[CSD]2008年2月1日号《ヘッドライン》

[CSD]2008年2月1日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎オバマ米大統領就任式:祈り・演説に表れた「多様性の一致」
★「新日本聖書刊行会」社団法人認証が完了

 = 2 面 ニュース =
★「経済津波」にこそ祈る——断食祈祷聖会2009
★全世界からの帰国者一堂に——内外の支援教会・団体が連帯へ
★「大学進学あきらめないで」——受験生に経済支援するキリスト教主義大学
★「音の匠」に顕彰された時報の声中村啓子さん
★<教界インフォ>大阪クリスチャンセンター:齋藤嗣夫総主事が退任
★<落ち穂>米大統領就任式と祈祷牧師

 = 3 面 教界ニュース =
◎オバマ大統領と宗教:福音派は警戒と評価
★オバマ大統領と宗教:リック・ウォレン牧師と大統領就任式祈祷の背景
★首相ら伊勢神宮参拝に抗議——「社会通念」化させないために
★<オピニオン>イラク戦争の血の責任が問われる 記・渡部 敬直潔
★<取材こぼれ話>非正規労働者大量解雇のなかで

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★生涯、言葉にかかわる仕事を——浜島 敏さん(四国学院大学名誉教授)
★<サーバントリーダーシップ>[8]100年に1度の不況を乗り切るには? 記・真田 茂人

 = 5 面 牧会/神学/社会=
★聖学院大学シンポジウム:危機にある人を支えるために——ネットづくりの第一歩に
★<精神障害と教会>[44]人と問題を分ける? 問題生じた時、どう捉える  記・向谷地 生良

 = 6・7 面 ザ・対談=
★世界宣教と日本の教会の役割——アジアから西欧へ福音の逆輸入の時代
奥山 実氏(世界宣教センター所長)vs 石川秀和氏(同盟基督・近江聖書教会牧師)

 = 8 面 全面広告=
☆いのちのことば社創立60周年事業 感謝のご報告

 = 9 面 情報=
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★CD:「輝く日を仰ぐとき」ベー・チェチョル(ヴォイス・ファクトリー、2,100円税込)
★BOOK:『信徒と牧師』関西学院大学神学部編(キリスト新聞社、1,470円税込)
★REVIEW:『はじめてのルター』S・ポールソン著(教文館、1,995円税込)評・鍋谷尭爾

 = 10 面 関西だより =
★「みんなで生きる」心に刻み——震災メモリアルコンサート
★ラブ・ソナタ神戸説明会:「1%の壁」越えを確信——200教会の協力を目標に
★地域に喜びを発信——活けるキリスト・高田一麦教会が新会堂完成
★イベント:葬儀を学び考える

 = 11 面 クリスチャンライフ =
◎教派を超えて交流深める情報誌を——沖縄発無料マガジン「Christian Style」
★障害者の本音を綴る文集「まなざし」(日本バプテスト連盟「障害」者と教会委員会、500円税込)
★<痛みの中に生きる人たち>子育て編[2]「子どもを愛せなくて…」

 = 12 面 ひと=
★デボーション誌で日韓の橋渡し——上田あつ子さん(Duranno Japan編集担当)

◎オバマ米大統領就任式:祈り・演説に表れた「多様性の一致」=0902010101

 尊敬するリンカーン大統領愛用の聖書に左手を乗せ、最高裁長官の前で右手を挙げ、「忠実に大統領職を遂行し、力の限り職務を果たすことを誓います。神よ、力をお貸し下さい」と宣誓した瞬間、1月20日正午過ぎ(米ワシントン現地時間)、米国史上初のアフリカ系(黒人)大統領が誕生した。第44代バラク・オバマ大統領(47)の就任式と就任演説から、何が読み取れるのか―。

