[CSD]2014年2月23日号《ヘッドライン》

[CSD]2014年2月23日号《ヘッドライン》

 = 1面 =
◎各地で2・11集会 預言者として警鐘を——右傾化する日本でのキリスト者の使命
★子どもたちの再生が地域の再生に——東北ヘルプ 障がい児デイケア施設オープン

 = 2 面 ニュース=
★チェルノブイリからフクシマは学べるのか——NCCチェリノブイリ・スタディツアー報告会 記・中尾祐子
◎子ども支援が教会の使命——「福島に不安、分断、麻痺がある」
★WCC:「巡礼は真実の霊性と人間性に関するもの」——カトリックとの協働への可能性も示唆
★「憲法九条にノーベル平和賞を」——ノーベル委員会への推薦手続き終える
★「総理、靖国参拝はおやめなさい」——安倍総理にNCC議長書簡送る
★バプ連盟・堺キリスト教会2014年信教の自由セミナー——改憲、原発推進反対宣言を提出
★<落ち穂>闇の中に光を見た瞬間

 = 3 面 =
★都知事選とこれからの教会——教会は「宗教の公共的役割」に目覚める 記・稲垣久和
★JEA宣教フォーラムから[4]フクシマと生きる宣教——支援と伝道の神学的意味
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 4 面 結婚特集=
★ふたりなら立ち向かえる——互いに伴侶と死別した者同士の再婚 デュオ・フリーデン
★新郎・新婦の心と通じ合う——結婚式司式19年 澤畑明豪牧師のアドバイス

 = 5 面 特集/2・11信教の自由を守る日=
◎作られた歴史の天皇キャラ——キリストも利用し「感激」の回路へ
★君が代強制は国家神道的儀礼——偶像礼拝で思考停止の危険を指摘
★「密告恐れ 信仰告白消えた」——神学校は教育勅語に準拠
★BOOK:『なぜ「秘密法」に反対か』特定秘密保護法に反対する牧師の会編(新教出版社、1,350円税込)

 = 6 面 関西だより=
★福音とおいしい食事でもてなし45年——大阪レディースランチョン 3月5日で第90回
★難病の西村隆夫妻「しあわせ」綴る——『住めば都の不自由なしあわせ』出版記念会 3月21日OCCで
★クリスチャン女子力でファイト一発!——岡本依子、高橋めりー、菅原早樹、露のききょうさんらでチャリティーイベント(3月8日)
★OCCで東日本大震災支援のつどい(3月1日)

 = 7 面 伝道・牧会を考える=
★被災地での宣教を考える[下]——『トランスフォーメーションの祈り』をテキストに 記・永井信義
★北米日本人教会事情(上)——拡大する日本人宣教 レポート・岸 義紘

 = 8 面 ひと =
★齋藤一男さん(新作映画「かがみ」の監督)——心の貧しさを見つめて 記・中尾祐子



◎各地で2・11集会 預言者として警鐘を−−右傾化する日本でのキリスト者の使命=1402230101

 「建国記念の日」に戦前の神話的紀元節の復活を危惧し、この日を「信教の自由を守る日」と位置づけるキリスト教界では、今年も各地で信教の自由をテーマにした集会が開かれた。今年は、昨年の特定秘密保護法制定、安倍晋三首相の靖国神社参拝など、日本がますます右傾化し、戦前回帰していく中、講師も参加者も例年以上に危機感を覚えながら集い、語り、祈り合った。
 
