2000年10月29日号《ヘッドライン》

2000年10月29日号
《ヘッドライン》
 = 1面 =
◎闇から十字架へ 迫真シーン——「親分はイエス様」ロケ佳境
★鳥取県西部地震:教会堂半壊など被害大
★タジキスタンで教会爆破——日曜礼拝中に死傷者多数
★<いやしの時代>[25]ハンディを持つ子と家族支える新聞発行 馬場善鶴・菜穂子さん(下)
★<落穂抄>「光を観る」本当の観光
 = 2 面 =
★日本国際ギデオン協会が半世紀——贈呈した聖書2755万冊余
★金大中氏 ノーベル平和賞受賞——私はこう見る
★パレスチナ信徒のための祈りを——イスラエルのメシアニック・ジュー訴え
◎32カ国・1000教会の調査から成長教会の共通原則を分析——C・シュヴァルツ氏来日講演
★<論説>迫害下の教会のため祈ろう 記・油井 義昭
 = 3 面 プロテスタントの信仰と遺産=
★激動の時代に我、ここに立つ——宗教改革とマルチン・ルター
 = 4 面 =
★在宅介護複合施設「大台共生園」オープン(三重県多気郡大台町)
★大台共生園のモデル——紀勢町の特養「共生園」
★ルポ紀勢町を訪ねて
 = 5 面 キリスト教書籍ガイド=
★『預言者の落とし穴と原則』ビル・ハモン著(クリスチャン・インターナショナル・アジア刊)
★『イペーの花咲く地から』ブラジル日系証し集刊行会編(一粒社刊)
★『ネフェシュ——聖書・救い・復活』ピリポ聖書研究会編著(講談社出版サービスセンター刊)
★『クリスマスの奇跡』ジャック・ヘイフォード著(YCC出版部刊)
★『バックストンとその弟子たち』都田恒太郎著(バックストン聖会刊)
★『教会』加藤常昭信仰講話5(教文館刊)
★『夜明けの岸に立つキリスト』土屋順一著(東京カベナント教会刊)
★『死海文書Q&A』池田 裕著(ミルトス刊)
 = 6面 スポーツと伝道=
★神と私の関係は永遠——シドニー五輪金メダリスト、ジョナサン・エドワーズ(3段飛び)
★シドニー五輪・現地での伝道——教会を会場に多彩な活動
★日本初のゴルフ縦断伝道ツアー レポート・宮本 俊一
★スポーツで教会と地域の橋渡しを——スポーツ伝道セミナー  = 7面 =
◎母が綴る癌を受容した娘の生き方——『死を怖れる人たちへ』励まし
★鳥取県西部地震:牧師も教会員も疲労 祈りを要請——補修に数千万円必要
★2000年を機に各団体が伝道目的にゴスペル企画
★韓国賛美宣教団「オンギジャンイ」——東海地方で公演
 = 8 面 =
★<聖書66巻>マラキ書 絶悔い改めと回復を待ち望む主 記・山口 勝政
★<書評>『神社参拝を拒否したキリスト者』趙寿玉(証言)・渡辺信夫(聞き手)
★<新刊書紹介>『こころの旅 ヨーロッパ』小塩 節(文)・菅井日人(写真)
★<新刊書紹介>『無言のあかし』中川 美江著
★<情報クリップ>催し情報ほか      
 

