うらぶれた団地に団地に引っ越してきた女優のジャンヌ (C)2015 La Camera Deluxe - Maje Productions - Single Man Productions - Jack Stern Productions - Emotions Films UK - Movie Pictures - Film Factory
うらぶれた団地に引っ越してきた女優のジャンヌ (C)2015 La Camera Deluxe – Maje Productions – Single Man Productions – Jack Stern Productions – Emotions Films UK – Movie Pictures – Film Factory

人生は、エレベーターのように上がったり、下がったりの繰り返し。「もう、どん底!」「先が見えない奈落の底」と思えるような所に落ちても、誰かが話を聞いてくれて、慈愛に溢れた母のように受け入れてくれる人に出会い、年齢差など関係なく新境地へと一歩を踏み出す言葉をくれる人との出会いがあるかもしれない。飛び立つヘリコプターの強烈な風のように非現実的な人びとが登場し、思わず笑いが出てくる。雑多な人たちが寄り添い合い、気持ちが繋がっていく団地という下町的なフランス版人情噺に、明日への「ヨイショ!」が聴こえてくる。

【あらすじ】
厚い雲に低く覆われた灰色の空。時折り、大きな像か怪獣が泣き叫んでいるような声が木霊する。フランスの都市郊外にある古びた団地。ある棟の住人たちがラウンジに集まりミーティングをしている。旧式のエレベーターの故障が続き、エレベーター内に閉じ込められたり、操作盤の電源がショートして火傷を負った人もいる。エレベーターの取り換え工事は全員一致かと思われたが、2階に住むスタンコヴィッチ(ギュスタブ・ケルヴァン)一人だけが「ほとんど使わないエレベータのために、分担金を負担するのはもったいない」と反対票を表明した。住民たちは、スタンコヴィッチに、分担金を支払わない代わりにエレベーターに乗らないことを条件にして認めた。ところが、自室でモーターサイクルマシンに乗っているとき意識を失い、ペダルに載せた脚は一晩中回り続け当分は車いす生活に。食料の買い出しも困ったスタンコヴィッチは、住民が寝静まった夜中にこっそりエレベーターを使い買い出しに出ることを思いつく。どこの店も閉まっていて、思いついたのは病院の自販機。職員用の出入り口から帰ろうとすると、休憩時間で一服している看護師(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)に「こんな時間に、外出禁止よ」と声をかけられたスタンコヴィッチは、「カメラマンで、夜の町をロケハンしている」とつい嘘をついてしまう…。

10代の学生シャルリ(ジュール・ベンシェトリ)と同じ階の向かいの部屋に中年の女優ジャンヌ・メイヤー(イザベル・ユペール)が引っ越してきた。鍵を部屋の忘れて締め出され立ち往生しているジャンヌ。シャルリは、車道にいる友人のデデを呼び鍵を開けさせて、ジャンヌと親しくなる。映画は好きなシャリルだが、ジャンヌが出演した作品は知らない。かつて出演した舞台劇のヒロイン役でもう一度舞台に立つべく演出家を訪ねたジャンヌだが、会ってももらえずに酔って帰ってきた。シャリルは、15歳のヒロイン役ではなく、主役の90歳の母親役に立候補するようにと勧める。はじめは意に介さなかったジャンヌだが、新境地を開くチャンスになるかと考え直したが…。

プログラムミスでフランスの団地の屋上に不時着してしまった宇宙飛行士のジョンを、服役中の息子を見つめるように優しくもてなすマダム・ハミダ (C)2015 La Camera Deluxe - Maje Productions - Single Man Productions - Jack Stern Productions - Emotions Films UK - Movie Pictures - Film Factory
プログラムミスでフランスの団地の屋上に不時着してしまった宇宙飛行士のジョンを、服役中の息子を見つめるように優しくもてなすマダム・ハミダ (C)2015 La Camera Deluxe – Maje Productions – Single Man Productions – Jack Stern Productions – Emotions Films UK – Movie Pictures – Film Factory

デデと友人が団地の屋上で一服していると、雲の合間から米国NASAの宇宙船が降りて来て二人の目の前に不時着した。カプセルから出てきた宇宙飛行士のジョン・マッケンジー(マイケル・ピット)は、どこに不時着したのかを確認するため最上階に住むマダム・ハミダ(タサディット・マンディ)の部屋を訪ねた。アルジェリア系移民のマダム・ハミダはフランス語しか話せない。ジョンは、フランス語が分からない。電話を借りてNASAに連絡すると、マダム・ハミダはしばらくジョンを預かることを承諾した。息子は刑務所に服役していて独り暮らしのマダム・ハミダ。男の子にはとにかく料理とばかりに親切に面倒見る。言葉は通じないが、次第に心が通じていく二人だが、2日後にNASAのヘリコプターがジョンを迎えにきた。

【見どころ・エピソード】
夜勤看護師を一目見て恋に落ちてしまうスタンコヴィッチ。そのスタンコヴィッチも写真を撮りながら見ていたパラシュートをつけて雲の合間から落ちてくるジョンを乗せた宇宙船カプセル。映画「腕のない女」でヒロインを演じたが落ちぶれて団地に引っ越してきた女優ジャンヌ。それぞれ落ちてきた人に絡む3組の男女の物語。奇想天外なユーモアいっぱいの小噺が絡み合い繋がっていく絶妙な味が心地よい。 【遠山清一】

監督:サミュエル・ベンシェトリ  2015年/フランス/フランス語、英語/100分/スタンダードサイズ/DCP/1.33/原題:Asphalte 配給:ミモザフィルムズ 2016年9月3日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、シネ・リーブル池袋ほか全国順次ロードショー。
公式サイト http://unifrance.jp/festival/2016/films/asphalte

*フランス映画祭2016 上映作品*
http://unifrance.jp/festival/2016/

*Award* 2015年:第68回カンヌ国際映画祭特別上映作品。 2016年:第41回セザール賞脚色賞ノミネート。第26回ストックホルム映画祭国際批評家連盟層受賞。フランス映画祭2016上映作品。