[CSD]2010年6月27日号《ヘッドライン》

[CSD]2010年6月27日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎幼子の目で描く戦争の記憶——オランダ人抑留体験者の手記『母への賛歌』邦訳出版
★未伝の地に福音を——日本CCCが茨城の教会未設置地域にトラクト配布

 = 2 面 ニュース=
★エチオピア政治弾圧で難民化——国際人権NGOなどは強制送還を懸念
★フィンランド福音ルーテル教会初の女性監督誕生へ——イルヤ・アスコラ牧師9月1日就任式
◎エジンバラ東京会議[5]後継者養成は世界宣教の中核
★千葉県流山市の公立小中学校に「星野富弘文庫」設置
★<落ち穂>聖書の真理を求める人々

 = 3 面 =
★<竜馬をめぐる人々>[11]横井小南の章(完) 熊本洋学校、熊本バンドから同志社総長へ 記・守部喜雅
★神の5つの目的に従う循環で健康な教会成長——パパーパスドリブン3カ年トレーニング開始
★<オピニオン>共同的な宣教戦略作りに向けて 記・竿代照夫

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★藤岡 太一郎さん[中]([株]東京クリアセンター顧問)——相手の立場になって考える
★<モノトーンからの脱出>[10]「無所属の時間」を味わう 記・小川 巧記

 = 5 面 情報 =
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★EVENT:「聖書ゆかりの地を巡る洋上セミナー」http://togasaqui.com/shimada/semina.html
★BOOK:『学級で生かすパフォーマンス心理学』佐藤綾子著(金子書房、1,890円税込)
★REVIEW:『心からわき出た美しい言葉 詩編45編の講解』マルティン・ルター著(教文館、2,625円税込)評・鍋谷堯爾

 = 6 面 教会学校 =
★教会と地域の接点を多く——チャーチ・オブ・ゴッド 東戸塚キリスト教会
★<CSもうひと味>Book:『だから、こう祈りなさい』鞭木由行著(いのちのことば社CS成長センター、1,155円)

 = 7 面 特集/視覚障害 =
★心に届けるピアノコンサート——各地で公演する全盲の双子姉妹
★神様からのプレゼント——盲導犬オアシスと一心同体

 = 8—11 面 特集/いのちのことば社創立60周年 =
★原点からの出発——教会と共に伝道のパートナーとして
★新たなる出発 会長・多胡元喜
★略年表
★出版事業部——霊的成長と聖書の学び支援から伝道用書籍まで
★宣教事業部——トラクト制作・配布、教会教育の現場に直結、活性化
★企画制作事業部——音楽、映像、グッズ、イベントなど伝道広げる
★ジャーナル出版事業部——定期刊行物でクリスチャン生活と伝道を支援

 = 12—13 面 三浦綾子特集 =
★神の愛の証し『塩狩峠』を演劇で——教会ユースが公演活動 劇団ぶどうの木
★三浦綾子読書会全国大会で「海嶺」ツアー
◎「裁く、裁かれるとは」——『壁の声』を劇団アドックが舞台化
★小説『母』特別展を10月中旬まで開催——三浦綾子記念文学館

 = 14 面 教会 =
★帰国者を支えていく教会に——保守バプ同盟・田園グレースチャペル

 = 15 面 クリスチャンライフ =
★<戦争の世紀から平和の世紀へ>[3]渡辺信夫牧師(下編)——福音も罪責も世代超えて継がれる
★東京から考える沖縄戦——6・23慰霊の日を前に牛島貞満氏が祖父の沖縄戦語る

 = 16 面 全面広告 =
☆教会全体で始まった「マナ」誌でのデボーション


◎幼子の目で描く戦争の記憶−−オランダ人抑留体験者の手記『母への賛歌』邦訳出版=1006270101

 第二次世界大戦中、6万5千人から7万人のオランダ人婦女子が各地抑留所に収容された。当時3歳だったオランダ人のヘンリエッテ・ファン・ラールテ・ヘールさんもその一人。へールさんの手記『母への賛歌─日本軍抑留所を生き延びた家族のものがたり』(タンゲナ鈴木由香里訳)が6月、いのちのことば社から邦訳出版。5日、著者のヘールさん、訳者のタンゲナさんを迎えての出版記念会(同出版事業部主催)が、東京・中野区中野の同社チャペルで開かれ、120人が詰めかけた。