  第22回関東三地区2・11集会「信教の自由を覚える集い」(日本福音キリスト教会連合主催)が2月11日、JECA・浜田山キリスト教会で開かれた。「日本宣教の宿題」と題し学座・とうごまの葉の下代表の正田眞次氏の講演と分科会が開かれ、会場には約150人が集まった。
 昨年末から特定秘密保護法成立、武器輸出禁止三原則の撤廃を含めた見直しなど、政府による大きな動きがいくつも見られた。集団的自衛権の容認へも前進をみせ、日本を一つの方向へ向かわせようという足音が聞こえる。
 「今回、講演タイトルを『日本宣教の宿題』と名付けたのは、キリスト者ではない首相に我々は新たな課題を突きつけられていると思うからだ。1974年のローザンヌ誓約で『伝道と社会的政治的参与両方がともにキリスト者の務め』と明記されたことを踏まえると、キリスト者や教会の政治的な参与が日本の宣教の重要課題になる」
 また、特定秘密保護法制定の背景には軍事産業推進の動きが大きく影響している、と述べた。
 「遡れば1952年日米安保条約発効後に安保特例法が制定されたところから特定秘密保護法の動きはあった。昨今経団連が武器輸出三原則などに代わるあたらしい武器輸出管理、防衛産業政策のあり方を提示、さらに米国・欧州に向けて民間が加わる武器開発・輸出への準備を始めたことから民間企業レベルでも秘密が漏れることを懸念し、特定秘密保護法の異例ともいえる早急な制定必要があったのだと考えられる。キリスト者は戦争に向けた政治的動きを見張り、預言者として警鐘をならす務めを果たさねばならない。」と語った。
  ◇  ◆  ◇
 午後の改憲問題についての分科会では、クリスチャンで弁護士のS氏が自民党による日本国憲法改正草案の問題点を次のように指摘した。
──草案の前文からして国際スタンダードから逸脱した内容。憲法とは歴史の中で、国家が人々の自由や権利を奪わないよう国家権力に縛りをかけるためのものとして作られたもの。しかし草案前文では「日本国民は良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここにこの憲法を制定」とある。自由と権利を守るための憲法の役割は?との疑問が湧く。さらに憲法の理念が挙げられた前文をすべて変えてしまうということは理念を変えるに等しい。
 最高法規102条「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」。現行法では「国民」の文字はなく「天皇」は記載されていたが、草案では「天皇」がカット。「国家権力に対する憲法なのに天皇は除外され、国民に尊重せねばならない、とされているところがおかしい」。また現行法では「天皇は内閣の助言と承認により」と内閣が天皇の国事行為などをコントロールできたが、草案では天皇の国事に対し「進言」が必要となり内閣と天皇の立場が逆転している。また「公的行為」を入れることによって、天皇ができる範囲を広げてもいる。
 第20条「信教の自由」草案に対し、日本は一神教の国ではないし、風習なのか宗教的な行事なのかわからない行事が多い。宗教的な意味のある行事でも風習だとみなされれば国や行政から参加を要求される懸念がある。
草案には至るところ「法律の定めるところにより」と記されている──
 「このように書いておけば、あとで法律を作ってそれを使い、いかようにでも法の内容を変えていくことができる」と話した。(レポート=中尾祐子)

