(c)2010 NUCLEAR DISARMAMENT DOCUMENTARY, LLC.
(c)2010 NUCLEAR DISARMAMENT DOCUMENTARY, LLC.

<核>ミサイル戦略の歴史と概要そして今日のずさんな管理の危機的状況を警告するドキュメンタリー映画。米ソの冷戦構造が崩壊した後、無感覚になりつつあった<核>の存在に、改めてその怖さと現実を突きつけられる。

ケネディ時代の
警鐘が現代にも

現実にヒロシマ・ナガサキに<核>爆弾が投下されたのは、戦時下だった。一発の爆弾が数十万都市を壊滅させた事実に世界はおののいた。その破壊力と軍事バランスの緊張感の上に保たれていた世界大戦の回避。

その<核>バランスの初期にジョン・F・ケネディ米国大統領は1961年国連総会の演説で「我々は一本の糸で吊り下げられたダモレスクの剣(核兵器)の下で生きている。その糸は’事故”誤算”狂気’で切断される。…戦争兵器は滅ぼされなければならない。われわれ人類が滅ばされる前に」と警告した。この警告は、まさに現在の私たちの身近な問題として、より危機的な状況であることへ注意を喚起する。この作品はこれまでの’事故’、危機管理への妄信と’誤算’、<核>を拡散させた狙うテロ集団の’狂気’を関係者らのインタビューと歴史的に事実を丹念に積み重ねながら明らかにしていく。

ルーシー・ウォーカー監督のインタビューに応じて出演している元国家元首や政府関係者らの名前に驚かされる。
ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領、ジミー・カーター元米国大統領はじめパキスタンに核実験の成功に感動したというパルヴェーズ・ムシャラフ元大統領、南アフリカの核兵器を全廃させたフレデリック・ウィレム・デクラーク元大統領、英国のトニー・ブレア元首相ほか、<核>をテロ集団に密売しようとしたオレグ・キンサゴフまで追っている。その地道なルポ取材に敬服させられる。

(c)2010 NUCLEAR DISARMAMENT DOCUMENTARY, LLC.
(c)2010 NUCLEAR DISARMAMENT DOCUMENTARY, LLC.

<核>兵器ゼロへ!

公開キャンペーン

作品の冒頭に2010年4月8日にバラク・オバマ米国大統領とロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領が、チェコの首都プラハで「新核軍縮条約」の調印式に臨む映像が流れる。長い冷戦の時代が終わったが、核保有国は増加し、今も核物質を製造し核兵器を保有しようとする国家があり、核攻撃の危険が低くなったわけではない。だが、2万3千発を超える核兵器の95%を保有する米国とロシアが、「核のない世界」に互いに責任とリーダシップを持つことを確認し合った。新たな段階への一歩を踏み出している現代。

インタビューに応じたこれまでの政府首脳と高官たちは、異口同音に「核はない方がいい」「核=ゼロ」と答える。各国の市民へのインタビューでも、現在の核の保有数を知らなくとも、みな同様に「ゼロ」を望んでいる。この「核兵器削減」への動きに大きな原動力となっている’グローバル・ゼロ’のメッセージとムーブメントから生まれたこのドキュメンタリー映画。公開に先立ち映画の公式サイトで「ZEROキャンペーン」を展開し、「ワンクリックで<核>兵器ゼロへ!」と呼びかけている。

なお、日本語版は、エンディングテーマ曲に吉井和哉(元THE YELLOW MONKEY)の新曲「LOVE & PEACE」が決定したことも緊張感のあるテーマの作品の中で明るい話題になっている。 【遠山清一】

脚本/監督:ルーシー・ウォーカー。2010年/アメリカ/1時間29分/原題:Countdown to Zero。配給:パラマウント・ピクチャーズ・ジャパン。9月1日(木)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国順次公開。

公式サイト http://www.to-zero.jp
ZEROキャンペーン http://blog.to-zero.jp/cp/