 この日の朝オバマ夫妻は、伝統どおり近くの教会で礼拝の後、連邦議会議事堂前で就任式に臨んだ。開会の祈りは目的主導型教会で知られるサドルバック教会のリック・ウォレン牧師。保守的で共和党支持が多い南部バプテスト連盟に連なる「福音派」のウォレン氏は、中絶や同性愛者の権利を擁護し「リベラル」と称される民主党のオバマ氏とは立場が違う。この人選にも多様性の中の一致を重んじるオバマ流の意図がうかがえる。
 ウォレン氏はこう祈った。「我々は初のアフリカ系大統領誕生という歴史の要にいます。移民の息子がアメリカ最高の地位に就くことができるこの時、キング牧師らは天国で叫んでいるでしょう。我々は人種、宗教、血によってではなくすべての人に与えられた正義によって結びついています。繁栄を自分たちだけのものとするような思いをお赦し下さい。礼節をお与え下さい。すべての人に共通する善を追求することができるように、より正義にあふれる国であるように、天の父が我々を助け、天でみこころがなるように地にもなりますように。侵略する人たちと戦うことをお赦し下さい。御国の栄光がありますように」
 ウォレン氏の著書『健康な教会の鍵』の翻訳者河野勇一氏(日本バプテスト教会連合緑キリスト教会牧師)は、この祈りを「すべての人に共通する正義を基本に、どんな宗教の人でも同意できるアメリカらしい祈り」と感じた。オバマ氏にも共通するバランス感覚があり、2人の視野は共通しているという。
 就任演説でオバマ氏は、戦争や経済的危機の現実を語り、克服への決意を強調。「私たちは恐れではなく希望を、対立と紛争ではなく団結を選んだ。…聖書にあるように、子どもじみた行為はやめるべきだ。世代から世代へ受け継がれてきた賜物と高い理念をもって前に進む時が来た。すべての人は平等で自由であり幸福を追求する機会がある、それは神が与えた約束だ」とし、アメリカを造り直す「新たな責任の時代」へと国民を招いた。
 東京バプテスト教会ミニストリー担当牧師で宗教社会学が専門の渡辺聡氏はこの演説に、保守派クリスチャンも共有できる価値観、「神の働き」が示唆されていたとし、「不況で閉塞感にさいなまれている中で希望を与えてくれた」と評価する。
 閉会の祈りは、マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師と共に公民権運動を闘ったジョセフ・ローリー牧師。「第44代大統領が我々に希望を与え、仕事を成し遂げるために力をお貸し下さい」と祝福を祈った。
 公民権運動に詳しい佐藤岩雄氏(カンバーランド長老・さがみの教会牧師)は、オバマ氏自身は演説で自分の大統領就任が黒人公民権運動の夢の実現であることをあまり強調せず、ローリー牧師を起用することで「バランスを取った」と見る。

◎オバマ大統領と宗教:福音派は警戒と評価=0902010301

 大統領就任式の祈りに、中絶や同性愛について自分とは考えの違う福音派の牧師と、公民権運動の指導者を同時に招く――世界を代表するアメリカの顔になったオバマ氏からは、国務長官に大統領予備選で激しく争ったクリントン氏を起用するなど、多様性を取り込んで一つに束ねる政治手法に通じるしたたかさが宗教面でも見える。

