[CSD]2004年8月15日《ヘッドライン》

[CSD]2004年8月15日《ヘッドライン》
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◎平和と戦責、主体は教会——バルメン宣言70年とボンヘッファー
★滋賀県:(福)止揚学園新ホール完成
★バングラデシュ:大洪水被害に支援
★<恵みのどんでん返し>信徒の家々を回っておわびして 記・舛田 信一
★<落穂抄>100万人近い韓国のクリスチャンが号泣——30年前の集会「エクスプロ74」  = 2 面 =
★自衛隊イラク派遣は憲法違反——東京地裁で意見陳述した大野 道夫さん
★南ア教会協議会にオランダ改革派加入
★<イラク戦争肯定の理由>[6]信仰の原理を公式見解に 記・渡辺 聡
★<寄稿>監視、逮捕…日本は今戦時中 記・関口 美樹
★<今週の本棚>『愛と信仰のあるところに』李 東元著(いのちのことば社、1,680円税込) 評・小川 国光
★<今週の本棚>『動物と共に生きる』チャールズ・バーチ、ルーカス・フィッシャー著(日本キリスト教団出版局、1,470円税込)
★<今週の本棚>『夢を見て生きる』ブルース・ウィルキンソン著(いのちのことば社、1,470円税込)
<情報クリップ>催し情報ほか  = 3 面 =
◎開拓伝道研修——日本CPIカンファレンス  = 4 面 8・15特集=
★平和への願い/この人たちの証言
★<映画>「フォッグ・オブ・ウォー」  = 5 面 =
★風俗店に聖書配布——札幌薄野宣教ネットワーク(SSMN)
◎映画「石井のおとうさんありがとう」封切り——山室軍平は十次が原点
★スーパーがキリスト教扱う——顧客サービス求められる米キリスト教書店
★手話訳聖書DVDに——1枚100円は変わらず  = 6 面 ビジネスのページ=
★<信仰人スピリッツ>ビジネスでも献身できる——(株)アイシーメディックス代表取締役・堀切 幸治
★<ミッションと起業>設立趣意書に込められたキリストの自由——ソニー(株)創業者・井深 大 記・横手 仁美
★<ブックレビュー>『バイブルに見るビジネスの黄金律』マナブックス編 評・中野 雄一郎(マナブックス、840円税込)
★<書籍案内>『日本人に贈る聖書ものがたり 第2巻』中川 健一著(文芸社)  = 7~8 面 広告特集[保存版]=
★世界宣教・国際協力2004 祈りと支援のガイド
★[国別]派遣宣教師一覧

