2000年5月7日号《ヘッドライン》

2000年5月7日号
《ヘッドライン》
 = 1面 =
◎韓国元老牧師12人の証言集「日韓の歴史のはざまにて」——日韓両国語で刊行
★「韓国民の良心」韓景職氏(ソウル永楽教会元老牧師)98歳で逝去
◎有珠山救援活動:避難所で祝ったイースター
★<いやしの時代>[3]アフリカで和解をつくる宣教師 石川博之さん(下)
★<落穂抄>99%の人々への伝道を
 = 2 面 =
★韓景職牧師を偲んで 記・吉田耕三
★日の丸・君が代強制反対市民ネット:卒業式・入学式を総括
◎日本を祈る情報源「オペレーション・ジャパン」改訂
★バプ同盟:紙芝居で「戦争責任」内実化
★カトリック正義と平和協議会が平和メッセージを発表
★<教界の動き>シオン・キリスト蒲田教会、十字式健康普及会
★<世界の出来事フラッシュ>米国、英国
◎<論説>社会に神の国の価値を 記・稲垣 久和
★<あかし文学・ろばの子の歌>[2]ガン宣告…真子救援ネットの誕生 作・今村真子・和彦
 = 3 面 =
★「共に守る礼拝」研究15年の歩み 記・大島 果織
★ウガンダ終末カルトの教義的背景——前政権の大量虐殺も一因か
★ルワンダで終末カルト?を逮捕
 = 4 面 全面広告=
☆第18回 世界教会成長大会(10月11日~12日)、会場:横浜アリーナ
 = 5 面 =
★日本福音教会(JEC)オレブロミション50周年
 = 6面 =
★歴史は繰り返す——没後40年矢内原の危惧の今日性 記・今村 直
★広がるビジネスマン伝道——地域や職域でのネット
 = 7面 ビジネスマン伝道特集=
★広がるビジネスマン伝道——各地でVIPクラブがスタート
★回心したホームレスがビジネスマンらに証し
★クリスチャン・ビジネス・フォーラム
★帝国ホテルで最初の夕食会開く——VIPクラブ日比谷
★ひと:滝山 博行さん(VIPクラブ日比谷会長)
★ビジネスマン伝道の動き
 = 8 面 日本宣教のパイオニア=
★ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(近江兄弟社創設者)
 = 9 面 =
★ガンと向き合った12年の日々——クリスチャン教師・信田 勇さんの遺稿集
★日本で1台のリードオルガン修復——大正期の名品、礼拝にも復帰
◎<北から南から>バプ連盟・鹿児島教会:釣り教室が大好評
★米国:聖書の言葉使ったサイトでもご用心
★トリニティ大ゴスペルクワイヤー来日
★<召天>鈴木正美氏(音楽家・雅明氏の父)
 = 10 面 =
★<聖書66巻>イザヤ(1)神の業と人の才能を区別する 記・高橋 博
★<書評>「衣替えするキリスト教」有賀 寿著
★<新刊書紹介>「ジョイジョイゲームランド」鈴木正巳著
★<新刊書紹介>「考えながら学ぶキリスト教」久山道彦ほか共著
★<情報クリップ>催し情報ほか      
 