■所属教会と決別
 前任者ブッシュ氏の大統領選では同氏を支持した保守的な福音派の存在が目立ち、「キリスト教右派」と称された牧師や神学者の発言がメディアをにぎわせた。だが今回は「信仰」を公言する有力候補がいなかったこともあり、「宗教」が表に出ることはあまりなかった。
 そうした中でオバマ氏は昨年4月、長年所属しミシェル夫人との結婚式や娘の洗礼式も行ったシカゴのトリニティ合同教会を退会した。信仰の師と仰いできた同教会のジェレミア・ライト牧師が「白人敵視」ととれる発言を繰り返したことで一時オバマ氏の支持率が下がったことに対応し、「彼は私の代弁者ではない」と決別を宣言したのだ。
■キング牧師の系譜
 そのオバマ氏が就任式の祈り手として、キング牧師と共に黒人公民権運動を闘ったローリー牧師を招いたことに、佐藤岩雄氏(カンバーランド長老・さがみ野教会牧師)は驚いた。「ローリー牧師はキング牧師の妻コレッタさんの葬儀で、ブッシュ氏を目の前に『我々はイラクに大量破壊兵器がないことを知っていた。大量破壊兵器はここにある』と言った人です」
 ローリー牧師の閉会の祈りには「黒人が後ろに立てと言われない日が来た」「白人が本当に正しいことを保ち続けていくことができるように」などかなりラディカルな言葉も含まれていた。引用したアモス書5・24「正義をいつも水の流れる川のように、流れさせよ」はキング牧師がよく使った言葉でもある。
 一方オバマ氏の演説には、歴代大統領で初めてイスラム教徒との対話に触れるなど、共同体の一員としてみんなでやっていくのだというメッセージが込められていた、と佐藤氏は見る。
■中絶推進など警戒
 だがオバマ氏の「リベラル」な面には、福音派から警戒する声もある。家族の価値を強調する運動フォーカス・オン・ザ・ファミリーのジェームス・ドブソン牧師はその筆頭。日本の関連団体ファミリー・フォーラム・ジャパンのテモテ・コール代表は、昨年の大統領選直前の「会員便り」に、オバマ氏が中絶の権利の拡大や同性婚の合法化を推進すれば「未成年の女子が、親の了解がなくても先生や他の人の同伴のみで中絶が可能になる」などと懸念を示した。
■文化懸け橋に期待
 日系のゲイリー・藤野宣教師(南部バプテスト)はもう少し複雑だ。オバマ氏のそのような政策には同意できないが、同時にオバマ大統領の誕生は「同じマイノリティーとして喜んでいる」という。クリスチャン同士でもアジア系への差別を感じることがある。昔は日系人や黒人は宣教師として派遣されなかった。人権運動がなければ自分は宣教師の仕事はできなかったと思う。ケニア出身の父と白人の母をもつオバマ氏には、異文化の懸け橋として「いい意味のチェンジはしてくれると思う」と期待している。

 大統領就任式で祈ったリック・ウォレン牧師は06年12月、サドルバック教会でエイズに関する世界会議を催した際、アフリカでの慈善活動の実績などがあるオバマ氏を招待した。これに「オバマ氏の信念は聖書の倫理に反する」と右派が反発。それに対してウォレン氏は「福音派だけでエイズと闘うわけにはいかない」と応じた。
 昨年8月には同教会が開催したシビル・フォーラムにオバマ、マケイン両候補を招き、初顔合わせと話題を呼んだ。この企画に、価値観が近い政治家を応援する従来の右派とは一線を画すウォレン氏の姿勢が表れた。
 ウォレン氏と親しい尾山清仁氏(聖書キリスト東京教会牧師)は語る。「神の国のために教会こそが立ち上がらなければならないというのがウォレン氏の考え方。そのために神の民がどういうことができるかを考え、エイズや貧困の問題に力を入れている。正しい聖書観に立つリーダーを育てることもその一つ」。大統領のための祈りはその一環にほかならないという。

◎教派を超えて交流深める情報誌を−−沖縄発無料マガジン「Christian Style」=09020

[img align=right]http://jpnews.org/pc/uploads/img4982bf66bbd34.jpg[/img] 「教会、教団の枠を超えて、もっとクリスチャン同士が交流を」。そんな願いを込めて、無料の情報マガジン「Christian Style」(クリエイティブタクトサービス(以下〈CTS〉発行)を創刊したのは、沖縄県で生まれ育った知花恵さんと我如古まりやさんだ。2人はどんな経緯で同誌を作ったのか。