◎子ども支援が教会の使命−−「福島に不安、分断、麻痺がある」=1402230202

 東日本大震災から2年11か月となる2月11日、「東日本大震災3・11復興支援超教派一致祈祷会」(ウェスレアン・淀橋教会主催)の第35回目が、東京・新宿区百人町の同所で開催。ふくしまHOPEプロジェクト代表の木田恵嗣氏(ミッション東北・郡山キリスト教会牧師)が、原発事故による放射能の影響下で苦しむ福島の人々の苦悩、現状について報告した。
 木田氏は、「福島には会津、中通り、浜通りと3つの地域があり、地理的な違いが福島の震災の現状、震災後の出来事を大きく分けている」と指摘。「太平洋岸の浜通りは地震、津波、放射能の影響があり、内陸の中通りは津波の被害はなかったが、地震直後に大量の放射能が流れ込んだ。会津地域は、比較的線量は低いが風評被害が大変だった。今、福島県内外に約15万人の避難者がおり、いつ帰られるかわからない状況が続いている」
 そんな福島のキーワードとして?不安、?分断、?麻痺を挙げる。「放射能の問題は不安と密接な関わりがある。福島県は2月7日、事故当時18歳以下だった子ども36万人のうち、22万5千人あまりの甲状腺検査結果を発表し、75人が甲状腺がんあるいはがんの疑いがあると診断されたと発表した。かなりな数だと思うが、原発事故とは無関係だと発表されている。本当にそうなのか、という不安がある」
 「性別、世代、経済格差によって分断が起きた。放射能に敏感な世代とそうでない世代、何を食べるか否か、どういう情報を信じるか、放射能で避難した人と津波で避難した人との補償金の違い、などで分断が起きている」
 「3年近くたつと地震直後のようではなくなっている。町も交通も流通も元に戻り、何もなかったかのように生活は進んでいる。今では外で遊ぶ子や、短パン、ミニスカートで歩く人を見かける。しかし、放射線量は震災前より10倍以上高い。感覚が麻痺していると感じる」
 そんな中、「福島市の牧師たちの集まりの中で、子どもたちの働き『ふくしまHOPEプロジェクト』の働きが始まりました」。 同プロジェクトの主な活動は、福島の子どもたちや保護者たちに、一時的に放射能の影響の少ない地域で過ごす「保養」プログラムの提供だ。「いつも教会学校の子どもたちと接している教会にとって、いちばんふさわしい支援活動だ」と木田氏は言う。
 最後にルカ11章5013節を引用し、「恥も外聞もなく、無力を告白して祈るなら、神様は答えてくださる。しかも、私たちの方法でなく、神様の方法で答えてくださる」と結んだ。
 講演後、参加者らは福島の子どもたちの健康が守られるように、などの課題を覚え祈った。

◎作られた歴史の“天皇キャラ”−−キリストも利用し「感激」の回路へ=1402230501

 第48回「なくせ!建国記念の日 許すな!靖国国営化2・11東京集会」(同実行委員会主催、日本キリスト教協議会〔NCC〕靖国神社問題委員会後援)は2月11日、千代田区の在日本韓国YMCAで開かれ、都立高校社会科教諭で「君が代」の起立斉唱を拒否し裁判で闘っている岡田明氏が「歴史からみた?天皇キャラ?と日本の人々」と題し講演した。
 高校で日本史を教える岡田氏は、昨年キリスト新聞社から刊行された『マンガで読む日本キリスト教史・タイムっち なぜ天皇が神サマになったのか』を執筆し、話題を呼んだ。「建国記念の日」は架空の人物である神武天皇が2月11日に即位したとする『日本書紀』の神話に基づき、戦前にはこの紀元節神話により天皇は天照大神の子孫と教え込まれ、
天皇崇拝を強要された。
 講演で岡田氏は、日本史の教科書が、天皇制は万世一系で連綿と続いてきたかのような印象を与えるファンタジー性を帯びており、民衆の文化史がほとんど出てこないと指摘。「やさしく民を思いやる方」といった天皇キャラや、天皇はずっと「国民」から崇拝され敬われてきたといったイメージが作られたものであり、歴史の事実とはかけ離れていることを解説した。
 日本人の国民性として挙げられる「長いものには巻かれろ」「出る杭は打たれる」なども、定着したのはここ100年のことで、江戸期以前は下克上や一揆など、規律に縛られず権力に反抗していた実態があるという。
 現在に至る天皇キャラは明治以降、儒学と国学および「神道」、西欧の君主像および「キリスト教」を取り入れ、忠義の対象を天皇にすり替えて作られた。学校と軍隊においてサムライの精神が教え込まれ、命より名誉を重んじるようになった延長が昭和の戦争だった、と位置付けた。また、人のため犠牲になるキリストのモデルが利用され国民のために祈る天皇という「感激」の回路が築かれた集団洗脳は、戦後の非宗教化でより洗練され強化されたと指摘した。