闇から十字架へ 迫真シーン−−「親分はイエス様」ロケ佳境

港の倉庫に乗り付けたベンツから二人の男が降り立つ。
倉庫の中へ消える二人。
緊迫した空気を裂いて銃声が響く——元ヤクザの伝道グループ「ミッション・バラバ」を題材にした映画「親分はイエス様」(監督・斎藤耕一、脚本・松山善三)の撮影が山場を迎えている。
俳優も監督も脚本家もほれこんだという、どん底からイエス様によって変えられた男たちの人生ドラマ。
その実感を表現しようと、主役の渡瀬恒彦さんらは役作りのため教会の礼拝に出席し、バラバのメンバーの熱い証しにも耳を傾け、迫真の演技を展開する。
「今までになかったいい映画になる」と製作陣は意気込む。
12月25日完成試写を目指し、ロケはいよいよ佳境に入った。
9月26日クランクイン。
佐賀を皮切りに、各地で十字架行進のシーンなどを撮り終え、ロケは全体の3分の1まで進んだ。
10月17日の横浜ロケでは、クリスチャンになりヤクザから足を洗って伝道を始めた主人公の木原勇次(渡瀬恒彦)を、敵対する組織の島(奥田瑛二)が呼び出し、倉庫で対決。
「十字架を引きずって歩きたけりゃ、俺の後ろのドアから出て行け。
泣きを入れたけりゃ自分の後ろのドアから出ろ」。
島は、十字架を背負って伝道する勇次の前に立ちはだかる。
銃を向け合う2人。
だが勇次は、渡された銃を天井に向けて発射する。
勇次の額を島の銃弾がかすめる。
それでも勇次は、脅しを振り切り十字架行進へと旅立っていく。
後ろ姿を見送る島は、銃口を向けつつも、なぜかとどめの一発を撃つことができない。
やがて、十字架行進にはその島の姿も…。
闇の世界から光へ。
ヤクザたちが変ぼうを遂げていく、物語中盤のクライマックスだ。 救いの実感伝えたいと製作スタッフ熱気 バラバのメンバーの1人で、この映画製作の後ろ盾である日本映画投資機構社長の中島哲夫さんは、俳優、監督をはじめ製作関係者らに、ヤクザの生活からキリストを信じて救われた体験を話し、作品に命を吹き込むのに一役買っている。
「イエス・キリストが、あなたやりなさいよと言う声が、中島さんを通じて私にも聞こえてきてる」と、映画の企画製作・グルーヴキネマ東京のエグゼクティブプロデューサー高橋松男さん。
「この映画がヒットしたら日本は変わりますよ。
その責任はクリスチャンにある」と熱く語る。
高橋さんはクリスチャンではないが、その言葉はまるでチャレンジメッセージだ。
「今の日本はバブルがはじけて心がすさんでいる。
自信を失っている人、自殺者が多い。
そういう人たちに立ち直れるんだというメッセージを伝える力が、この映画にはあります」

32カ国・1000教会の調査から成長教会の共通原則を分析−−C・シュヴァルツ氏来日講演

10年以上をかけた32か国、1000以上の教会に及ぶ調査と分析により、教会が自然に成長する特質をまとめた著書『自然に成長する教会——健康な教会への8つの不可欠な特質』の著者、クリスチャン・シュヴァルツ氏(独・「自然に成長する教会」研究所所長)が11月に来日し、各地でセミナーが開催される。
同書は、教会が成長する共通の原則を実証的・理論的に示したことで世界的に注目され、昨年JCMN出版から日本語版も出版(本体1800円)。
今年中に約30言語で刊行される予定だ。
調査の手法についてシュヴァルツ氏は、日本語版翻訳出版にかかわった日本セルチャーチ宣教ネットワーク(JCMN)コーディネーター石原良人氏のインタビューに、「今まで様々な教会の指導者たちが紹介してきたような自分たちの成功談ではなく、世界的に伸びている教会の、背後にある霊的成長の原則を見つけようとした」と答えている。
それにより、成長している教会には、目に見え、測れ、教え、学ぶことのできる共通の原則があることが分かった。
教会の「量」ではなく「質」に焦点を絞って調べた結果、質が良ければ量は自然に増えてくることがほとんどだったという。
インタビューの全容は11月1日発行予定の文脈化研究会『RCAジャーナル第8号』に掲載される。 JCMN主催「自然に成長する教会」セミナー ▼11月21日=大阪桃谷ナザレン教会▼22日=名古屋一麦教会▼23日=主都福音キリスト教会で。
対象は牧師、役員、リーダー。
時間は午前10時から午後4時。
参加費3000円。
TEL&FAX0533・59・8386。