平和と戦責、主体は教会−−バルメン宣言70年とボンヘッファー0408150101

 時代が戦争へと向かい愛国心が高揚される中で、教会はどうしたら国策に流されず信仰告白に立ち続けることができるだろうか――ナチス時代のドイツにおいて、ドイツ福音主義教会の中でヒトラーに反対の姿勢を打ち出した「バルメン宣言」が発表されてから今年で70年。告白教会の神学者、牧師で教会闘争に中心的な役割を果たしたボンヘッファーが、抵抗運動の末に獄中で処刑されてから来年4月で60年を迎える。そうした中でドイツ告白教会と日本の教会を振り返り、世界の平和が深刻な危機を迎えている「今の時代に信仰を言い表す」とはどういうことかを考えようと、基督教共助会(尾崎風伍委員長)が8月2日から4日、静岡県で開催した夏期信仰修養会で「ボンヘッファーが問いかけていること」をテーマに取り上げた。講演と討論・懇談を通して日本の教会が問われる課題を探った。
 「告白教会の闘争は、教会の信仰告白の自由を守るために始めた。教会が告白教会であるために真剣に闘ったことそのものが、ナチズムの中で政治的意味をもった」――ボンヘッファー研究とその著作の出版活動に携わってきた森岡巌氏(新教出版社取締役)は、主題講演でそう述べた。そして今年5月に「バルメン宣言70年」にあたり、神学者モルトマンがドイツの神学雑誌のインタビューに答えてバルメン宣言の意義を評価した言葉を紹介した。「バルメン宣言はナチズムの異教主義、偶像主義に対する証しだったが、政治的闘争としても効果を発揮した。ドイツの教会だけでなく世界に広がり、多くの教会に刺激を与え、多くの信仰告白や教会のあり方に影響を与えた」
 森岡氏は、バルメン宣言の特色を?徹底的神中心主義?神のことばへの排他的集中(キリスト論的集中)?告白する教会(教会論的集中)とまとめる。そしてボンヘッファーが34年、デンマークのファネーで開かれた世界教会会議(WCC)にドイツ教会を代表して出席した際にした講演「教会と諸民族の世界」の内容を紹介した。
 ボンヘッファーは、平和は安全保障という自分の利益の追求ではなく、軍備によっては得られないとし、「神の平和」として教会的に平和の問題を考え、神学的発言・行動をすることによって世界平和に貢献することを主張したという。「教会は教会としてしか立てない。教会の平和への責任はキリストの平和を証しすることにある。ボンヘッファーは聖書の山上の説教を熱心に学び、キリストの十字架の倫理は山上の説教に集約されるととらえ、山上の説教の最大の倫理は平和の倫理であると考えた。キリストの平和によって世界は保たれている、世界の将来もキリストの平和によって保たれる、とボンヘッファーはメディテーションに書き残した」
 さらに、ドイツの戦争の罪責についてボンヘッファーは、教会が教会であるゆえに、国家が問われる罪責を国家に代わって率直に告白しなければならないと考えた。それが教会の告白であり責任であるとし、「罪責告白の主体は教会であると主張したことは重要だ」と森岡氏は注意を喚起した。ボンヘッファーが告白した戦争の罪責は、個人ではなく団体でも運動でもなく「教会」という主体においてしたのだ、と。
   森岡氏は、同時代(30~40年代)の日本の教会が、ドイツ教会闘争に関する情報を豊富にもっていたことを指摘。だが日本の教会はそれを理解できず、日本に教会闘争は起こらなかった。日本基督教団への信仰告白なき統合を拒否する力にならず、神社参拝や国民儀礼(宮城遙拝や君が代)にも疑問をもたなかった。天皇制国家主義に反対せず、天皇制の問題への認識をもてなかった。
 日本の教会は、民族主義的でナチスに迎合した「ドイツ的キリスト者」に似て、自分たちの信仰告白ができない「日本的キリスト者」といえる。ボンヘッファーが到達したのは「世のため(他者のため)の教会」だった。「私たちも罪責告白から出発して、できることをして闘う告白共同体としての『教会』を新たに考えなければならない」と森岡氏は言う。
 「それができない教会の代わりに、できない教会を代表して小さな群れをつくろう。私たちはボンヘッファーのように代理としての教会であり得る」。そして、戦時中の罪責を、共助会もまたあいまいにしてきたことを指摘し、「共助会も教会を代表して告白教会的になり得るしすべきだと思う」と問題提起した。  講演を受け、日本ホーリネス教団の戦争責任告白、日本バプテスト連盟の平和宣言と聖学院の教育基本法堅持の決意表明、ボンヘッファーと同時代のカトリック司祭の抵抗、現在の市民運動、教育現場などの視点から、シンポジウムで発題と討論を展開。懇談では、共助会の罪責についても意見を交わした。 【根田祥一】

開拓伝道研修−−日本CPIカンファレンス0408150301

 日本最大の開拓伝道研修プログラム「日本CPIカンファレンス」が、今年で10年を迎える。94年にJEMA(日本福音宣教師団)の宣教師27人が参加して第1回が開かれた後、実際的かつ霊的な内容が評判を呼び、参加者は年々うなぎ登りに増えて昨年は大人だけで500人に迫る勢い。途中から日本人の参加者も増え、日英2か国語で行われている。今年の開催は11月9日から12日だが、早くも申し込みが相次いでいる。その魅力はどこにあるのか。昨年参加した堀野陽二さんがレポートした。
 10回目となった昨年のCPI(チャーチ・プランティング・インスティチュート)カンファレンスは、11月に静岡県函南町の富士箱根ランドで開催された。1994年の第1回大会に27人の宣教師らが出席したこのカンファレンスは、その前年、福音伝道に労する日本人牧師を励ますために在日宣教師が開いた開拓伝道セミナーが始まり。その時招かれたのが、米国改革派神学校のスティーブ・チルダー博士であった。翌年以降JEMA(日本福音宣教師団)の主催により、教派を超えて延べ千人以上の宣教師・日本人牧師たちに教会開拓のビジョンを再燃させるCPIムーブメントへと発展していった。
 昨年の参加者は大人493人、子ども96人にのぼり、日本の歴史上最大規模の開拓伝道集会となっている。
 このカンファレンスの特徴は、参加者一人ひとりが福音に触れることにある。「福音の力によってキリストの弟子となる人々が増え拡がる教会が増え拡がるよう、教会の指導者たちの傍らに立って助けること、それにより神の国の前進に貢献すること」がCPIのビジョンとなっている。
 プログラムは、賛美、礼拝、4つのトレーニングコース、34の分科会、さらに12の地域別グループと14のテーマ別親睦グループなど多岐におよぶ。また、女性のためのレディースランチョンや国内外奉仕者による子どもプログラムもあり、内容も年々充実してきている。
 スティーブ・チルダー博士(米国CPIセンター主事兼務)によるメインのトレーニングコース「教会開拓の基礎」に加え、昨年初めて米国サチュレーション・チャーチ・プランティング代表のドワイト・スミス博士を招いて「教会増殖のためのパートナーシップのビジョン」の学び、日本人の泉田昭牧師(国内開拓伝道会)による「教会の豊かな宣教活動へのビジョン」の学びなどが行われた。
 昨年から通訳者が講師の側に立って行う逐次通訳(昨年まではラジオを使った同時通訳)となり、日本人参加者にもより聞きやすく配慮された。
 その他「生活とミニストリーにおける福音」、「増殖する教会を開拓する戦略」などのトレーニングコース、川崎廣氏(日本教会成長センター所長)、赤江弘之氏(西大寺キリスト教会牧師)など日本人牧師、宣教師らによる多数の分科会が開かれた。
 これらのセミナーでは教会開拓の戦略的手法や神学的概念がテーマとして語られるものの、根底には開拓伝道者が福音の力に押し出されるまで福音の力に満たされることがメッセージとして流れている。
 「私たちの目標はCPIムーブメントを広げることではありません。目標は参加した方それぞれの地域・教会で娘教会を生み出す教会を開拓していくムーブメントが起きることです。そして神の国の前進のために、人々が互いに励まし合い、協力し合うネットワークを築くことです」とCPI責任者であるジョン・メイン宣教師は言う。このことは、会場のあちらこちらにはられたCPIのビジョンや、「福音」「増殖」「ネットワーク」「弟子づくり」といったキーワードの分科会、親睦会が多数開かれていることにも表されている。
 チルダース氏、スミス氏らのトレーニングコースを収録したDVDビデオも入手可能。
 問い合わせは、JEMA事務局(Tel:03・3295・1949、FAX:03・3295・1354、Eメールcpi@jema.org)。また、公式ホームページ(http://www.jcpi.net)にも各種インフォメーションが掲載されている。  次回開催は、2004年11月9日~12日、会場は昨年と同じ富士箱根ランド。参加費(登録料、食費、宿泊費、資料代含む)は3万2千円。9月24日までに登録を完了すると2万9千円に割り引き。

