[CSD]2001年5月27日号《ヘッドライン》

[CSD]2001年5月27日号
《ヘッドライン》
 = 1面 =
★苦難の歩み 聖書が支え——ハンセン病訴訟勝訴、60年ぶり本名を名乗る
◎「つくる会」教科書を採択させないため「私たちにできること」具体策示す
★ペルー:誤認撃墜事故事故後も宣教の情熱絶えず
★米国:奴隷制度に反対しなかったと謝罪
★<講壇に立つ女性たち>[18]主イエス・キリスト教会牧師 大久保みどりさん(下)
★<落穂抄>偏見の中で懸命に生きた人たち
 = 2 面 =
★寄稿:歴史教科書問題に思う——日本人よへりくだろう神の義の前で 記・山崎 敏秋
◎教科書問題は教会教育の課題——バプ連盟が緊急特別プログラム
★アジア共通の未来築く教科書を——6月にアジア連帯緊急会議開催
★カトリック司教有志も教科書問題に憂慮を表明
★試練の時も神の愛の深さ知ろう——留学経験者の集いで経験した牧師が励まし
★キリスト者エコネット発足——環境問題を情報交換
★伝道こそ日基教団の使命——6月に日本伝道協議会開催
★<教界の動き>関西聖書学院、国際ナビゲーター、鳳キリスト恵み教会
★<世界の出来事フラッシュ>
★<論説>若い指導者を育成しよう 記・片岡 伸光
★<あかし文学>神様いのちをありがとう[5] 作・山口かおる
 = 3 面 「日本宣教と(天皇制)」論争をめぐって(2)=
★「天皇制・神社神道は非宗教」は誤り、キリスト教の代替物 記・櫻井圀郎
★天皇制温存の天皇改心論は矛盾、初代教会は死で国民儀礼を拒絶 記・瀧浦 滋
 = 4 面 放送伝道特集=
★インターネットTVを見てみよう——教会に来られない人にもおすすめ
★ハーベスト・インターネットTVステーション:セレクションシリーズで推薦番組も
★アガペー・インターネット放送局:ディボーションのムーブメント伝えたい
★神学校でIT活用のクラスも公開授業——「神からの技術」を教会が活かすとき
★インターネット用語集
★インターネット放送やっています!
 = 5 面 =
◎『生きる』出版——元ハンセン病患者・谷川秋夫さん77年の人生
★<北から南から>飛騨の情緒を大切に——教会新聞「チャペル」を発行
★三浦綾子さんの『氷点』を新たな設定でドラマ化——7月からテレビ朝日系で「氷点2001」
★レーナ・マリアさん初のポピュラーアルバム「ハートフィルド」でメジャーデビュー
★聖書の人物を現代日本版に表現——月刊「羊群」に連載マンガ「1/100匹の羊」
★米国:宇宙空間に「十字架」送り出す計画
★米国:米国人の聖書観と実態を世論調査
 = 6 面 =
★<聖書66巻>テトスへの手紙第 健康的な教会として 記・松木 祐三
★<書評>『明日への道』ヘンリ・ナウエン著(あめんどう、1500円)
★<新刊書紹介>『涙のパンを噛む時に』松川 卓著(キリスト新聞社、1000円)
★<新刊書紹介>『疑問がハレルヤ キリスト教』
★<情報クリップ>催し情報ほか
 

