Movie「メッセージ そして、愛が残る」――今を生かされている素晴らしさ
ある日、人の死期を予見できる男が目の前に現れ、自分の死が近いことを悟らされたら、あなたはどうします? そんなショッキングでミステリアスな作品だが、今を生かされている素晴らしさと生きて在る使命ということに気付かされる秀作。
ニューヨークに住む敏腕弁護士のネイサン(ロマン・デュリス)。勝ち目の無い訴訟は受け付けない非情さと心を閉ざしているムードの男。妻のクレア(エヴァンジェリン・リリー)と娘のトレイシーは、ニューメキシコに別居している。息子のポールが、乳児突然死症候群(SIDS)で急死したのをきっかけに、クレアの愛も素直に受け入れられず心を閉ざしていた。
そんな、ある日。法律事務所に病院の医局長ジョセフ・ケイ(ジョン・マルコヴィッチ)が訪ねてくる。ケイは他人の死期の近いことが予見できると言う。実際、地下鉄のホームに立つ青年は、2分後にホームで拳銃自殺した。彼の身体が、白い光に包まれているのが見えたと言うケイ。そして、ネイサンの大学時代の恋人が、死期の近いことも告げる。
ケイが現れたことは、自分の死が近いと直感したネイサン。他人の死期が見えるのなら、なんとか助けられないのかと詰問するネイサンに、「死期はどうすることも出来ない。ただ、メッセージを伝えて、より良い人生を生きるように願うだけだ」と答え、「今を生きる素晴らしさに、人はなかなか気付かない」というケイ。
自分に残されている時間は。。。ネイサンは仕事を放り出してクレアとクレイシーの元へ行く。ポールの死のこと、クレアの心を傷つけてきたことを一つひとつ解きほぐしていき、謝罪する。家族との愛を回復し、今を生きることの素晴らしさを知ったとき、ネイサンは自分が生かされていることの使命を悟らされる、人生で最も重く過酷な一瞬を目撃してしまう。。。
ネイサンとケイの過去と関わりなど複雑なつながりが、テンポ良く展開していく中で分かりやすく描かれていく。避暑地の森、ニューヨークの夜景、ニューメキシコの砂漠など、それぞれの光と空気感を詩的な感性で表現するリー・ピンビン撮影監督の映像が、印象的で美しい。 【遠山清一】
ジル・ブルドス監督・脚本(2008年)、ギヨーム・ミュッソ原作、ドイツ・フランス・カナダ映画。上映時間:1時間47分、配給:日活、2010年9月25日(土)よりTOHOシネマズシャンテほか全国順次ロードショー