(C)2015-9294-9759 QUEBEC INC. (une filiale de Lyla Films Inc.)

オーギュスティーヌ校長(左)とアリス。アリス役のライサンダー・メナードは“カナダを代表する未来の音楽家30人”のうちの一人に選ばれるピアニスト。本作が長編映画初出演、吹き替えなしでの演奏が聴けるのも魅力のひとつ  (C)2015-9294-9759 QUEBEC INC. (une filiale de Lyla Films Inc.)

カナダのケベック州。カトリック修道院が運営する小さな寄宿制女学校には、“キリストはこの館の主である”のモットーが掲げられている。16世にフランス領となって以来、保守・伝統主義の生活文化に培われ、教育もカトリック教会の統治のもとに治められてきた地域。それが、1960年の総選挙で自由党が勝利したことを契機に、政教分離政策が推し進められ公立校への転換と共に教会立学校は経営危機に陥る。その激動の嵐の中、なんとか閉校の危機を乗り越えようと校長はじめ教師、生徒たちが困難に立ち向かう物語。音楽で有名な寄宿制女学校を舞台に、良質なクラシック音楽エンタテイメントを楽しめる一方で、マザー・オーギュスティーヌ校長の現実的な信仰と教育への情熱がしっかり描かれている。山あり谷ありの人生、望んでいた結果にならずとも生きることに前向きに押し出してくれるヒューマンドラマだ。

閉校の危機の緊迫した不安を
一つの心へとまとめていく音楽の力

少し雪が積もった校庭を校舎に向かって歩いてくる校長のマザー・オーギュスティーヌ(セリーヌ・ボニアー)。校舎からは生徒たちが練習する合唱が聞こえてくる。ピアノコンクールで銀賞を獲得するなど音楽教育では有名な学校でもある。この日は、オーギュスティーヌ校長が購入した新しいピアノが届いた。そして、オーギュスティーヌ校長の姪アリス・シャンパーニュ(ライサンダー・メナード)が転校してきた日でもある。

音楽で閉校の危機を乗り越えようと考えるオーギュスティーヌ校長は、アリスのピアニストとしての天性のセンスにも期待している。だが、女学校の寄宿舎に入れられたアリスは、両親から見放されたようで自分の殻に閉じこもっていく。修道院の総長(マリー・ティフォ)は、政変を契機に政教分離が時流で教育も教会の時代ではなくなったこと見極めていた。むしろ、オーギュスティーヌ校長が学校存続のために講じる様々なチャレンジが状況を混乱させると案じ、事あるごとに二人は衝突する。

音楽教育をとおして生徒たちに「高い理想を持て!」と教え、窮地を脱しようとするオーギュスティーヌ校長の情熱に、シスターと生徒たちの思いは学校存続のために心を一つにしていく。支援者たちも理解を示し始め、オーギュスティーヌ校長のアピールにマスコミも関心を持ってきた。だが、そんな矢先、ピアノコンクールで金メダルを期待していたアリスの母親が重篤な病に倒れたという知らせが届いた…。

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ふんだんに奏でられる音楽が
滋味豊かなミュージカルのよう

1960年代当初のカトリック修道院立寄宿女学校での物語で、登場人物はほとんどシスターと生徒たち。地味な予見を抱きそうそうだが、クラシック音楽の雰囲気と共にケベック映画賞で衣装賞・ヘアスタイリング賞を獲得するセンスの良さにも惹かれる作品。また、オフィシャルサイトに掲載されている使用曲リスト一つひとつの楽曲が、ストーリー展開に豊かな深みを持たせている。とりわけ、届いたばかりのピアノでオーギュスティーヌ校長がリストの「愛の夢 3番」を弾くが、この原曲の歌詩は後に彼女が語る悔悟の物語が隠されている。また、邦題にもつながるショパンの「別れの曲」(シャンソン「悲しみ」)の使いどころは、滋味豊かなミュージカルのようにこの物語を語っていて心に染みてくる。 【遠山清一】

監督:レア・プール 2015年/カナダ/フランス語/103分/映倫:PG12/原題:La Passion d’Augustine 配給:KADOKAWA 2017年1月14日(土)より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。
公式サイト http://tenshi-chopin.jp

*AWARD*
第18回ケベック映画賞最多6部門(作品賞・監督賞・主演女優賞=セリーヌ・ボニアー=・助演女優賞=ディアーヌ・ラバリー=・衣装賞・ヘアスタイリング賞)受賞作品。