MOVIE「イエロー・ハンカチーフ」――孤独な3人が旅の果てに見つけたもの
1977年に公開され、多くの支持を得て今なお、日本の映画史に残る名作「幸福の黄色いハンカチーフ」。それから33年。プロットはそのままに、ストーリーの脚色や設定を現代にアレンジし、アメリカを舞台にしてリメイクされた。
◇
不遇な人生を送ってきた男、ブレットは船舶に住むメイという女性と出会い、初めて愛する喜びを知る。結婚し子どもを授かるが、過去に堕胎したことが原因で流産してしまう。ブレットは現実を受け止めきれず、夫婦関係もぎくしゃくし始める。ある晩、バーの外で二人がもめているところに仲裁に入った男をブレットは誤って殴り殺してしまう。6年の服役に処せられ、ブレットはメイに離婚届を託した。
物語はブレットの服役後から始まる。失恋したばかりのマーティーンと神経質そうな青年ゴーディが初対面でありながらドライブをする。居心地の悪いマーティーンは、見かけたブレットに声をかけてドライブに誘う。天候や車のトラブルなどから思いがけず3人は同じ時を過ごす。互いの身の上話や「大切にされていない」「誰にも愛されていない」と孤独感を抱くマーティーンとゴーディ。いつかのブレットの姿でもある。そして3人は車を走らせる。アメリカの大地は無限の未来のように3人の目の前に拓かれている。
ブレットは出所後すぐにメイへ手紙を出していた。「もし会ってくれるなら、(船に)黄色い帆を張ってくれ」と。確認したいが失望する不安も大きい。そんなブレットの背中を押したのはマーティーンとゴーティの若い2人だ。メイは果たして帆をあげているのか。
共に過ごす時間がどれほどかけがえのないかは、しばしば失ってから気づく。しかし、誰かを待つ時間は、相手に思いを馳はせる時間であり、自分の思いと向き合う時間でもある。誰かのために費やす時間に「愛」は育まれていくのだろう。【奥山みどり】
監督・ウダヤン・ブラサッド製作・アーサー・コーン 配給・ザジフィルムズ 6月26日より東劇にてロードショーほか全国順次公開。