 同書は著者の3歳から5歳までの幼い記憶と母の証言をもとに、オランダ領東インド(現インドネシア)の日本軍俘虜収容所での抑留生活を子ども目線で描いたもの。「鉄条網に囲まれ、飢えや渇きが日常化している生活が異常とは気づかず、戦争中だったことすら理解できなかった女の子の物語」だ。
 父親と離れ離れになった著者と母、2人の姉妹が、粗末な食事しかなく、死と隣り合わせの生活の中で、希望を失わず明るくたくましく生きる姿を描く。母は、羽アリを炒め、カエルや現地人と物々交換した鶏を料理して子どもたちに食べさせる。ミルクの缶に雑草を活ける。「決して希望を失ってはいけない」と、皆で励まし合う。
 一方、「冷酷なニッポン」の姿も描く。パンが堅いと反発すると、抑留者全員が2日間断食を強いられ、頭を丸坊主にされ、警備兵に蹴飛ばされ殴られる。1日に2回、天皇のいる東に向かって「ケイレイ」しなければならず、頭の下げ方が遅いとすぐに顔に往復ビンタが飛ぶ。「抑留者全員が天皇の代わりをつとめる御真影に向かってするお辞儀は、実に屈辱的なものであった」
 出版の経緯は、日本軍政下のオランダ人捕虜・抑留者の問題を共有し考える「日蘭対話の会」の世話人を務める村岡崇光氏(ライデン大学名誉教授)が、いのちのことば社出版部の長沢俊夫氏に本書の翻訳原稿を送り、「訳者が日本での出版を願っている」との意向を伝えたことから。長沢氏は「戦争の記憶を残し、語り継ぐことは出版社の大切な使命。積極的に考える」と返答。今年6月、出版に至った。
 出版記念会でヘールさんは、「今回の東京訪問は、あの恐ろしい時代に、子どもたちのため必死に生きようと戦った母親たちに敬意を表すため。『母への賛歌』という日本の本の題名が気に入っている」と挨拶。「02年、日本政府の招待で元抑留者として日本を訪問し、友好的な日本人と接した。実は彼らも、あの戦争の犠牲者だったことに目が開かれた。そのおかげで、日蘭対話の会にも出席するようになった」という。
 「小さな女の子の思い出が詰まったこの本を通し、日本の人々が自国の歴史を見つめられることを願ってやまない」と結んだ。
 30年前、オランダ人と結婚したタンゲナさんは、「当時はチューリップと風車、フェルメールやゴッホの国という理解しかなかった。その後、友人の母から、インドネシアでの抑留生活の体験談を聞き、日本兵に傷つけられた傷を見せられた。私はなるべく目立たないよう生活するようになった」と語る。
 だが、日本人に対する憎しみをためながら成長したあるオランダ人が、「長い間憎んでいたことを赦してほしい」と日本人に赦しを乞うた話を聞き、「自分の処し方に疑問を感じるようになった」。
 「知らないことは悲しい。知っている者には知らせる義務がある。この本が『こんなことが実際あったのか』ということを知る道具として用いられてほしい」と語った。
 『母への賛歌』は全国のキリスト教書店で購入できる。

◎エジンバラ東京会議[5]後継者養成は世界宣教の中核=1006270203

 弟子づくりは世界宣教の命題です。モーセ、パウロ、ハドソン・テーラー、ウイリアム・ケアリのような神の器は偉大でした。しかし、死んだ獅子よりも生きている犬のほうがまだましです。私たちは死んだ偉大な先人たちよりもましなのです。なぜなら、今の時代に貢献できるからです。
 私たちは今から後継者の養成を考えるべきです。モーセはヨシュアにその働きを引き継ぎました。モーセの時代は、神の杖を用いて状況を打開しましたが、ヨシュアの時代は神の杖に頼らず、契約の箱を担いでヨルダン川を渡りました。今の時代には、それにふさわしい神の方法、戦略があります。
 ヨシュアは、若い世代に宣教のバトンを渡さず、同世代の仲間にその働きを継承させました。その結果、ヨシュアの死後、人々はヨシュアの仲間が生きている間は神に従い、彼らが死んだ後、従うのをやめました。
 モーセもヨシュアも神に用いられましたが、征服すべき土地は残されていました。私たちも、昨日より確実に年を取ります。徐々に元気がなくなります。死に近づきます。もし宣教の前進を真剣に考えるならば、あなたの職務を誰かに引き継がなければいけません。
 それでは、いつ後継者養成プログラムを始めるのか? 高齢期になってから後継者を養成し始めた人は失敗しました。しかし、絶頂期に後継者選びをし、訓練を始めた人は、その働きを継続できたのです。
 弟子化は主にある命の付与であり、世界宣教の核、中身、実体です。私たちの生きている間に、後継者養成に心血を注がなければなりません。
(「神の宣教」教師、ナイジェリア在住)