母が綴る癌を受容した娘の生き方−−『死を怖れる人たちへ』励まし

3年前、癌(がん)のために夫と2児の子どもたち、親族を遺して36歳で早世した柳澤恵美さん。
その癌を受容した娘の生き方を綴った母親・藤井禮子さんの手記『死を恐れる人たちへ——がんを受容した娘の生き方』(講談社刊、1600円=税別)が刊行された。
延命ではなく生きていることの深さ(生命の質)を選択した恵美さんの手記や周囲の看護の様子が描かれるている本書は、現代を生きる人たちに家族の絆そして和解の大切さなどを伝える証しの使信でもある。
延命から生命の質を求める生き方へ 柳澤恵美さんは、日本福音ルーテル教会の牧師・藤井 浩、禮子夫妻(現在は小田原教会、ホスピス・ピースハウスチャプレン)の1男3女の長女として生まれ、育った。
捜真女学校から日本バプテスト看護専門学校へ進み看護婦となってカトリック信徒で医師の柳澤 徹さんと結婚し2男の母となり、病院の受付や看護婦としても元気に手伝っていた。
30代半ばで壮健だった恵美さんが乳癌を告知されたのが1996年の4月、手術したが転移が早く翌年11月半ばに主の御許に召された。
『死を恐れる人たちへ——がんを受容した娘の生き方』は、母親の禮子さんが娘・藤井恵美として生きた日々の母と子の思い出を一つの柱に、その心の機微を記す。
一方で、尊敬する日野原重明医師の助言を受け、延命ではなく残された日々を生きていく質を深めるため在宅ホスピスを選択し、介護する家族・親族とともに癌と向き合い生と死を直視していく歩みが記録されていく。
病状をどのように伝えるか、幼い子どもたちへの死の準備教育をどのように備えるかなど、在宅ホスピスのために話し合い、行なわれたことが記されている。
この本にまとめられた恵美さんの生き方やノート、遺した言葉そして家族の在り方から、実際的な知恵とともに死に至る病をどのように受容していくか示唆に富んでいる。
書名の『死を恐れる人たちへ』に始め馴染まなかった禮子さんも今は、「恵美は正直者で飾らない娘だったので、『死って怖くないよ』と言っているのかなと理解している」。
そして「いただいている生命を如何に生きるか。
死は終わりではない。
死は落ちていくのではなく上に昇っていくのであり、神の御許へ帰っていく」ことが伝わればと願っている。
また「恵美が、死を前にして取り組んだもう一つのことは、和解だった」という。
「長い間、心の中に溜め込んでいた両親や家族、社会に対する怒りや不満、また自分自身の中にある心の汚れや悔いをそのままにしておくことはできなかったようだ」と。
満月を月見しながら、恵美さんと藤井さん夫妻が心のうちを素直に語り合い許し合った夜の情景は、親と子の間であっても向き合うことの大切さを印象深く教えてくれる。
禮子さんは「愛とは意思であり、行動であり、祈りである。
その子どものほんとうの気持ちを察する思いやりであると思う」と。 体は火で焼いて骨なってもお母さんの命は生きてます 恵美さんの生きる質を求める最期の1か月半の生き方と家族の様子は、昨年10月にドキュメンタリー人間劇場「ありがとう。
ごめんね」の題でテレビ放映されている。
題名は、恵美さんが9歳と7歳の子供たちと親しい人たちへ最期に書き残したノートのことばからつけられた。
その中で子供たちへ「大切なことをお話します。
お母さんは、今も生きています。
体は病気なので、火で焼いて骨になりますが、命は生きています。
聖(しょう)と基(もとき)がお母さんのことを思うと、その瞬間にお母さんの命はあなたたちの心の中に入ってきて抱いてあげます。
お母さんの命は天を飛び回っているのです。
生きた体でいると、お母さんは一人だけだけれど、天国にいると、体が自由にどこへでも飛んで行くことが出来るのです。
天国はとても良いところです。
お母さんが子どもの頃から想像していたとおりです。
お母さんは神様にご挨拶し、イエス様にお礼を申し上げます。
…」と綴っている。
愛娘が他界して後、「主のみ栄えがあらわされるように」と祈りながら介護記録や恵美さんが遺したノートなどを整理しまとめてきた禮子さんは、「恵美から、愛とは何かを教えられた。
……母である私に、懺悔の心と新しく愛に根ざした生き方をするようにと、方向づけをしてくれたように思えてならない。
そういう意味においても、この本は『母の懺悔録』である」と結んでいる。
恵美さんが愛する人たちに遺した宝物は、病と死とに向き合っている人たち、死を怖れる人たちだけでなく、いのちの創造主を知らない人たちへの、愛すること愛される恵みを証しする使信でもある。