[CSD]2011年1月30日号《ヘッドライン》

[CSD]2011年1月30日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎オーリトラリア豪雨:ブリスベン市内の日本人教会も被害——洪水のさなか特別祈祷会
★英国YWCA「名称が時代に即さず」——改称「プラットフォーム51」に批判

 = 2 面 ニュース =
★混迷する世界を覚えて——東京で断食祈祷聖会2011
★「砂川政教分離訴訟」差し戻し審判決を批判——「有償で氏子に公有地提供」も憲法逸脱
★教師倫理の法整備に着手——アッセンブリー教団総会
★文字をなぞって耳で聞く——ペンで読む聖書 発売
★——
★<落ち穂>「小畑 実著作集」に見る説教者の姿勢

 = 3 面 教界ニュース =
★<竜馬をめぐる人々>[38]今井信郎の章:3——横浜海岸教会との出合い 記・守部喜雅
★ケープタウン2001報告[7]——一人の働きを執り成す祈り 記・吉田 隆
★<オピニオン>代々の聖徒と共に 記・立石充子

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★早津 信雄さん[中]([株]デザインネットワークス取締役副代表)——主により頼めば不可能はない
★<会計基準の黒船来る>[6]株式持合、M&Aを見直す 記・篠松次郎

 = 5 面 牧会/神学/社会=
★バチカン:カトリック内「キリスト教一致推進評議会」議長がプロテスタントを非難——聖餐、一致の認識にズレ
★英国:国教会主教3人がカトリック司祭に叙階——女性聖職容認に不満の保守派の動き
★日本のルーテル系4団体が創作讃美歌を公募——宗教改革500年を記念し『教会讃美歌』に増補版
★国際:WCC総幹事が教皇と会談
★<精神障害と教会>[89]働くこと(1) 働くことは、生きること 記・向谷地 生良

 = 6・7 面 横浜特集/明治期の文書伝道の夜明け=
★それは横浜から始まった——漢文書籍から和文トラクトへ
★横浜・文書伝道のあけぼの——略年表
★戦後・横浜のキリスト教書店——教会から始まった書籍販売

 = 8 面 法律特集=
★波紋呼ぶ総量規制——切羽詰まった相談急増
★総量規制とは

 = 9 面 情報=
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★DVD:「驚くべき惑星 地球」(ゴフェルトゥリー・プロダクション、1,890円税込)
★CD:「天のお父様」ビョン・ホギル(MAGCUP RECORDS、1,050円税込)
★REVIEW:『メレル・ヴォーリズと一柳満喜子』グレース・N・フレッチャー著(水曜社、2,835円税込)評・高橋博

 = 10 面 関西だより =
★「絶対忘れてはいけないことがある」——阪神淡路大震災から16年 被災教会でメモリアル集会
★止揚学園生らの大作「輝く太陽」——[株]中島大祥堂の社屋飾る
★OCC&大阪朝祷会 繁栄を期待——オープンハウス感謝会
★いのちのことば社「福音車21」関西巡る

 = 11 面 クリスチャンライフ =
◎家庭が崩れつつある今こそ伝えたい——映画「大地の詩(うた)——留岡幸助物語」2月18日に特別試写会
★バチカン科学アカデミー会長に——初めてプロテスタント科学者が就任
★新連載ルポ<また行きたい! 教会の魅力>[3]キーワード「仲間」?——「神様は自分に何を語ってる?」も共有

 = 12 面 ひと=
◎山田火砂子さん(映画監督・現代ぷろだくしょん代表)——明治期の福祉界4偉人を映画にしたい




◎オーリトラリア豪雨:ブリスベン市内の日本人教会も被害−−洪水のさなか特別祈祷会=110130010

 昨年12月から記録的な大雨が続き、洪水被害が広がっているオーストラリア北東部のクイーンズランド州。同州にあるオーストラリア第3の都市ブリスベン市でも1月11日に洪水が始まり、12日にピークに達した。市内にある日本人教会(集会)に集うメンバーにも被害が出ている模様だ。