韓国元老牧師12人の証言集「日韓の歴史のはざまにて」−−日韓両国語で刊行

長年牧会伝道に尽くし、高齢になって引退した牧師を韓国では尊敬を込めて「元老牧師」と呼ぶ。
その元老牧師12人の証言集が昨年韓国で出版されたが、このほど日本語でも刊行された。
いずれも日本による植民地支配(1910~1945年)の苦難の中を生き抜いてきた世代である。
その貴重な経験を「牧会行伝」として、まとまった形で次代に伝えようと、韓国元老牧師会事務総長の安載禎牧師が情熱を傾けて編纂した。
いま書き残さなければ、世界宣教史上類を見ない復興の足跡を残した韓国教会の初期の歴史的証言が散逸してしまうという危機感と共に、それをぜひ韓国と日本の両国のかかわりにおいて記録にとどめたいと、両国語での出版となった。
書名は『日韓の歴史のはざまにて——韓国元老牧師たちの証言』。
日本語版はプレイズ出版から刊行された(B5変/424ページ、3500円)。
証言者は幅広い教派にわたっている。
李基豊(1942年殉教、長老)、申錫九(1950年殉教、メソジスト)、朱基徹(1944年殉教、長老)、孫良源(1950年殉教、長老)の4人の殉教者の貴重な記録と、各派を代表する現存の元老牧師8人の証言を収録している。
8人は、韓景職(98)=長老、洪義善(88)=メソジスト、具斗書(87)=バプテスト、金在述(84)=長老、金昌仁(82)=長老、閔泳完(81)=ソウル高麗神学校初代校長、安仲渉(81)=元水原神学校校長、編著者の安載禎(76)=メソジストの各氏。
韓景職氏(永楽教会元老牧師)は、日本語版が出て間もない4月19日に天に召された。
いずれも日本統治時代の神社参拝強要や、迫害に直面。
投獄され殺されたり、朝鮮戦争の中で非業の死を遂げた体験なども、生々しく記されている。
日本人にも在日にも知らせたい 編著者の安氏は前書きで「この元老牧師たちこそ、今日の1300万の聖徒を生み出した震源地…李王朝末期のキリスト教徒大虐殺、日本帝国の弾圧政治と神社参拝強制による天照大神|現人神崇拝への抵抗の結果として投獄・拷問・殉教、そして解放と光復の喜びに続く分断により無神論の共産主義者たちによるキリスト教抹殺の陰謀や、同族が相争う韓国戦争等々から、民族の運命を担って血と汗で茨の道を歩んできた方々が今日の元老牧師たちなのです」と述べている。
そのような歴史の事実を、韓国でも若い世代はあまり知らない。
また、韓国のキリスト教が成長から減少傾向に転じていることが憂慮される昨今、「真実のしもべの道」「忠誠なる牧者像」を取り戻さなければ、前進どころか後退せざるを得ない、と危機感を示す。
「この時期を逃せば、韓国の復興の秘訣、教会成長の要素・聖霊の御業などについて知るすべを失う」日本語版をぜひ出したかったのは、日本人に植民地支配下のクリスチャンの経験を知ってもらいたいという理由のほか、祖国の言葉も歴史も知らない在日同胞の若い世代に読んでほしいということもあった。
日本語版を監修した吉田耕三氏(ソウル日本人教会牧師)は、「本書は私たちに加害者としての自覚と、同じ日本民族としての深刻な認罪の思いに目覚めさせ、悔い改めと執り成しの祭壇にひざまずかしめるでしょう」と述べている。

有珠山救援活動:避難所で祝ったイースター

有珠山噴火災害のため長万部スポーツセンターに避難していた虻田町の馬場静子さん(虻田福音キリスト教会牧師)夫妻は、イースターの4月23日、親類宅に避難していた信徒二人の訪問を受け、避難所で礼拝を共にした。
持ち込んだゆで卵50個でイースターの卵を作って避難所の子どもたちに配り、主の復活を祝った。
同日、馬場さん夫妻は豊浦町高岡の避難所(エイベックス社員寮)に移動した。
整体師でもある夫の俊治さんが、避難所で腰痛や肩こりなどを訴えている人たちに整体のボランティアを行うためだ。
「体が軽くなる」と好評で、これまでに約120人ほどが治療を受けた。
「避難所でぶらぶらしていてもしょうがないと考え、治療のボランティアを始めることにした」と俊治さん。
豊浦町の避難所には現在でも1000人以上が暮らし、治療の希望者も多い。
「疲労は肉体的にも精神的にもたまる。
希望する人がいる限り、治療をしてあげたい」と語る。
俊治さんの整体ボランティアは日刊紙の地方版に載った。
 馬場静子牧師は、近く豊浦の旅館の食堂を借りて虻田教会の信徒と共に礼拝を再開することにしている。
個人で有珠山救援対策本部を立ち上げた北村高史さん(日基教団・馬見労祷教会員)は、馬場静子さんと連絡を取り合い、近くハンドベルを寄贈する。
5月末に馬場夫妻を慰問の予定。
匿名で絵本600冊の献品もあった。
日本福音キリスト教会連合北海道有珠災害対策本部の木村宣雄さん(千歳福音キリスト教会牧師)を通し、聖書福音・伊達福音教会(五十嵐不二夫牧師)と馬場夫妻に渡った。
日本国際飢餓対策機構は「有珠山近辺の避難民に何かできないか」と、五十嵐牧師から避難民の様子や必要を聞いた。
避難所での生活はプライバシーがなく、自分の時間がなかなか持てないことを知り、「プライベートな時間を持つためにCDプレイヤーがあれば」という要望にこたえ、CD69枚、ウォークマン14個を避難所に献品した。
CDは同機構とかかわりのあるクリスチャン・アーティスト、CD制作会社に呼びかけ、それに応じた人たちが無償で献品した。
協力したのは、森祐理さん、上原令子さん、ブレストビート、デイミニストリーほか。
兄弟団・西宮教会はバザー用のCDを30数枚献品。
24日にもCD66枚を現地に発送した。

