[CSD]2013年6月9日号《ヘッドライン》

[CSD]2013年6月9日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎人生の通過儀礼への積極的対応を——宣教の革新を求めて/データから日本の教会の現状と課題を分析・提言
★火災にめげず「さあ!新しい地へ」——東京メトロチャーチ 会堂に感謝とお別れ

 = 2 面 ニュース=
◎「イエスの弟子となるための世界会議」開催——教会の原点に返る
◎改憲阻止へ 戦時体験語り継げ——「政教分離の会」平和憲法の重要性訴え
★「慰安婦」強制認め謝罪を——橋下・大阪市長に抗議
★<落ち穂>村上春樹文学と近代合理主義の限界

 = 3 面 =
★<フクシマの声を聴く>[4]母たちからの声?——食卓で泣き出すお母さんも 記・中尾祐子
★もてなしが宣教——ユダヤ人の伝統から学ぶ
★<オピニオン>慰安婦を必要としたのは誰か 記・森田美芽
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4-5 面 特集/やすらぎの介護シャローム =
★平安満ちる住まい「晴れる家」2号館オープン——礼拝できる住宅型有料老人ホーム

 = 6 面 仕事と信仰=
★岡田 聡さん(ジャパンカルバリー〔株〕代表取締役)[下]——教会、家庭、仕事が融合し一つに
★<首都圏大震災に備える>[10]良きサマリヤ人として励む 記・栗原一芳——

 = 7 面 伝道・牧会を考える=
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>?[52]同盟基督・高麗聖書教会?——教会のスペースを自由に生かす
★<憲法が変わるってホント?>[9]24回目の書き直し——アメリカ憲法よりもすばらしい 記・崔 善愛

 = 8 面 インサイド・ニュース=
★68歳で結婚に導かれ——故エヴリン宣教師の思い出語る記念集会



◎人生の通過儀礼への積極的対応を−−宣教の革新を求めて/データから日本の教会の現状と課題を分析・提言

 『キリスト教年鑑』『クリスチャン情報ブック』『CISニュース』などが提供している教会教勢データは「宝の山」、もっと有効に活用すべきでは|そんな問題意識から諸データを集めて分析し、日本の教会の抱える課題とその解決策を提言したデータブックが昨年10月、東京基督教大学(TCU)国際宣教センターから発刊された。5月27日、千葉県印西市の同センターで、このデータブックからの提言をテーマにした教会教職特別セミナーが開かれ、同大の大学院生、学生、教職員、CISなど調査関係者らが、クリスチャン人口1%の壁を破るにはどうしたらよいか? を討議した。

 データブック『宣教の革新を求めて―データから見る日本の教会の現状と課題―』をまとめたのは、TCU国際宣教センター専門委員の柴田初男氏。このデータブックでは教会インフォメーションサービス(CIS)が毎年調査している教会教勢データを基本に、『キリスト教年鑑』(キリスト新聞社)『クリスチャン情報ブック』(クリスチャン新聞)のほか、『日本基督教団年鑑』(日本基督教団出版局)『カトリック教会現勢』(カトリック中央協議会)、文化庁から発表される『宗教年鑑』やNHK放送文化研究所編『全国国民意識調査』ほかマスコミ発表なども含む幅広い調査データを活用。プロテスタント諸教派の現状や動向を主軸に、カトリック、オーソドックス、仏教諸派や神道系などのデータも駆使して日本人の宗教性を年代別・地域性で捉え、日本のキリスト教の教勢から浮き彫りにされる課題を多面的に分析している。
 セミナーでは柴田氏がその概要を報告・解説し、データ分析に基づいて、「日本人のキリスト教受容を阻む壁を打破するためには、宗教的な通過儀礼(冠婚葬祭)等の日常的な実践を通して日本人の文化的・宗教的な意識変革を行うとともに、閉塞した社会において、神の愛を証する真の地域共同体(コイノニア)の形成に徹していくことが、何よりもまず最優先に取り組むべきことではないか」と提言した。
 柴田氏はデータブックで、キリスト教が日本の地に土着化・文化脈化していくために必要な教会の必要・十分条件として、「『日本人の全人的ニーズ』(地域の通過儀礼や日常的な宗教的・社会的・精神的なニーズ、特に葬儀やお墓、納骨堂等の宗教的ニーズ、幼児教育や老人介護等の福祉的なニーズ)に対し、積極的に応えることができる機能と対応力を保有する、主体となる教会を各地域に構築する」ことを挙げた。
 その実現のため、単独に自己完結型でできない大多数の地域教会においては、近隣のいくつかの教会が集まって連結し、互いに持てる資産や人材を共有し合う「ニーズ指向型器官連結教会」を提唱。これは「キリストの体なる教会は一つ」という真のキリスト教会のあり方に近づくように、教団・教派を超えた地域教会協力体制の構築の実現を目指すものだ。
 いまだに「外国の宗教」と見られるキリスト教が日本で受け入れられるためには、「日本人にとって関係のない宗教という無意識の前提を打ち壊し、自分たちの必要を満たす宗教として受け止められる関係を構築することが最優先に取り組むべき課題」と指摘。そのためには、「まず通過儀礼(人生儀礼)に現れている日本人の宗教的ニーズに対して、日本のキリスト教会が積極的に応えていくことから始めていく必要があるのではないか。キリスト教会の働きとして、天地万物の造り主の御名によってなされる通過儀礼に積極的に取り組んでいくとき、仏教や新党を中心とした日本の宗教文化は、大きく変容させられて行くに違いない」などと提言した。
 データブックはデータ編CD―ROM付き1,800円+税。入手はホームページ( www.tci.ac.jp/institution/fcc/booklet )からの他、一部キリスト教書店でも扱っている。