 地元メディアは、「水を吸わない固い地盤のため内陸津波が起こった」と報道。「ジャパニーズ・クリスチャン・フェローシップ」(JCF)に出席する留学生の奥山新太さんによると、「12月初めから降り続いた雨水がダムに溜まったことが原因で、洪水となった。その範囲はフランスとドイツを合わせたよりも広い。同州では1月17日現在、死者20人、行方不明者14人、被害家屋・建物2万8千棟以上。復興は1か月以上かかる模様だ」という。
 同市には、日本人クリスチャンが集う「ブリスベン・インターナショナル・フェローシップ(通称アイ・チャーチ)」とJCFがある。「JCFのメンバーの中には、車が水に浸かって廃車処分になった、停電が数日続いた、床下浸水のため家にいることができずほかの家に避難した、という人もいた。アイ・チャーチに通う友人によれば、アイ・チャーチに集う日本人は、被害をこうむっていないようだ」と奥山さんは言う。
 JCFは、16日に新年会を開く予定だったが、それを急きょ洪水のための特別祈祷会に変更。「祈祷会では、今回洪水被害に遭った日本人クリスチャンとその友達のため、洪水被害に遭われたすべての人たちのため、参加した私たちがこの災害を通してさらに信仰が強められるように、オーストラリアの教会あるいはすべてのクリスチャンがこのことを通して愛を示すことができるように、と祈り合った」
 ブリスベン市には、日本キャンパス・クルセード・フォー・クライスト(JCCC)から1年間の短期宣教師として派遣された上地一哉さん、山田風音さんがいるが、2人の住むアパート一帯も水に浸かった。「不動産屋から、『木曜日(13日)までに君の家も水に浸かるかもしれないからいつでも避難できるように』と言われ、事態の深刻さを感じた。14日には腰の位置まである水位の中、レスキューボートで避難し、現在は被害が出ていない地域に住んでいるCCCスタッフの家にお世話になっている」と上地さん。
 山田さんは「10日にはブリスベン市から西に車で2時間のトゥーンバ市で突発的な洪水が発生し、10人近くの方が亡くなった。ブリスベン市も全体的にかなり深刻な被害が出ており、都心部、地下街はすべて水没、相当数の道路が閉鎖され、電車も動かず、かなりの地域が停電している」と語る。
 2人は「ブリスベン市を含むクイーンズランド州全体を襲った洪水が一刻も早く収まるように、私たちを含む避難の可能性があるすべての人々が安全に避難できように」と祈りを要請した。

◎家庭が崩れつつある今こそ伝えたい−−映画「大地の詩(うた)−−留岡幸助物語」2月18日に特別試写会






 幼児・児童虐待や育児放棄(ネグレクト)され悲惨な結末に至るなど、子どもの育児環境や家庭が崩れつつある現代を感じさせられる報道が後を絶たない。子どもを愛する大切さ、家庭が愛情の礎であることを伝えたいと、「不良少年の父」と称され少年更生に尽力した留岡幸助の生涯を映画化した「大地の詩(うた)――留岡幸助物語」が、(株)現代ぷろだくしょん(山田火砂子代表取締役・映画監督)製作・配給で2月より先行公開される。

 北海道の冬は早い。北海道遠軽の広大な大自然の中にあり、留岡幸助(1864年=元治元=4月9日~1934年=昭和9=2月5日)の少年更生養育の集大成ともいえる「家庭学校」が雪に埋もれる前にと、10月1日からロケ撮影をクランクイン。家庭学校内のチャペルや札幌の「開拓の村」、岡山県高梁などを巡り同月23日にクランクアップした。留岡幸助役に村上弘明、妻・夏子役に工藤夕貴を迎え、金森通倫(小倉一郎)、原胤昭(さとう宗幸)、好地由太郎(市川笑也)やO・ケリー宣教師(アーサー・ホーランド)ら明治期のキリスト教指導者、伝道者らが実名で登場し、史実的な脚色で、留岡幸助の信仰と犯罪を犯した少年たちへの教育と愛情が描かれていく。





 留岡幸助が、丹波での牧会伝道ののち教誨師になり、監獄改良のための米国留学後、「家庭学校」を開設した明治20年代。当時の少年らの教護・更生施設は「感化院」と称されていた。この名称を好まなかった留岡幸助は家庭にして学校、学校にして家庭という理念で、10人程度の少年たちを一組の夫婦が養父母的に一棟の少舎で共同生活し、養育と労働をとおして自立へとサポートする夫婦少舎制の「家庭学校」を建設していった。この夫婦少舎制は今日まで自立支援施設の基本的なシステムとして実施されてきた。