 知花さんと我如古さんはそれぞれ違う教会に通っていたが、同じ中学、部活も一緒で友だちになった。「お互い、教会に通っていることを知っていましたが、まだその頃は洗礼を受けていませんでした」と知花さん。
 やがて高校に進学。知花さんは洗礼を受けた。高校の同級生にクリスチャンが何人かおり、放課後に集まって祈るようになり、今度はクリスチャン仲間として知花さんと我如古さんは親しくなった。友人が友人を呼ぶうち祈りの輪が広がり、賛美や集会も始めるようになった。「みんなで集まり、沖縄のリバイバルのために本気で祈り合っていました」
□  ■
 そんなある日、高校生たちの情熱から、伝道集会を企画した。「教会は違ってもクリスチャンの仲間が同じ思いで伝道集会を開くことに、充実感がありました」と我如古さん。ところがこのような活動に、周囲の大人が必ずしも賛同したわけではなかった。「初めて教会間に壁があるということを知り、ショックを受けました。しかし、この経験が今の活動の動機に繋がっています」と知花さん。
 大人の心配をよそに集会は、想像以上に多くの高校生が集まり大成功。初めて聞く賛美に涙を流す人もいた。集会参加者の中から信仰者も起こされ、企画したメンバーの中から、献身者も起こされた。
 その時の体験は2人にとっても強烈だった。「聖霊の働きを実感して、あの時のことは企画したメンバーや参加者にも今でも大きな影響を与えています」。そして「いつか超教派の伝道活動をしたい」と夢を抱くようになったという。
□  ■
 沖縄県は比較的、超教派の集会や交わりがさかんな地域といわれる。しかし、教会間の壁がないわけではなく、多くの問題を抱えているのが現状だ。「お互いの協力関係を強めるためにも、まずはお互いを知ることから始まると考え」情報マガジンに行き着いた。
 知花さんは大学在学中からデザイン関係の仕事に携わり、地域のミニFMでラジオ伝道番組のアシスタントも務める。情報誌立ち上げのアドバイザーには恵まれていた。しかし、一人でできるものではない。「『人材が足りない』と思ったとき、我如古さんがちょうど神学校を卒業したことを思い出し、連絡しました」。昨年の春のことである。我如古さんは、知花さんのビジョンを聞き、「ぜひ協力したい」と迷いなく答えた。
 「大学生がフリーペーパーを作っていることを知って、学生でもできるんだと触発され、情報マガジンはフリーペーパー」と決めた。「周囲には『すごく難しいと思う』と心配された」という2人だが、なんと1か月半で作成。「広告も記事も、自分たちの力では無理と思いましたが、これは神様が進めてくださっているという確信があった」という。
□  ■
 現在も、企画、営業、宣伝などの中心は知花さんと我如古さんだが、発行を重ねるごとにアイデアが生まれ、紙面の改善、工夫もされている。「創刊号を持って教会を訪問したときは、『無料での配布は経済的に続くのか』など厳しいことも言われましたが、具体的なアドバイスをくださったり、『こういうのがほしかった』喜ばれる方や、広告スポンサーからは実際に、クリスチャンスタイルを見ての問い合わせがあります」
 情報マガジンといっても、ただ情報だけが羅列されているのではなく、「教会いちゃびらやー(沖縄の方言で、行きましょうの意)」や「クリスチャンビフォアアフター」、「健康コラム」などすでに定番となっているコーナーも多い。また、毎回の特集も、結婚、クリスマス、クリスチャンのバイクのツーリンググループなど様々。狙いは「家族で読めて、クリスチャンもそうでない人も楽しめる読み物」だという。「『Christian Style』を通して情報共有し、クリスチャン、教会のネットワークが広がるきっかけになること、様々な人に教会の活動やクリスチャンについて広く知ってもらうことが目的」だ。沖縄ではクリスチャン人口も多いと言われるが、クリスチャンではない人からは「まじめでつまらなそう」という声を聞くという。「クリスチャンはこんなに明るく、楽しいんだよという、主にある喜びを伝えられたらとも願っています」と知花さん。
□  ■
 沖縄県内の情報がメインではあるが、今後は全国に広めていく予定だ。インターネットなどを通して新潟や埼玉などからも反応があるという。「フリーペーパーの発行は、たしかに経済的に大変ですが、気軽に配って『Chri
stian Style』の存在自体をまずは広く知っていただき、伝道の機会にも用いていただけたらと思います。また、各地で様々な世代からの反応もあるので、紙面がその情報交換の場になれば」と意気込みを語った。

(写真:これまで4冊を発行。我如古まりやさん(左)と知花恵さん(右))