◎「イエスの弟子となるための世界会議」開催−−教会の原点に返る=1306090201

 5月22日から25日まで、フィリピンのマニラで「イエスの弟子となるための世界会議」が開催され、7千人のリーダーが集いました。シンガポールから750人、香港から150人、マレーシアから150人、中国から100人、インドネシアから50人など、外国からは61か国からの参加でした。欧米人は講師以外、ほとんど見かけませんでした。日本からは、福音自由教会から10人の参加でした。会場は、主講師の一人であるピーター・タンチー氏が主任牧師を務める大宣教命令教会の新会堂でした。
 主催は、Global Alliance of Intentional Disciple-Making Churches(IDMC=国際弟子づくり教会世界同盟)でした。これはシンガポールの福音自由教会の牧師であるエドモンド・チャン氏がスタートしたもので、すでにシンガポールでは意識的な弟子づくりの教会となる運動を展開していましたが、今回これを広げてマニラで開催しました。「世界」といっても、今回は中国系の人々が中心で、それにフィリピンの教会が協力したものです。会場に若いフィリピンの牧師たちが圧倒的に多いことが印象的でした。
 講師は、エドモンド・チャン氏(シンガポール)、ピーター・タンチ氏(フィリピン)、ロバート・コールマン氏(米国)、ルイス・ブッシュ氏(米国)、ビル・ローレンス氏(米国)、ラビ・ザカリアス氏(インド系米国)などでした。分科会講師に、日本の高見沢潤子氏が起用されました。
 開会のメッセージで、エドモンド・チャン氏は、主のお働きに参加する者は、主に根を下ろしている必要があることを強調しました。出エジプト記の18章からでしたが、単に仕事を任せるという単純なことではなく、ここにはイスラエル民族がどのように生きて、生ける神を証しするかが根底にあることを指摘しました。他の講師も、霊的な側面を強調するチャン氏に呼応し、十字架の福音を語り、生きること、十字架を背負うこと、自分の意志を祭壇に捧げることなどを語りました。成功の誘惑、権力の誘惑、数の誘惑から解放され、クリスチャンがイエスに似る者となること、イエス様に従う者になることに焦点を当てましょうと呼びかけていました。
 参加者は、様々な色の服を着ており、会場がカラフルなのが印象的でした。賛美(ワーシップ)の時には、全会衆が穂波のように動き、主に心からの賛美を捧げていました。宣教、変革を強く意識している主催者ですが、同時にその前に一人ひとりが、主の弟子となること、礼拝が大切にされることが語られていました。
 フィリピンでは、6月10日から11日にかけて、「神の国の価値観によりフィリピン社会の変革を目指す」大会が開催されます。ペンテコステ系のPhilippine for Jesus(フィリピンをイエスへ)運動の会長、Philippine Council of Evangelical Churches(フィリピン福音同盟)の総主事が主たる講師です。また今回の「イエスの弟子となるための世界会議」には、3日目にフィリピン共和国の大統領が参加しました。エドモンド・チャン氏は、2000年に南アフリカではじまった世界祈りの運動のペンテコステの主日にスタジアムで祈るイベントでも中心的に働いてきました。
 このように祈りの運動、変革の運動、世界宣教の進展、スモール・グループ運動の根底に、教会が聖書に戻り、聖書が語っていることに聞き、救われた一人ひとりが、イエスに似る者となることを助けることを目指そうとする流れがあり、今回それが世界で初めての「イエスの弟子となるための世界会議」という形で表面化したと言えるでしょう。
 (レポート・福田崇=世界ウィクリフ同盟 霊的大使)