日本を祈る情報源「オペレーション・ジャパン」改訂

都道府県別に歴史や文化、宣教の課題などの情報をまとめ、日本を覚えて具体的に日々祈ろうという趣旨のハンドブック『オペレーションジャパン』が改訂版を出す。
各国の宣教情報を祈りのために編集し世界中で広く活用されている『オペレーションワールド』の日本版をと、日本福音宣教師団(JEMA)や教会インフォメーションサービス(CIS)などの協力で発刊した初版から3年、新しい情報や訳を加え、書名を『2000年版日本宣教祈りのガイド』とした。
前回の日本語、英語に加え、今回はハングル版も出る。
韓国から日本に来る宣教師の数も年々増加し、日本のことを祈りに覚えようという韓国人も増えた。
その必要にこたえる形でハングル訳の発行となった。
ポルトガル語訳も出したいと願っている。
本文は、人口や教会数などのデータに加え、日本の歴史年表、プロテスタントの宣教歴史も盛り込み、三森春生委員長(CIS理事)が手がけ、英語訳をドン・ライト氏(JEMA)、ハングル訳を趙泳相氏(キャンパス・クルセード)が担当した。
5月末の発行を目指している。
6月に沖縄で開催される第4回日本伝道会議で売り出す予定。
牧師だけではなく一般信徒にも、具体的に日本の各地の状況を祈るためにこの本を用いてほしい、という。
日本語版は600円。
伝道会議では特価500円で発売予定。
問い合わせはオペレーションジャパン出版委員会(教会インフォメーションサービス内)TEL0424・94・2219。