 「教育上一番大切なのは、家庭である。次に大切なのは学校と社会である。人の子を教育する最も適当な場所は地球上のどこか? オックスフォードかハーバードかエールかベルリンか? 人間を良くする基本は家庭にある」と語った留岡幸助。
 製作・監督した山田火砂子さんは、「その留岡イズムを、物質面では何ひとつ不自由のない時代の中で家庭が崩れつつある今こそ伝えなければと思い、この映画を作りました」という。聖書の福音に触れ、「捨てるべき人間は一人もいない」と、犯罪者となった少年たちの心に愛と福音を開拓していった留岡幸助。それは、この作品を通して教会が地域に今伝えるべきメッセージともいえる。 

◎山田火砂子さん(映画監督・現代ぷろだくしょん代表)−−明治期の福祉界4偉人を映画にしたい=1101

 2月に先行公開が始まる映画「大地の詩 留岡幸助物語」。賀川豊彦、石井十次、石井亮一と筆子ら、日本の社会福祉事業の指針となり大きな足跡を残してきたクリスチャン人生を映画化してきた現代ぷろだくしょんの製作・提供。新作は少年の自立支援と教護に大きく貢献した留岡幸助。その生涯と教育を通して留岡イズムを現代の家庭に伝えたいという。

公式サイト http://www.gendaipro.com/tomeoka/

 ぽぽーんと、気っ風がいいテンポで熱く語れる人だ。かつて、道端で遊ぶ子たちに気軽に声を掛けたり注意する街のおばさんに出会ったような、懐かしい気分に浸れる。
 現代ぷろだくしょんは、映画製作・独立プロダクションの老舗。「蟹工船」や「はだしのゲン」の連作など社会派作品を製作・配給してきたが、1988年作品の 「死線を越えて~賀川豊彦物語」あたりから社会福祉・キリスト教に関わる作品を多く手掛けている。社長を務めていた夫の山田典吾監督が98年に亡くなり、代表と監督を引き継いでからも、孤児救済と社会福祉事業を推進した石井十次の波乱の人生を描いた「石井のおとうさんありがとう」(04年作品)、知恵遅れの障がい児教育・福祉の先駆者となった石井亮一・筆子らの「筆子 その愛──天使のピアノ」(07年作品)。そして今回は、監獄改良と少年感化事業のため「家庭学校」を創設した留岡幸助の物語「大地の詩」を世に送る。
 ほぼ3年ごとのペースで映画製作。1本の映画を作るのに億単位のお金が動く。失礼ながら、よく続きますねと聞くと、「だから、いつも貧乏してんのよ」。
 書籍・資料で留岡語録を調べているうちに「『学校に行ったからといって英雄豪傑ができるわけではありません。君子になるか、盗賊になるかは家庭の陶冶(=教育)によるのであります。それなのに今の家庭は下宿屋にすぎません』という言葉が見つかった時にゃぁ、「すごいなぁ。いまのお母さんたちに何としても知ってもらいたい」と、心が躍った。
 石井十次、石井亮一・筆子の作品を作るとき、彼らが何者でどのようなことをしてきたのか「ほとんど知られていないのには、驚かされた。なんで学校で、もっと日本のことを教えないのよ」。先だっても講演に行った折に「福祉学校の先生が石井十次、石井亮一、留岡幸助らのことを試験に出したら、ほとんど解答が分からなかったと残念がってました。せめて、クリスチャンのこの人たちが何をしたのか、映画にしなくっちゃと思って、頑張ってるわよ」(笑)。
 「私は、映画ってやっぱり娯楽じゃないかと思うの。そこに主義主張ばかりガチャガチャ入れられたら、(お客さんには)迷惑千万。おもしろく、また、泣きながら、そして私たちの伝えたいことを入れていくのが映画じゃない。だから、キリスト教のことだけじゃなくても、見ていて『あぁ、すごいなぁ』と分かっていただければ、それでいい。そういう、映画作りを石井十次の時からしています」。作品を見た人から「感動しましたと言って、募金や寄付金を送ってくださる方や福祉の世界に進んだ方もいて、うれしいですね」。
 映画は、娯楽であっても人の心を熱くする何かがある。「ほんと。『二十四の瞳』を見てどれだけの人たちが教師になったことか。1本の映画だって、世の中を変えますよ」。
 「この間、放送大学見ていたら明治時代の社会福祉に貢献した4人に石井十次、留岡幸助、山室軍平そして石井亮一のことを教えていました。その4人のうち3人映画にしてきて、残るは山室軍平ひとり。こうなったら、撮らずにおくものか」(笑)
 この1月、79歳になったばかり。ポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラ監督は、昨年101歳にして新作を撮りあげた。「あたしも頑張るわ!」と、満面の笑みで意欲をみせる。