき」と慎重だった。
 だが被災者の苦しみ、悲痛な叫び、死の恐怖などを知るにつれ、「一般のカウンセリングやイベントではとても扱えない。いのちの問題が根本的に問われている。明確に答えを示すのが福音を担う教会の働きではないか」と考えた。
 沿岸支援だけではなく仙台市中心部でも病む人、悩む人など福音を必要とする人たちに出会い必要を感じている。
 「大きな地震があった際、マンション住民が声をかけあうなど、互いに助け合う雰囲気があった。子どもが通う小学校の学芸会で、父親を亡くした子の作文が紹介され、皆涙する雰囲気に、ここも被災地なのだと実感しました」
 仙台圏の教会を回り、交わりを持つ。超教派ネットワークや牧師会にも参加。被災地の教会の実情、働き、宣教のニードを学びつつ、既存の教会と協力して被災地支援にも加わりながらどのような宣教ができるのかを模索している。

◎東京・中央区月島で防災セミナー−−準備しっかり 共助で減災=1303170901

 高層マンションが立ち並ぶ東京・中央区月島。隅田川河口を埋め立ててできた人工島で、東京湾がすぐ目の前のこのあたりは、海抜が2メートル前後で地盤も軟弱なことから、首都直下型地震が起きたら津波や液状化などの被害に遭いやすい地域だ。3・11後、首都圏でも地震に対する危機感が高まりつつある中、佃・月島の住民を対象に、キリスト教災害支援団体クラッシュジャパン次期東京災害対策担当の栗原一芳さんを招いての防災セミナー(brave action主催)が行われた。

 栗原さんは、?国はマグニチュード7レベルの首都直下地震の発生確率を30年以内に70%と想定、?東海、東南海、南海トラフ地震が三連動し、広い範囲に被害が及ぶ可能性がある、?大地震に伴い富士山が噴火する恐れがある、?浜岡原発は東海地震の震源域のただ中にあり、地震が起きた場合原発事故が起き、風下にある東京にも8時間で放射能が届くなど、今後起こるであろう事態を想定。「専門家によると東日本大震災は終わりではなく始まり。いつ大地震が起きてもおかしくない」と警告した。
 特に首都圏直下型地震は、東日本大震災のような海溝型でなく、阪神淡路大震災のような倒壊、火災を中心とする被害が想定され、東京都の予測では?東京駅で14万人、渋谷駅で10万人、新宿駅で9万人の帰宅難民が発生する、?非常に多くの高層難民が生まれる、?山手線と環状7号線の間は木造家屋密集地帯で、火災が起きると火の海になり歩いて帰れない、?81万人がトイレに行けなくなるという。「被害想定は単純に見て阪神淡路大震災の7倍。政治、経済、情報の中心地である東京で震度7の大地震が起きたら、大変な事態が起きます」
 しかし、「南海トラフ地震の場合、防災、避難により死者を6万人に減らせるとある。防災・避難の準備をしっかりすれば、減災ができる」と強調。対策として?耐震補強工事や家具にストッパーを止めるなどの補強、?一人最低3日分の食料と水を備蓄、?通電火災を防ぐため外出時は必ずブレーカーを落とす、?重い物は下に置き、オフィスではプリンターなどから離れる、?避難経路を確認し、地震が起きた時に机の下に隠れられるよう下に荷物を置かない、?寝る時、ガラスの破片の上を歩けるようスリッパを、情報収集のため携帯ラジオを枕元に置き、緊急持ち出しバッグを用意しておく、?荷物の下敷きになっても居場所が分かるよう笛を携帯する、などを挙げた。
 日頃から隣近所と関わり、親しくしておくことも強調。「阪神淡路大震災の時、自力で助かった人(自助)は2割、隣近所に人に助けてもらった人(共助)は7割、行政機関による救出活動(公助)で1割だった。いかに共助が大切かがわかる。どうか、人を助けるためにぜひ自分が助かってください」と結んだ。
 今回の防災セミナーは、東北被災地支援活動に関わっている佃在住の渡部美穂さん(主催者代表)の呼びかけで開かれた。渡部さんはクリスチャンではないが、被災地で熱心に救援活動に動いているクリスチャンたちの姿に感銘を受け、クリスチャンに厚い信頼を寄せる。今回の開催も、晴海で開かれた防災セミナーで栗原さんの話を聞いたのがきっかけだった。「そのお話が本当にすばらしかったので、ぜひ佃・月島地域でもと思い、防災担当者および意識の高い方々に声をかけました」
 渡部さんは「これを機に防災のための有効な対策づくりをし、実践に移していきたい」と願う。
 教会に防災の必要を訴えている栗原さんは、「クリスチャンが震災前からコミュニティで奉仕できれば、もっと信頼が築けるのでは。高齢者、障害者の防災をお助けする防災ボランティアも必要ではないかと考えています」と語った。
 防災セミナーの問い合わせはTel:050・1213・1388、クラッシュジャパンまで。