◎「裁く、裁かれるとは」−−『壁の声』を劇団アドックが舞台化=1006271201

  「人を裁くとは…裁かれるとは…生きるとは…」。小林多喜二の母セキの一生を描いた『母』など、三浦綾子さんの作品を舞台化し演じてきた劇団アドック(三園ゆう子代表)が、短編集『毒麦の季とき』(講談社文庫) に収録されている「壁の声」を大幅アレンジした舞台「壁」を7月27、28日、三浦綾子ファンの会「光綾の会」集会行事50回記念作品として、東京・中野区野方の野方区民ホールで公演する。演出は俳優でもある伊藤豪さんだ。
 
 「壁の声」は、主人公が、無実の罪で捕らえられるという短編。「綾子さんが刑務所に慰問に行った時に会った死刑囚がモデル。インタビュー形式で、三浦綾子ファンでもこんな作品あったかなあというような数十分で読める作品です」。伊藤さんはこの作品に新たなキャラクターを加え、イメージを膨らませて肉付けし、「壁」という2時間あまりの舞台に仕立て上げた。「完全に、一読者が脚色したもの」という。
 
 ――主人公の多賀谷誠は幼い頃から吃音症(どもり)のためいじめられ、家庭内でも邪魔者扱いだった。次第に無口になり、人と話さなくなる誠。やがて、母の知り合いの勧めで旭川の洋服店に奉公に入り、ゆくゆくは独立したいと思っていた。
 ところが二度目の奉公先で事件に巻き込まれる。奉公先の主人が殺害されたが、その犯人として捕らえられ、裁判にかけられる。誠は、取調室でも裁判の場でも無言。ひと言も話そうとしなかった。誠を理解しようと努める弁護士・関越香津子に対しても無言を通し続けた。関越は誠の無実を確信し、法廷では理路整然と彼の無実を訴えた。だが、彼を救うことにはなかった。――

 くしくも裁判員制度が始まってからちょうど1年。これを機に「結局、人を裁くということは、生きることはどういうことなのか、自分たちに問いかける芝居にしたい」と伊藤さんは語る。「私たちはこれから、裁判員として人を裁く立場に立たされるわけです。その時、『あなたは人を、自分を裁けるか、裁く人は必ずしも正義か』という問題をつきつけられる。綾子さんは、人を判断する前に自分はどうか、という根源的な問いからスタートしている。作品を通して、人間としてどうかを問いたいのです」
 ポイントは言葉、コミュニケーションの問題だ。三園さん扮する関越弁護士に、こんなセリフを語らせている。
 「あなたは心の優しい人じゃないかと思える。そんな気がする。でも法廷では、何の救いにもならない。だから、質問には紙に書くなり、どんな方法でもいいから答えてほしいの…」
 主人公は、心の中では語っている。弁護士とも、心と心では通じ合っている。しかし、裁判法廷で言葉を発せなければ証拠にならない。黙っていたら、心証も悪くなってしまう。原作では死刑判決のくだりはないが、「壁」では裁判長が主人公に死刑判決を言い渡すシーンが登場する。
 この舞台脚本を専門家の弁護士にもチェックしてもらったと伊藤さん。弁護士からは「このシュチュエイションはまずありえないが、芝居だったらありえる」と言われた。
 この難しい誠役を演ずるのは、アドックに入って2年目の関根秀直さんだ。関根さんは「大きな役をさせてもらえてうれしいけれど、考えることがいっぱい。いろんな人と芝居できることを、まず楽しみたい」。三園さんは「テーマは暗く、重い芝居だけれども、他の劇団ではなかなかできないこと。この芝居を通して綾子さんの思いを伝えていきたい」と抱負を述べた。
 ▽27日午後7時~、28日午後6時30分~。前売り2千500円、当日3千円。チケット申し込みはTel.03・3796・0623、Fax.03・3796・0623、Email:gekidan@sd-hoc.jp 劇団アドックまで。