映画「石井のおとうさんありがとう」封切り−−山室軍平は十次が原点0408150502

 明治から大正期にかけ、のべ3千人の孤児を救い育てた石井十次の生涯を描いた映画「石井のおとうさんありがとう 岡山孤児院・石井十次の生涯」(山田火砂子監督)が7月31日、封切られた。それに先立ち、7月30日に開かれた完成披露有料試写会には、石井十次役の松平健さんをはじめ、出演俳優が舞台あいさつ。松平さんは「こんなにすばらしい功績を残されたのに、あまり知られていないのが残念。映画を通じて、ぜひ多くの人に石井十次を知ってほしい」と語った。
 「孤児を救うのは俺にしかできない」という十次。孤児を預かり始めたころは、「おじさん」と呼ばれていたのが、いつしか「お父さん」と慕われるように。「身寄りのない子どもたちが、俺に生きる道を教えてくれる」といい、食料が底をついた時には子どもたちと心をあわせて祈る姿を松平さんが好演。また、十次が次々と孤児を引き取るそばで、覚悟を決めて夫とともに「お母さん」となっていった十次の妻、品子を女優の永作博美さんが心の葛藤を交えながら演じきっている。
 若かりしころ十次のもとで、孤児の世話をした山室軍平。山室は後に日本救世軍の初代司令官を務める。試写会で映画を見た救世軍の張田望司令官は、「石井十次は大変な時代に、大変なキリストの愛を実践した偉人だと思います。日本救世軍、山室軍平は石井が原点。私たちの血の中に石井十次の血が流れているように思います。何より人の命が大切だということを大胆に言い表した人だと思います」と感想を話した。
 同映画には、新人女優に養護施設出身者やクリスチャンも出演した。「おじいちゃんが十次に育てられた孤児だった」という西山洋子役の今城静香さんは、「養護施設出身です」と語る。「石井先生の愛が、神の愛だと思いました。今、児童養護施設に約3万人の子どもがいるのですが、この映画を通してその一人ひとりに石井先生の愛情がふり注いでほしいと思いました」と述べた。
 石井十次の長女・知子役を演じたクリスチャン女優の須貝真己子さん(フォースクエア・村山福音教会員)は、「信仰1つで孤児たちを育てたことに感動しました。役作りのため養護施設に行きましたが、親がいるのに孤児がいるという事実にショックを受けました。今の時代に、孤児を我が子のように愛する愛が必要なのだと、この作品を通して教えられました」と感想を述べた。  「親のない孤児よりもっと可哀想なのは心の迷い子、精神の孤児なのです」と語った十次。子どもの問題が取り沙汰される時代に、大切なものを問いかけてくる映画だ。  映画は11月まで全国各地で上映。日程などの問い合わせは、Tel:03・3371・3925、ホームページhttp://www.gendaipro.com/juji/で。