<論説>社会に神の国の価値を 記・稲垣 久和

最近、米国の出版社 アードマンから A Passion for God's Reign というタイトルの本が出た。
ドイツのJ・モルトマン(チュービンゲン大学名誉教授)の論文と、それに対する米国のN・ウオルターストルフ(イエール神学校教授)とE・チャリー(プリンストン神学校教授) の応答論文からなっている。
内容は1996年、モルトマンが米国のフラー神学校に招かれて講演したときのものがもとになっている。
実は、講演の直後にフラー神学校の「神学ジャーナル」にその要約が出て、以前に私はそれを著作の中で紹介したことがある(『大学とキリスト教教育』59ページ、ヨルダン社、1997年)。
今回、本として出版されたのを機にその全文を読んで、改めてここで紹介する価値があると感じた。
ドイツの国立大学の神学部で組織神学を教える意義、その一端がうかがえて大変興味深い。
宗教改革後、西洋の教会は分裂したとはいえ、一つの信仰告白によって統一された国家、という考え方を依然として保持した(アウグスブルク講和、ウエストファリア条約)。
18世紀には、一方において少数者を排除した絶対主義国家、他方にカトリック、プロテスタントの共存を許容したイギリス、オランダ、プロシアのような国家が存在した。
20世紀後半になって、移民の増加とともに、キリスト教内の信仰告白の違いもさることながら、宗教そのものが多元的になってきた。
「教会と国家の分離」の考え方はキリスト教以外の宗教にも適用されねばならない。
当然(国立)大学では特定宗教の神学部は廃止されていく。
そして、国家が宗教的に中立化すれば、今度は諸宗教の方が非政治的にならざるを得なくなる。
また、神学的訓練はキリスト教会自身に帰せられるので、教会が神学校を建て神学はその中だけで営まれるようになり、神学は公共の場としての大学の学問とは無関係になっていく。
第1次世界大戦後のプロテスタント神学の趨勢も、以上のような流れを助長した。
すなわち「神学は教会の働き」のかけ声のもとに、バルト、ブルンナー、ブルトマン、ティリッヒらが輩出し、彼らは「文化的プロテスタンティズム」や「自由主義神学」に対抗したからである。
しかし、神学が大学から撤退し、公共の領域から撤退し、教会立の神学校という信仰共同体の中だけに閉じこもることは、よいことなのであろうか。
多くの西洋諸国において、いまや宗教は個人個人が自由に選択するプライベート(私的)な事柄となってしまっている。
そこでは宗教は消費者が勝手に選ぶサービス産業に成り下がっている。
しかし、宗教は本当に私的な事柄なのであろうか。
確かにそうなのかもしれない。
だが、キリスト教信仰に限っていうならば、決してそうではないのだ。
イエス・キリストは私的な宗教ではなく、神の国を宣教したのである。
イスラエルの貧しい者、病める者のために神の国を宣教し、それゆえにローマ帝国によって、公的に十字架刑に処せられたのである。
ステパノからボンヘッファーに至るまでの殉教者たちは、神の国のために殉教したのだ。
「教会と国家の分離」は、決して宗教が私的になることを意味しない。
教会が国家からの制度的自由をもって神の国を宣べ伝えるように、幼稚園、学校、大学、新聞、テレビなど、教育的、サービス的な組織もまた、社会に神の国の価値を注入するのである。
たとえ、宗教の多元化した社会であっても、教会の務めは人々に福音と信仰と愛とをもたらすことである。
神の国のメッセージは、私人としての個人のみならず、人生の全領域にかかわるという意味で、社会それ自身がそのメッセージを受け取るべきである。
日本人キリスト者はこれになんと応えるか。
大日本帝国憲法(1889年)第28条「安寧秩序を妨げず…」以来、宗教を私的な事柄と考えるのは当然、というのが日本人の大方の意見であろう。
(記・稲垣 久和)

<北から南から>バプ連盟・鹿児島教会:釣り教室が大好評

「桜島が見える錦江湾では、子どもを連れていっても、マダイなども釣れるんですよ」近所のお父さんと釣り教室を始めたのは、日本バプテスト連盟・鹿児島教会牧師の播磨聡さん(35)。
地元のテレビやラジオなどでも紹介され、子どもを募集するとすぐに定員の30人が埋まってしまうほどの反響がある。
始めたのは6年前。
教会学校での行き詰まりを感じているとき、子どもたちとの接点をもちたいと願っている釣り仲間のお父さんと「ボランティアで子どもたちに釣りを教えよう」という話が出た。
教会の主催ではないが、教会堂に釣りざおを置いたり、打ち合わせの会場になったり、教会員のスタッフもいたりと教会も応援している。
「直接伝道することはできないけれども、チラシを配ったり、教会に誘ったりすることができる。
実際にボランティアのお子さんが教会に来てくれたり、バプテスマを受けたりしています」と播磨さんは言う。
また、ボランティアの人とも様々なことについて意見を言い合う機会などもある。
「自分が牧師だということで、大事にしてもらっています。
意見を共有してくれる人も多い」。
教会では保育園も運営しており、ボランティアのお父さんたちとの信頼関係が築かれているのだ。
最近は釣り教室の方向性について議論され始めた。
「子どもたちは自然やいのちを大切にすることは学ぶ。
でも、ただの子どもの自己満足で終わらせてはいないか。
本当に伝えたいこと、例えば、人に仕えることなどを伝えられていないのでは」とボランティアの何人かが言い始めている。
播磨さんが初めに求めていた伝道への道が広がってきた。