◎改憲阻止へ 戦時体験語り継げ−−「政教分離の会」平和憲法の重要性訴え=1306090202

 安倍内閣が改憲を目指す中で「私たちの課題」を探ろうと、「政教分離の会」の全国集会が5月25日、東京・代々木の新宗連会館で開かれた。同会常任幹事で弁護士の小池健治氏が「改憲勢力との戦いの経過と今何をすべきかを考える」をテーマに体験的改憲阻止論を、同会事務局長の西川重則氏が「『戦後68年』の今を考える」と題して講演、キリスト教界や仏教界、諸宗教などからの参加者らが意見交換した。
     ◇
 小池氏は今年1月、これまで政治的問題や憲法のことなど一度も話したことがない親戚から手紙を受け取ったエピソードを紹介した。2013年の年賀状に小池氏は「改憲の足音が聞こえてくるような年末総選挙の結果を見ての年頭の所感ですが、過ぐる戦争中大変に苦しい体験をして戦後貴重な平和と人権の憲法を得た世代として、まだまだ伝えてゆかなければならないことが多々ある、これからも頑張らなければ、という思いです」と書いた。手紙はそれに対する応答だった。92歳になったその人は、戦地で生と死の境をさまよったことを述べ、その体験から得たことを「ぼけないうちに文章にしたい」と思いをつづっていた。
 満州事変(柳条湖事件)の翌々年に生まれた小池氏自身は、戦時中は小学生。集団疎開でいじめがあったこと、日米開戦の大本営発表をラジオで聴いて非常に不安だったこと、紀元節などに校長が奉安殿から教育勅語をうやうやしく取り上げて朗読するのに非常な圧迫感を覚えたこと、近所の人や学校の先生が出征して遺骨で帰ってきたことなどを覚えている。「あと数年早く生まれていたら私自身も生死を分けるような経験をしていた。戦争のことなど関係ないかのように進む今の世代に、戦時中の体験を無駄にしないように語り継がなければ」と思う。
 敗戦の時は「どうなるかという不安感と同時に希望が出てきた。平和になった、軍隊に行かなくていいという安堵感を覚えた」。1946年の憲法発布は「中学生でも、非常に良かったという雰囲気を覚えています。当時の文部省が配った『あたらしい憲法のはなし』を読むとよく分かる。とても解放感、自由な空気がありました」。
 現行憲法をGHQの押し付けだという人がいるがそうではない、と小池氏は強調する。「1945年12月には民間の憲法研究会からの憲法案が総司令部に提出されていた。GHQはそうした民間のものを参照していたのではないか」と見ている。しかし間もなく戦前回帰の動きが出てきて、現在の改憲論議につながっていることを指摘し、自民改憲案の問題点を概説した。
 西川氏は、靖国神社の今春の例大祭に国会議員169人が参拝した危機的状況について、「国家と宗教の徹底した厳格な分離の原則が国会で軽視されている」ことを憂慮。「日本は何をしようとしているのか。安倍内閣はなぜ登場したのか」と問いかけ、「有権者が圧倒的にそういう政治を望んでいると率直に思います」として、1955年に結党以来、「現行憲法の自主的な改正」が自民党の基本方針であり、それを歴代首相が反映させるのが党の方針だったと指摘。その延長上に安倍内閣が登場したとの見方を示した。
 一方で日本国憲法を成立させた吉田茂内閣には、1940年に支那事変に反対した斎藤隆夫、敗戦直後に靖国神社廃止を主張し天皇の戦争責任も批判した石橋湛山ら「尊敬できる人物がいた」ことを紹介。国会議員は憲法に基づいた政治を行うべきであるとし、中でも大日本帝国憲法では奪われていた思想・良心の自由(19条)、信教の自由(20条)、表現の自由(21条)の重要性を強調した。「19~21条は、日本がアジアに対して何をした国なのかをはっきり踏まえて書かれた条文だ」とし、「政教分離の原則をキチッと政治に生かさないと戦争への道をまっしぐらに進む」と警鐘を鳴らした。