2025年8月23日

前回 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-dljzg6kpwvg03vqt/ なぜこんなに忙しい？ 牧会伝道の働きに携わりながら、〈なぜこんなにも忙しく走り回っているのだろうか〉と思うことが幾度もありました。『リーダーシップのダークサイド』（Ｇ・Ｌ・マッキントッシュ、Ｓ・Ｄ・ライマ共著）と出合ったのはその頃でした。「どのリーダーもある程度の人格的機能不全を患っている」と書かれていて、読み飛ばすことのできないことばとして心に響いたことを覚えています。 実際、何人かの牧師が突然、牧会を退かなければならない姿を目の当たりにしました。このままだと何かの拍子につまずきかねないのでは、との漠然とした不安を感じたものです。こんなにも必死になって牧会伝道の働きを進めているのは、自分の内なる虚しさを埋めるための「隠された動機」に操られているだけなのではないだろうか、と自らの内面をふり返る経験をしました。 私たちは誰もが心の奥底に神への深い憧れと共に、喜ぶ者と共に喜び、泣く者と共に泣ける人になりたい、神を愛し、隣人を愛する生活を送りたい、という願いを持ちながら生活していることでしょう。しかし現実は、身近にいる家族すらも愛することに困難を覚える自らを発見します。「受けるよりも与えるほうが幸いである」（使徒20・35）という御言葉を知りつつも、それとは逆の「物語」が牧会伝道の現場で、人生の大事な局面で、心の中で動き出す経験をしてきました。 牧師ですから「正解」はわかっているつもりです。しかし・・・ （次ページで「小さな声を聞く意志」「自分自身の牧会」など） しかし素の私は「与えるよりも受けるほうが幸いである」という「物語」に縛られ、御言葉と正反対の状況を欲し求めている。他人と比較しながら日々の小さな勝利感を糧に生きている自分を発見しては残念な気持ちにさせられるのです。 小さな声を聞く意志 二年ほど前、裾野（静岡県裾野市）の山を歩いていましたら、小さなアザミの花が目に留まりました。美しく、しっかり、喜んで、創り主を賛美しているように私の目に映りました。以前、同じ道を歩いていてきれいな花を見つけた時、〈こんなところで花を咲かせ、誰の目にも留まることなく枯れていく〉という思いが心をよぎった際、その時ふと〈誰かの目に留まることが私にとって大切なことなのだなぁ〉と心の中の「物語」に気づかされる経験をしました。 ヘンリ・ナウエンが次のように語ります。「多くの声が私たちの注意を促します。『おまえがよい人間だということを証明しろ』と言う声があります。別の声は『恥ずかしいと思え』とささやきます。また『誰もおまえのことなんか本当には気にかけちゃいない』と言う声もあれば、『成功して、有名になって権力を手に入れろ』という声もあります。けれども、これらの非常にやかましい声の陰で、静かな、小さな声がこうささやいています。『あなたは私の愛する者、私の心にかなう者』と。それは、私たちが最も聞くことを必要としている声です。しかもその声を聞くには、特別な努力を要します。孤独、沈黙、そして聞こうとする強い決意を必要とします。それが、祈りです。それは、私たちを『私の愛する者』と呼んでいる声に耳を傾けることです」（ヘンリ・ナウエン著、『今日のパン、明日の糧』） アザミの花は、気の毒がられようが、美しさを賞賛されようがおかまいなく、天に向かって背筋を伸ばすように真っすぐに咲いている。神を賛美するように咲いていました。それは、周囲から、場合によっては自分の内側から、やかましく聞こえてくる様々な声の中で、「私たちが最も聞くことを必要としている声」とナウエンが表現した、静かで、小さく、ささやくような声、「あなたは私の愛する者、私の心にかなう者」という神の声を、強い意志をもって聞き続けている姿なのではないだろうか。そう思い、そのアザミに、何か吹っ切れた清々しさを感じ、神に造られた同じ被造物として私もそのように生きていきたい、と強く思わされたのです。 自分自身の牧会 プリンストン神学校の校長兼牧会学教授であるグレーグ・バーンズは「牧会者として、会衆のためにすることで何よりも大切なことは、自分自身の魂をケアすることである」と語ったそうです（太田和功一著、『静まりと魂のセルフケア』）。これはパウロがエペソの長老やテモテに語った言葉と響き合います（使徒20・28、Ⅰテモテ４・16）。 それほどまでに大切な「自分自身の魂のケア」という課題を突き詰めていくならば、結局は牧会者として召されているこの私が、日々の生活においてどれだけ大牧者なる主イエスの牧会／ケアにあずかり続けているかにかかってくるのではないでしょうか。この私を「私の愛する者」と呼ばれる御声を聞き続ける「祈り」という霊的修練を、これからも大事にしていくということに尽きるのではないかと思うのです。 関連記事 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-dljzg6kpwvg03vqt/

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2025年8月23日

【ロングインタビュー】芥川賞作家鈴木結生さん　聖書と文学語る

【連載】私の牧会ストーリー③　セルフケアとしての祈りの修練　松本雅弘

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