「つくる会」教科書を採択させないため「私たちにできること」具体策示す0105270102

「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史、公民教科書が文部科学省の検定に合格したことに対し、歴史を歪曲し日本の侵略の事実を隠ぺいするものだとして内外から強い批判を呼んでいる。
しかし、制度上は、いったん検定を合格した教科書の再検定や撤回は困難だ。
 そうした中で、「平和を実現するキリスト者ネット」では、「つくる会」の教科書を実際に採択させないために、「私たちにできることを実行しよう」と広く呼びかけを開始した。
聖書は、犯された罪と過ちは言い表され悔い改めることによって初めて赦され、引き裂かれた関係は和解へと導かれることを示している。
平和ネットでは、教育において自国の罪責を知る機会を奪われることになる同教科書が学校現場で用いられないようにする運動は日本のキリスト教界の信仰的課題であり、国会前で断食と沈黙と祈りの座り込みをした韓国の金泳鎮議員の祈りにこたえるものと受け止めている。
  平和ネットでは、次の3つの方法での働きかけを提案している。
  ?学校と教育委員会にあてて「つくる会」教科書を採択しないよう求めるはがき・ファクスを、保護者や卒業生、地域住民の声として送る。
教委に対しては、採択について現場の教師の声を十分尊重するよう強く訴える。
 ?憲法で保障された請願権に基づき、教委に請願署名を提出する(議会あてでないので紹介議員は不要)。
 ?各都道府県が設置する「教科書センター」で行われる教科書展示会では、地域住民の声をアンケートに記入することができるので、どしどし反対意見を記入する。
  採択期限は8月15日で、6月中にほぼ採択の方向が決定する。
平和ネットでは行動を急ぐよう呼びかけている。
要請文や請願署名の例、教科書の問題点一覧などを用意している。
  問い合わせはTEL03・3230・0374、FAX03・3204・9495、e-mail:cp_net@jca.apc.org、平和を実現するキリスト者ネット。
また、すでに「つくる会」教科書の不採択運動を全国ネットで行っている市民運動「子どもと教科書ネット21」(TEL03・3265・7606、FAX03・3239・8590、e-mail:kyokashonet@a.email.ne.jp)でも情報が得られる。

教科書問題は教会教育の課題−−バプ連盟が緊急特別プログラム0105270202

全国教会教育研修会は全国から200人の教会学校教師らを迎え、うち子どもも16人参加した。
「開け!み言葉」がテーマで、日本キリスト教団巡回教師、前青山学院大学教授の関田寛雄氏を講師に、「聖書をどう読み、生活の中で聖書をどう生きるか」を学んだ。
 関田氏は聖書の読み方について「聖書には、聖書自身が読んでもらいたいメッセージがある」として、「恵みに応える生き方」を示した。
具体的に、個と共同体、国家権力の相対化、民族の和解、自然との共生などをテーマに語り、特に国家権力の相対化について、牧師の息子として戦中を過ごしたつらい経験や同級生を失った痛みから「二度とあのような戦争を繰り返してはいけない」と強調した。
国家が人間的(平和)な国家になるために教会は国家に批判的に奉仕する務めがあるとして、まことの権威である唯一の神が王の見張り役として立てた預言者の役割を、現代に教会が果たすものであることを明らかにした。
  その上で関田氏は、「つくる会」の歴史教科書の方向が「天皇を中心とする神の国」に戻ろうとするものであり、また公民教科書は国家主義を強調しているとして、エペソ2章から「私たちは国家に結びつくのではなく、キリストにあって市民につながるべきだ」と教科書の問題点を指摘した。
  講演を受けて2日目夜の緊急特別プログラム「教科書問題と教会教育」では、吉高叶氏(日本バプテスト連盟日韓在日連帯委員会委員長、NCC書記)が製作したスライドを通して、「つくる会」教科書の何が問題なのかを学んだ。
靖国神社問題委員会の藤田英彦委員長は、自身の戦争体験から「天皇のために美しく死ぬことだけを考えていた」少年時代を語り、教育の恐ろしさを話した。
  この後、「つくる会」の歴史教科書と公民教科書に反対する決意表明を、出席者一同の拍手で採択した。
同表明では、日本バプテスト連盟の教会学校の目的に「生の全領域において主に聞き、主を証しする生徒を確立していくこと」があることに触れ、「従って、このたびの出来事に対して、教会学校奉仕者として仕える私たちは、沈黙することができない」と明言した。
  かつて日本が記紀神話に基づく教育をした際、教会も天皇制国家及び侵略戦争に加担し、自ら神社参拝を行い、隣国のクリスチャンに対して強要する誤りを犯し、「教会学校はむしろそのことを推進する役割」を果たしたと指摘。
  「自らの罪と向き合い、悔い改めてアジアの人々と新しい教科書を作ろうとすることは、『自虐』どころか学ぶ者を解放し、子どもたちが共に手を携えてアジアに生きるための教育に他ならない」として、「私たちは、各自に与えられた教会学校の奉仕の場において、罪を犯した歴史の事実を語り継ぎ、主イエス・キリストを愛し隣人を愛する者として、アジアの人々との共同の視点に立った歴史教育、平和と人権を尊重する歴史教育を、教会教育のもとで進めていきたい」と決意を表した。

『生きる』出版−−元ハンセン病患者・谷川秋夫さん77年の人生0105270501

差別、偏見、断種、中絶、隔離政策。
故郷にも戻れず、偽名で歩む人生・・。
いのちのことば社フォレストブックスは、岡山県邑久郡邑久町の長島愛生園で生活し、短歌を詠む元ハンセン病患者谷川秋夫さん(単立・長島曙教会員=写真奥)の77年の人生を綴ったドキュメント『生きる』を、5月に出版した。
著者は児童文学作家の大谷美和子さん=写真手前=。
くしくもハンセン病訴訟の勝訴判決と前後しての発売になった。
谷川さんは本書で「苦難、絶望、生きる望みを失いかけたこれまでの日々の目的は、神と出会うため」と語る。
 ハンセン病を発病した谷川さんは、6歳ごろから肌に斑点が出るという症状が出始め、14歳の時、長島愛生園に入所した。
兵庫県加西市に生まれ、「一生ここで暮らしたい」とだれよりも故郷を愛していたが、家族に迷惑をかけまいと故郷を出て、本名を名乗らなかった。
「家族恋し、故郷恋しの気持ちが抑えがたくなるときもあった。
そんなときはひとり丘に登って、故郷の方向を向いて泣いた」 苦難のまっただ中で聖書の言葉「心の貧しい者は幸いです」に出会い、励まされる体験も。
「自分はどん底に落ちなければだめ。
とことん追い詰められ、苦しい谷の底に突き落とされ、もうどうにも動けなくなり、にっちもさっちもいかなくならないと、本気で神を求めようとはしない思い上がりが自分にある」と告白する。
苦難が神と向き合わせ、信仰が谷川さんをどん底で支える。
 本書は、一人の元ハンセン病患者、谷川さんの生涯を通じ、1931年に公布された「らい予防法」による、国の強制隔離政策がもたらした様々な悲しみ、病気への誤解が生んだ差別、偏見などを生々しく描く。
同時に故郷を思う気持ち、神への信仰が描かれた作品だ。
  編集者は「元ハンセン病患者の生涯を通し、何も希望のないなかで、何が希望なのか、信仰に生きるとは何か、をクリスチャンだけでなく世に問いたかった」。
大谷さんは「知らないことの怖さを知った。
ハンセン病に限らず、ちゃんとした情報を得ないと同じことの繰り返しになる。
事実をちゃんと伝えていかないといけない」と取材の感想を述べた。
  谷川さんは「差別意識がなかなか拭いきれるものではないが、ハンセン病が世間で注目されている今、この病気が怖いものでないという正しい知識を多くの人たちが知り、誤解を解いて欲しい」と語った。
 聖書の「らい」の表記をどうするか、という編集者の問題意識も、本書を作るきっかけになったという。
巻末には日基教団・大阪南吹田教会牧師の秋山英明さんが、「ハンセン病と聖書」の項で、「らい」と訳されている原語が特定の病名というよりも、相当広がりをもつある皮膚病の症状一般のことを言う、と解説している。
 「谷川さんは『らい』という言葉を聞くと心が痛むと言っていた。
『らい』の表記が様々な差別意識を生んできた歴史がある。
教会がこの問題を深く掘り下げ、『らい』という表記をどうするか、議論してほしい」と編集者は願う。
 『生きる』を購入したい人は、近くのキリスト教書店、またはTEL0426・43・0800、ウイングスサービスまで。